米国立衛生研究所(NIH)のダイエタリーサプリメント局(ODS)は10月17日、
ダイエタリーサプリメントに関する研究をまとめた年次報告書を発表した。
この発表は、今回3回目となる。ODSはConsumer Healthcare Products
Association(CHPA)の協力を得て、2001年中に発表された研究の中でも特に
目を引いた25件を選んでいる。研究報告のダイジェストを紹介する。
研究文献250件から、ニュートリション、植物学、公衆衛生分野の専門家がトップ25を選出
この2001年版Bibliographyを作成するにあたって、ODSとCHPAは34ジャーナル
からの研究文献250件を受け取り、ニュートリション、植物学、公衆衛生分野の
専門家で構成された国際チームがトップ25を選んだ。
この25件は、水溶性ビタ
ミン、脂溶性ビタミン、ミネラル、食物繊維と大豆、アミノ酸と脂肪酸、植物、
その他(グルコサミン、カフェインなど)の分野から選出されている。
同Bibliographyは、学生や栄養・医療専門家、教育者にとって有用な参考文献
として機能することを目的としている。
2001年版Bibliographyに記載された研究報告トップ25件の概要は以下の通り:
*水溶性ビタミン
[ 高脂肪食にビタミンBを補給してもアテローム性動脈硬化もしくは血管機能不全
を予防しない ]
ホモシステイン値の上昇、もしくは高ホモシステイン血症は卒中、心筋梗塞、
静脈血栓症の危険性増加に関連する。このサルを使った研究の目的は、低脂肪・
コレステロール食、または高脂肪食のエサにビタミンB群を補給すると高ホモ
システイン血症を防ぎ、血管機能不全の進行を遅らせることができるかを見る
もの。アテローム性動脈硬化の徴候の見られないサル16匹に高脂肪食とビタミ
ンB群(葉酸5mg、ビタミンB12を400マイクログラム、ビタミンB6を20mg)を
補給した。また、対照グループには高脂肪食のみを与えた。
研究期間は13〜26ヶ月。17ヵ月後、ビタミンBグループではホモシステイン値
の増加は見られなかったが、コレステロール値には変化がなかった。ただ、
ビタミンBは頚動脈あるいは腸骨周辺動脈の内部壁を厚くする現象を防ぐこと
はできなかった。
結論;ビタミンBの補給は高ホモシステイン血症を防ぐが、高脂肪食を与えられ
た高コレステロール血症のサルの場合、血管機能不全やアテローム性動脈硬化
の病変を緩和するまでには至らなかった。(Circulation 2001;103:1006-1011)
[ 葉酸とリボフラビンを多く摂取している健康体高齢者では、ビタミンB6を少量
摂取すると血漿中のホモシステイン値を効果的に下げる ]
加齢に従ってホモシステイン値が上昇し、反対にビタミンB6濃度が下がってく
る。このことは、高齢者が心臓病に罹る危険性を増大させることになる。この
研究の目的は、葉酸、リボフラビン、もしくはビタミンB12が欠乏していない
高齢者のホモシステイン値をビタミンB6が下げるかどうかを見るもの。
被験者グループは62歳から80歳の22人で、ビタミンの欠乏状態にしないため、まず毎日
リボフラビン1.6mgを12週間与え、続いて葉酸(400マイクログラム)とリボフラ
ビン(1.6mg)のコンビネーションをさらに6週間与えた。その後被験者には、
コンビネーションの他にビタミンB6を1.6mgかプラセボを毎日、12週間与えた。
この結果、葉酸は空腹時のホモシステイン値を19.6%下げ、ビタミンB6はさら
に7.5%下げたことが分かった。
結論;ビタミンB群補給にビタミンB6を加えると、血中のホモシステイン値を
さらに低下させる。(American Journal of Clinical Nutrition 2001 73:759-764)
[ フラミンガム・スタディによると、葉酸補給は赤血球中の葉酸濃度を上げた ]
1996年、FDAは穀類、コーンフレーク製品全てに、製品100gあたり葉酸140マイ
クログラムを添加することを義務付けた。葉酸摂取は、神経管不全の予防や
心臓病の危険要因である血中のホモシステイン値を下げることが指摘されている。
この研究では、Framingham Offspring Cohortからのデータを分析した。
FDAの葉酸添加義務付けプログラム以前に調べた872人とプログラム以後に調べた
626人の赤血球中の葉酸濃度を比較した。この結果、赤血球中の葉酸濃度は葉酸
