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【 米国サプリメント市況と密接な関係〜米国マスコミ報道の今 】

1990年代に2ケタ台の急成長を遂げた米国ダイエタリーサプリメント産業。 だが、代替医療ブームの中、有効性の徹底検証が開始され、セントジョンズワ ートをはじめとしたハーブの医薬品との相互作用や効果のほどがマスコミで 報道されるにつれ、成長に陰りが見えてきた。その後、市場は大幅な落ち 込みをみせ、企業は苦戦を強いられることとなる。日本でもTVの健康番組で サプリメントの動きが一変することがよくあるが、米国おいても今やマスコミ 報道はサプリメント市況を左右する大きな要(かなめ)となっている。米国 マスコミ報道の今とマスコミ対策を練る企業戦略を報告する。
※ダイエタリー・サプリメント:ハーブ、栄養補助食品などの健康食品、米国では一般的にdietary(食物の) saplimentと呼ぶ。

ハーブ製品、全体で2割弱の落ちこみ

Information Researchが調べた2002年8月までのダイエタリーサプリメント 売上は、ハーブ製品全体で19.0%の落ちこみ、各種ビタミンも6.8%の落ち こみをみせた。こうしたことから、大方の自然・健康食品の専門店舗が、ハー ブ製品の棚スペースをやむなく縮小するといった傾向が一時期見受けられた。 とはいえ、以前の市場の成長速度に比べ、現在が一時鈍化しているだけのこと で、業界の販売実績はまだまだ上向きで、販売戦略の多少の修正は必要なもの の、基本路線は変えないというのが大半だ。

こうしたダイエタリーサプリメントの売上に低迷をもたらした要因の一つに マスコミのネガティブ報道がある。市況はこうした報道に敏感に反応する。 かつて国民的人気を誇ったハーブのセントジョンズワート、ギンコ(イチョウ葉) などはここ数年売上が低迷しているが、その大きな要因として、代替医療素材 として注目され、その機能性が検証にかけられる中、薬剤との相互作用が報道 され、ネガティブイメージがついて回ったことだ。

むろん、セントジョンズワート、ギンコの単体使用に問題があるわけではない。 ある種の薬剤と併用した際に、薬剤の効果が減少するなどの弊害がおきるという ことに過ぎない。しかし、これが、常にマイナスイメージとして消費者に残った。 とはいえ、業界にダメージを与えるようなニュースばかりではない。

最近ではJournal of the American Medical Association(2002年6月号)で、成人 はマルチビタミン・サプリメントを食生活に取りれるべきとする報告記事を掲載。 また、8月にRush Institute for Health Agingから発表された研究報告でも、 「ビタミンEサプリメントは食事からビタミンEを摂取する場合と同じ有効性を 発揮する」など、業界を後押しするようなニュースが続いている。

マスコミ報道でサプリメント市況が大きく動く。消費者が、マスコミ報道に敏感 になっているということは、裏返せば、それだけ消費者がサプリメントや栄養素、 自身の健康管理に高い関心を向けるようになっているという証でもある。

老化防止に役立つ抗酸化製品市場が狙い目

米国のダイエタリーサプリメント市場は90年代に入ってからの代替医療への 関心の高まりから次第に活況を呈するようになり、94年に施行されたDSHEA (栄養補助食品教育法案)で規制緩和がなされたあたりから毎年2ケタ台の伸張 率を示すようになる。

しかしながら、こうしたブームは前述の人気ハーブの有用 性報告が発端となり、2000年に入ったあたりから、次第に鎮静化へと向かう。 ダイエタリーサプリメントはアメリカ人の日常生活と深く結びついている。 欧米ではハーブ使用の長い歴史があるが、アメリカでは歴史が浅く安全性や有効 性に疑問が残るとしている。そうしたダイエタリーサプリメントの使用に関して、 政府機関も積極的に研究に乗り出すようになったのが2000年頃。

NIH(米国国立衛生研究所)を中心とした政府機関が代替医療素材としてハーブ の有効性を検証していく中で、消費者へも次第に指導や教育が行き渡るように なり、やみくもにサプリメントに飛びつくということが少なくなってきた。 きちんとした目的を持ち、自分に適した栄養素を見極めようとする消費者が増 えてきた。

こうした中で、ダイエタリーサプリメント業界は新たなる活路を求めて奔走せざ るを得なくなっていった。売れ筋、消費者に受けるジャンル探しにやっきとなっ た。その業界が、今後のニーズとして注目しているのが次のような4つのジャンル。

1)関節炎の鎮静や緩和
2)老化防止
3)骨粗しょう症予防
4)生理の際の痛みや更年期傷害緩和

中でも、女性向製品市場は狙い目とみている。例えば、活性酸素が老化の主因 と指摘されているが、抗酸化剤が老化防止カテゴリーで奮闘、売上17.8%増を 示している(Information Resources Inc.2002年2月までの調べ)。

マスコミのネガティブ報道で売上げ失速も、女性向製品は奮闘

マスコミ報道の影響に話を戻すと、これまで人気を誇っていたハーブ類では、 ギンコ(イチョウ葉)が35.4%、エキナセア21.2%、ガーリック16.5%、 ジンセン33.5%、セントジョンズ・ワート40.2%、kava kava18.4%などそれ ぞれ減少し、苦戦を強いられている。

また、ダイエット素材として用いられていたエフェドラ製品に関する一連の 副作用報告で、政府が同成分配合ハーブ製品の使用や販売禁止の方向に動き 出していることや、FDAが同3月、ハーブのkava kavaが肝臓障害の副作用を起 こす恐れがあるという研究報告に基づき使用の警告を発令するなど、マスコミ のネガティブ報道でハーブ製品へのマイナスイメージが膨らみ、消費者の購買 意欲を喪失させるようなことが続いた。

ただ、確かに、ハーブ製品の売上げ低迷は、マスコミのネガティブ報道が何ら かで関わっているかも知れないが、代替医療ブームに乗った以前の売れ方が 異常であり、今が正常とする見方もある。

こうした中、110%のアップと唯一気を吐いているのが、ハーブのブラック コホッシュ。ブラックコホッシュは、女性のホルモンバランスを安定させ、 更年期傷害など女性特有の症状緩和に対する有効性が報告されている。これを 見ても、やはり女性市場が狙い目といえるかもしれない。

マスコミ戦略で、ハーブ使用の歴史や副作用情報をパッケージに印刷

マスコミの影響力を重視し、逆にこれを利用しようと戦略を立てる企業も出てき ている。例えば、Pharmavite社はAmerican Botanical Councilとパートナーシ ップを結び、ハーブ製品26種に関してハーブ使用の歴史や副作用などの詳細な情報 をパッケージに印刷している。

また、U.S. Parmacopeia’s Dietary Supplement Verification Programにも参 加、ConsumerLab.comとも契約し、積極的にサプリメント成分の品質分析を申し出て いる。

ともかく、マスコミ報道で、間違ったイメージが定着する前に、一般消費者に正確 な情報を提供しようと戦略を練っている。

他にも、さまざまな企業、店舗が、マスコミの先手を打ち、消費者の理解を深める ためにハーブを紹介したパンフレットや教育指導、製品の説明を行うオーディオ コーナーを設置するなど工夫を凝らしている。

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