米国では90年代に入って、インターネットによる情報開示なども手伝い、高額な医療費を請求される現代医療への不信感や治療医学の限界、あるいは予防医学重視といったことから西洋医療離れが進み、非西洋医療に関心を向ける人々が多くなっていった。副作用のない、自然なハーブ療法を提唱するアンドリュー・ワイル博士らの登場で、そうした動きはさらに加速し、代替医療の利用率は年を追うごとに高まっていった。
米国民の4割が代替医療を利用(ハーバード大・アイゼンベルグ教授らの調査)
90年代に入り、米国で代替医療がブームとなったが、利用者について、1993年にハーバード大学のアイゼンベルグ教授らが調査したところ、1990年には34%にのぼり、1997年には42%へと増えていることが分かった。
米国で人気の代替医療としては祈りの療法、カイロプラクティック、鍼灸、漢方、ハーブ(薬草)療法、栄養療法、バイオフィードバック、心理療法、催眠療法などがある。
そのほとんどがこれまでアジア圏で伝統・伝承的に用いられてきたポピュラーな医療である。これらは正統派西洋医療サイドからみれば、オルタナティブ(もう一つの、別の)医療という区分けになる。
アイゼンベルグ教授らの調査で、米国民の3分の1以上が代替医療を利用しているという結果が出たが、利用者の多さばかりではなく、もう一つ、医療従事者を驚かせることがあった。
それまで代替医療は、医療保険にも加入できず、高額な医療費を支払えない人々が利用しているものと思われていた。それが、ふたを開けてみると、実際は、上層階級といわれる人々が多く利用していたことである。これには、多くの医療従事者が少なからずショックを受けた。
その後、米国では、GMPの15%にもおよびつつある医療費の高騰の抑止が急務であることもあり、代替医療の研究に本格的に着手、'92年には米国立衛生研究所(NIH)に代替医療調査室(OAM)を設置。'99年には5,000万ドルの研究予算を計上、13の大学および研究機関に研究テーマを振り分けるなど、本腰を入れるようになる。
そうした中、国民に人気の高い栄養療法であるハーブ・サプリメントを用いた代替医療についても検証が進められ、西洋医療とのコラボレーション(協力)体制の構築へと機運も高まっていった。