添加製品を食べているグループでは24%高く、FDAプログラムはほぼ成功したと
言えることが分かった。(Journal of Nutrition 2001 131:3277-3280)
[ 冠状動脈性心臓病予防で血漿中のホモシステイン値低下を狙ったビタミン治療
の費用効率性 ]
この研究の目的は、冠状動脈性心臓病(CHD)を防ぐためのFDAプログラム(穀類、
コーンフレーク製品などに葉酸を添加)とビタミンB群補給のコストエフェクティ
ブを評価するもの。研究者は、Coronary Heart Disease Policy Modelと35〜
84歳がビタミン剤に使う費用データを使用した。
1日に葉酸1.0mg、ビタミンB12を0.5mg摂取したときの費用は年間20ドル29セント。モデルをベースにしたFDAプロ
グラムでは、CHDの危険性が女性で8%、男性では13%減少すると予測された。プロ
グラムのみの利用と比べ、葉酸とビタミンB12サプリメントを摂取した場合10年で
CHD患者の死亡件数は31万件減少した。45歳以上の男性と55歳以上の女性のクォリ
ティ・オブ・ライフから調整した結果、10年で20億ドル以上の節約が試算された。
(Journal of the American Medical Association 2001 286:936-943)
[ 心臓病予防におけるSimvastatin、ナイアシン、抗酸化ビタミン剤、もしくは
その併用の効用 ]
酸化プロセスはアテローム性動脈硬化を導く一因だと指摘されるが、抗酸化ビタ
ミン剤摂取によってこのプロセスが抑制され冠状動脈性心臓病は予防されると考
えられている。
この研究では、HDLが低濃度の心臓病患者に対し、処方箋薬Simvastatinおよび
ナイアシンの併用療法と抗酸化ビタミンを組み合わせた治療法の効用を評価する。
患者160人にsimvastatin−ナイアシン、抗酸化剤、simvastatin−ナイアシンと
抗酸化剤、プラセボのどれかを与えた。
研究期間は3年以上。与えられた抗酸化剤
は1日総合ビタミンE(d-α-tocopherol)が800IU、ビタミンC1000mg、天然ベー
タカロチン25mg、セレン100マイクログラム。この結果、simvastatin−ナイアシ
ングループではLDL値が顕著に低下、反対にHDLが上昇したことが分かった。抗酸
化剤のみのグループでは総コレステロール値に変化は無く、HDLが多少上昇した
程度。(New England Journal of Medicine 2001 345:1583-1592)
*脂溶性ビタミン
[ 血清中のカロチノイドと乳がん ]
野菜や果物の色素であるカロチノイドの抗酸化剤効果は有名。カロチノイドは、
細胞の正常機能を傷つける酸化プロセスを妨害することでがんを予防するとされ
る。この研究では、乳がんと、野菜や果物、カロチノイドサプリメント摂取を示
す化学物質との関連性を評価する。乳がんの病歴がある270人と病歴がない270人
のルテイン、ゼアキサンチン、βクリプトキサンチン、リコペン、αカロチン、
βカロチン濃度を比較した。被験者はNew York Women’s Health Study
(1万4千275人)から35〜65歳が選出された。
この結果、乳がんの危険性が高い
ほど血中のルテイン、βクリプトキサンチン、αカロチン、βカロチン濃度は低
かった。βカロチンが最低割合に分布する被験者の危険性は最高割合に分布する
グループの2倍あった。
(American Journal of Epidemiology 2001 153:1142-1147)
[ 高齢者の血圧に対するビタミンD3、カルシウム摂取の効用と副甲状腺ホルモン
濃度 ]
カルシウムとビタミンDは骨の強化の他に血圧調整で重要な役割を果す。この
研究では、高齢者女性へのカルシウムとビタミンD補給が与える血圧への影響を
評価する。70歳以上の148人に炭酸カルシウムを600mgか、炭酸カルシウム600mg
とビタミンD400IUを1日2回食事と一緒に与えた。
プラセボ研究は行っていない。
8週間後、カルシウム・ビタミンDグループでは収縮期圧が9.3%降下、副甲状腺
ホルモンは17%、心拍が5.4%減少し、カルシウムのみのグループより効率的だ
ったことが分かった。拡張期圧では変化は見られなかった。
(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2001
86:1633-1637)
[ 糖尿病II型患者の心臓自律神経系とビタミンEの定期的摂取 ]
糖尿病II型患者では、酸化ストレスの増加と抗酸化防御の減退が見られるが、
酸化ストレスが増加すると心臓の神経系の活動バランスに崩れが生じる。この
研究では、糖尿病II型患者の心臓神経系統と心臓ニューロパシーに対するビタミ
ンE摂取の効用を評価した。患者50人にビタミンE(α-tocopherol)1日600mgか
プラセボを4ヶ月間与えた。
この結果、ビタミンE摂取では酸化ストレスが減少し心臓自律神経機能が改善
したことが分かった。また、ビタミンEはインスリン抵抗性も調整、これは
神経系統に良い影響を与える。
(American Journal of Clinical Nutrition 2001 73:1052-1057)
[ 心不全患者に対するビタミンEサプリメント対照研究 ]
フリーラジカルによる酸化ストレスは細胞内のビタミンEなどの抗酸化剤濃度
を減らし、細胞ダメージや心不全を引き起こす。この研究では、ビタミンE
補給が進行性心不全患者の酸化ストレスに与える影響を評価した。臨床的には
安定を保っている進行性心不全患者56人にビタミンE(α-tocopherol)カプ
セル(500IU)を1日2コかプラセボを12週間与えた。患者のクォリティ・オブ
・ライフも審査された。
この結果、ビタミングループではビタミンE濃度が6
週間で2倍になり最後まで維持したが、健康状態やクォリティ・オブ・ライフ
については目立った改善は見られなかった。
結論;この研究では短期間のビタミンE効用を調べたが、ビタミンE摂取の効用
を支持する結果は得られていない。
(The American Journal of Clinical Nutrition 2001 73:219-224)
[ 心血管系疾患の危険がある被験者へのアスピリンとビタミンE少量摂取:無
作為研究 ]
心血管系疾患の危険要因を1つ以上持つ被験者における心血管系疾患発症に対
するアスピリンとビタミンE投与の影響を評価するThe Primary Prevention
Project(PPP)。50歳以上の4千495人に対し薬剤治療に加え、アスピリンを
1日100mgとビタミンE(α-tocopherol)300mg、あるいはプラセボを与えた。
5年間の研究期間が設けられたが、途中倫理的理由により中止。3.6年のデータ
を分析した結果、ビタミンE投与では心血管系疾患発症の危険性を下げなかった
が、末梢動脈疾患の危険性を下げたことが分かった。研究期間が短すぎた。
(The Lancet 2001 357:89-95)
*ミネラル
[ 高濃度鉄分はバクテリアの侵入と生存を許し、ヒト腸管内皮細胞Caco-2でサイ
トカイン/ケモカインmRNA発現を増進 ]
鉄分は、免疫システムなど多くの生化学的、生理学的プロセスに重要な役割を
果す。だが、高濃度の鉄分は細胞を感染しやすくする。このin-vitro研究では、
鉄分濃度が高い腸管内皮細胞は腸内に病原体を侵入させやすくなるかを評価した。
宿主と病原体の関係に対する鉄分濃度を調べるため、Caco-2とサルモネラ菌が
使用された。感染していないCaco-2細胞内で鉄分濃度が高くなると、サイトカ
イン/ケモカインmRNA比率が示す免疫モジュレーター値が25〜45%減少。
反対に感染細胞内で鉄分濃度が高くなると低濃度の場合と比べ、サイトカイン/
ケモカインmRNA値が21〜95%増進した。
(Journal of Nutrition 2001 131:1452-1458)
[ 西アフリカの子どもで、マラリアなど疾患の罹患率に対する亜鉛補給の効用:
無作為、二重盲検プラセボ対照研究 ]
マラリアは熱帯アフリカ地域で蔓延しており、免疫システムはその地域での発症
や死亡率に影響する。また、発展途上国の子どもたちには、免疫システム構築に
必要なミネラル、亜鉛の欠乏が多く見られる。
この研究では、西アフリカ在住の
生後6〜31ヶ月の子ども709人に亜鉛12.5mgかプラセボを週に6日、6ヶ月間与え
た。685人が研究を終了。この結果、亜鉛補給は下痢症状の発生を減少させたが、
マラリアなどの罹患に影響はあまり見られなかった。
(British Medical Journal 2001 322:1-6)
[ バングラディッシュの児童に亜鉛とビタミンAの同時投与:無作為、二重盲検、
対照研究 ]
ビタミンAを適量摂取していれば、子どもの死亡率は減少できるとされているが、
罹患率への効用は不明。亜鉛など別の栄養素欠乏がビタミンAサプリメントの影
響を複雑にしている。この研究では、下痢の発症と急性下気道感染に関するビタ
ミンAサプリメントの影響を評価する。
バングラディッシュの貧困地域に住む12
〜35ヶ月の幼児800人に1)亜鉛20mg配合のシロップ5mlを1日1回、14日間 2)ビ
タミンAカプセル(60mg)を1コ3)亜鉛とビタミンA4)プラセボシロップとプラ
セボカプセルを14日間のどれかを与えた。
14日後、下痢の回数と下気道感染の
発生を調べたところ、下痢と下気道感染の危険性低下で亜鉛とビタミンAの併用
が最も効果的だったことが分かった。亜鉛のみの投与グループはプラセボグル
ープに比べ下痢の発症を抑制したが、下気道感染の発生が2倍になっていた。
しかし、ビタミンAを加えると、この現象は緩和された。
(British Medical Journal 2001 323:314-318)
*食物繊維と大豆
[ グアーガム分解物とフラクトオリゴ糖配合のビスケット効用:人への臨床研究 ]
ビフィズス菌や乳酸菌のように腸内に入って“善玉”菌になるプレビオティック
食品に対する関心が近年高まっている。この研究では、フラクトオリゴ糖6.6g/
1日、グアーガム一部分解物3.4g/同を摂ることができるクッキーを被験者31人
に与えた。
被験者は各自の便の回数や便秘状態、ガスなど腹部の症状について
記録した。この結果、ビフィズス菌濃度が増大したが、この療法の終了7日後に
は、濃度は元に戻った。研究開始時にビフィズス菌濃度が最低だったグループで
は、期間中飛躍的な濃度増大が見られた。
(British Journal of Nutrition 2001 86:341-348)
[ 閉経期のアテローム性動脈硬化の進行を抑制:結合型エストロゲンと大豆のフ
ィトエストロゲンとの比較 ]
大豆のような植物にはイソフラボンが含まれ、これはまたエストロゲン受容体と
結合することからフィトエストロゲンとも呼ばれる。この動物を使った研究では、
アテローム性動脈硬化患者に対するフィトエストロゲンの効用を調べ、結合型エ
ストロゲン(エストロゲンホルモン治療)の効用と比較する。
閉経前のサル189匹
に軽い高脂肪食を26ヶ月与え、その後卵巣を除去し閉経の状態を作った。除去後
36ヶ月、サルには1)フィトエストロゲンを含む大豆プロテイン2)フィトエスト
ロゲンを含まない大豆プロテインに結合型エストロゲン3)フィトエストロゲン
を含まない大豆プロテイン入り制限食のどれかを与えた。制限食と比べ、他の2
つのグループでは総コレステロール値がかなり低下した。
さらに、フィトエスト
ロゲンを含む大豆プロテインではHDL値が増大した。結合型エストロゲンではトリ
グリセリド値が上がったが、フィトエストロゲンを持つ大豆グループはトリグリ
セリド値に影響を与えなかった。プラークの大きさを測ったアテローム性動脈
硬化診断では、フィトエストロゲンを持つ大豆グループは結合型エストロゲン
ほどの有効性は示さなかったが、影響は見られた。
(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2001 86:41-47)
[ 食用大豆は心血管系疾患に有効:男性および閉経期後の女性を対象にしたプラ
セボ対照研究 ]
食生活での多い大豆摂取は心血管系疾患の危険性低下に関連するとされている。
大豆がエストロゲン様の働きをすることは分かっているが、血管の内皮組織に同
じような影響を与えるかは不明。
この研究では、大豆の心血管系に及ぼす影響を
調べるため健康体被験者213人(男性108人、閉経期後女性105人に大豆プロテイ
ン抽出物(プロテイン40g、イソフラボン118mg)か、プラセボを毎日、3ヶ月与
えた。この結果、大豆補給は、男性および女性で血圧の収縮期圧、拡張期圧、
トリグリセリド値、LDL/HDL比率をかなり下げた。ただ、血管のコンプライアン
スは大豆治療では変化無かった。
(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2001
86:3053-3060)
[ フィトエストロゲンの多い摂取は、閉経期後の女性の骨ミネラル密度増大に
関連するが、閉経期前の女性には影響しない ]
大豆の活性成分、イソフラボンのようなフィトエストロゲンは、体のホルモン
反応組織にエストロゲン様作用を行うと推測される。この研究では、食生活で
の大豆摂取査定と骨のミネラル密度を比較した。19〜86歳の中国女性650人に食
生活調査を行い骨のミネラル密度を計測した。
この結果、腰椎のミネラル密度は
イソフラボンを最も多く摂取しているグループでかなり高かったことが分かった。
また、イソフラボンを多く摂ると、閉経期後の女性の副甲状腺ホルモン、オス
テオカルシン、尿のN-telopeptide(骨代謝マーカー)の低濃度に関連するが、
閉経前の女性では骨ミネラル密度とイソフラボン摂取との間に関連性は見出せ
なかった。
(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2001
86:5217-5221)
*アミノ酸と脂肪酸
[ 男性の安定型狭心症患者における内皮細胞依存性拡張は血漿中Lアルギニン/
ADMA比率とは関係しない ]
Lアルギニンは体内にあるアミノ酸で、血管拡張剤の一酸化窒素基質として作用
する。Lアルギニンの効果は増大した一酸化窒素生成から生まれると考えられ、
血管の内皮機能を改善し酸化ストレス、凝血現象を軽減すると指摘される。
この研究では、ADMA(Lアルギニン阻害剤)に対するLアルギニン比率が内皮細胞
依存性拡張に与える影響を評価する。男性の安定した狭心症で軽度の高コレステ
ロール血症を持つ患者40人にLアルギニン(1日15g)またはプラセボのどちらか
を2週間与えた。2週間後、血中のLアルギニン濃度が上昇し、Lアルギニン/
ADMA比率も62%増大した。だが、血管機能の改善は見られなかった。
結論;Lアルギニン/ADMA比率は増大したが、内皮細胞依存性拡張は改善しない。
(Journal of the American College of Cardiology 2001 38:499-505)
[ γリノレン酸もしくは魚オイルの補給は健康体の高齢者のTリンパ細胞増殖を
減少させる ]
動物および人を対象にした研究では、多価不飽和脂肪酸(PUFAs)は免疫機能を
変化させることが指摘されている。この研究では、PUFAsを多少摂取した場合の
リンパ細胞の生成と、バクテリアやウィルスなどの侵入防止に重要なインター
ロイキン2、インターフェロンγなど免疫因子の選出への影響を評価する。
健康体被験者48人にプラセボオイルブレンドと、加えて1)αリノレン酸(ALNA)2g
2)γリノレン酸(GLA)770mg 3)アラキド酸(ARA)680mg 4)ドコサヘキサ
エン酸(DHA)720mg 5)エイコサペンタエン酸(EPA)720mg(魚オイル)のブ
レンドを12週間与えた。血液サンプルで末梢血単核細胞(PBMC)、リン脂質成分、
PBMCのリンパ細胞生成を分析した。
この結果、GLA、ARA、DHA、魚オイルの投与
によってPBMCリン脂質の脂肪酸成分はかなり変化した。また、GLAと魚オイル
投与でリンパ細胞生成が減少した。ALNA、ARA、DHAでは変化は見られなかった。
インターロイキン2またはインターフェロンγは変らなかった。
(Journal of Nutrition 2001 131:1918-1927)
*植物
[ 月経前症候群に対するセイヨウニンジンボク治療:プロスペクティブ、無作為、
プラセボ対照研究 ]
セイヨウニンジンボク(チェストツリー)の果実には月経前症候群の症状緩和
作用があることで古くから使用されている。ドイツの研究では、チェストツリー
の効用を評価する。平均年齢36歳の女性178人にチェストツリー錠剤(20mg)
またはプラセボのどちらかを連続3生理周期与えた。
この結果、チェストツリー
グループはプラセボグループに比べ、PMSの症状がかなり軽減したことが分かっ
た。被験者の自己評価でも不安感、怒り、イライラ、頭痛などの症状で改善が
見られたという。
(British Medical Journal 2001 322:134-137)
[ エフェドリン型アルカロイドダイエタリーサプリメント定量法の評価 ]
中国の伝統ハーブ、エフェドリン(Ma Huang)は喘息のコントロールに使用さ
れる。このハーブは米国では、ダイエットや運動選手の能力アップ用として使
われている。この研究では、ゲル状カプセルもしくは高プロテインドリンクチ
ョコレート風味の2タイプを使って、配合されているエフェドラ型アルカロイド
の定量化を行うため開発された方式を評価する。
この方式は、1998年開発された液体クロマトグラフ法(LC)を改造し、質量分析
(MS)による検出を可能にした。現在各研究所でこの方法の検査が行われており、
それが終了すれば同方法がエフェドラ製品に配合されるエフェドリン型アルカ
ロイドの定量法として正式に採用されるだろう。
(Journal of AOAC INTERNATIONAL 2001 84:761-769)
[ 妊娠のつわりにジンジャー:無作為、二重盲検、プラセボ対照研究 ]
妊娠初期のつわりにジンジャーを使う妊婦もいる。この症状は悪性のものでは
ないが、不快であり中には日常生活に支障をきたす場合もある。この研究では、
妊娠中のつわり緩和におけるジンジャーの効用を評価する。妊娠初期でつわりの
あるタイ女性70人にジンジャーカプセル(250mg)またはプラセボを1日4回、
4日間与えた。被験者には、つわりの回数などが尋ねられた。
この結果、ジンジャーグループでは、つわりの回数が目だって減少し、吐き気の
程度を測るLikertスケールではジンジャーグループ32人中28人が症状の改善を
報告した。プラセボグループは35人中10人だった。
(Obstetrics and Gynecology 2001 97:577-582)
*その他のダイエタリーサプリメント
[ カフェイン摂取は高齢者の骨損失割合を増大し、ビタミンD受容体遺伝子型と
相互作用を起こす]
この研究では、カフェイン摂取と骨のミネラル密度との関連性、およびカフェ
イン摂取、ビタミンD受容体遺伝子(VDR)の多型現象とミネラル密度との相互
作用を調べる。
この研究には、横断的分析で女性443人、3年の縦断的分析の96人
が参加している。カフェインを1日300mgより多く摂取した場合を多量摂取と定義、
また300mg以下を少量摂取と決めた。この結果、多量摂取は背骨での損失率が高
かった。VDR遺伝子型による分析では、tt遺伝子型をもつ女性はTT遺伝子型を持
つ女性に比べ、損失率が高いことが分かった。
(American Journal of Clinical Nutrition 2001 74:694-700)
[ 変形性関節炎におけるグルコサミン・サルフェイトの長期効能:無作為、
プラセボ対照臨床研究 ]
変形性関節炎治療には非ステロイド性抗炎症剤が使われるが、関節構造や修正
しない、また症状の進行を食い止めることが少ない。最近、グルコサミン・サル
フェイトが軟骨や関節組織の炎症に有効性があることが指摘されている。この
研究では、グルコサミン・サルフェイトが変形性関節炎の症状進行に与える影響
と関節構造を修正するかどうかを評価する。
50歳以上の主に膝の変形性関節炎
患者212人にグルコサミン・サルフェイト1500mgもしくはプラセボを1日1回、
3年与えた。症状の査定にはWestern Ontario and McMaster Universitiesが
行った。グルコサミン・サルフェイトグループでは、膝関節のスペースに変化は
なかったが、プラセボグループではスペースがかなり狭くなっていた。また、
グルコサミングループでは症状が20〜25%改善した。一方プラセボグループ
では多少の悪化が見られた。
(The Lancet 2001 357:251-256)
[ 加齢関連の不眠症に対するメラトニン治療 ]
老化によりメラトニン分泌が減少することで、不眠症に罹る高齢者は多い。この
研究では、高齢者へのメラトニン投与によって夜間のメラトニン濃度を回復し、
睡眠を改善するかどうかを評価する。50歳以上の30人に(半数は不眠症を訴える)
メラトニンを0.1mg、0.3mg、3.0mgの3タイプを就寝の30分前に投与した。さらに
プラセボ対照グループと比較した。研究期間は9週間。
この結果、正常な睡眠パタ
ーンを示す被験者グループでは、メラトニン投与による影響は見られなかった。
一方、不眠症患者グループでは、メラトニン投与により睡眠にかなりの改善が見
られたが、中でも0.3mg投与で大きな効果があった。3.0mgでは日中でもメラト
ニン濃度が上り、低体温症を発症した。
(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2001
86:4727-4730)