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【 健康食品のネット販売サイト、米国で誇大告知規制 】

年々、世界的にインターネットが情報提供ツールとして浸透し、影響力を 高める中、とくにネットでの健康・医療関連商品の販売の告知についての規制 が強化されつつある。とかくインターネット上の法整備の後手が指摘されがち であったが、ネット先進国の米国では、ここ数年、健康・医療関連サイトの 誇大告知を摘発するなど先鋭的な取り組みを行っている。日本でも、こうした 動きに追随するかのように、今年8月末より健康増進法の虚偽・誇大表示のガイ ドラインが施行され、厚労省の改善指導が一部ネット販売サイトに行われるなど の措置がとられた。米国におけるネット規制の現況を報告する。

「疾患名を挙げて治療を謳う」違法宣伝、調査対象サイトの66%

今年9月、Journal of the American Medical Associationに掲載された 記事によると、インターネットでハーブ・サプリメント製品を販売している 業者の中で、誤解を招くような、違法な宣伝を行っているケースがとくに 目立ったという。 調査対象の443サイトのうち、「疾患名を挙げて治療する、予防する」など の宣伝文句を謳った違法サイトは292に上ったという。

米国ではサプリメントへの規制を求める声が年々強まっている。現在、サプリ メントは1994年に成立したDSHEA(栄養補助食品健康教育法)の管理下にある が、大まかに分けると、米食品医薬品局(FDA)が主に調法、成分、製造、 ラベル表示などを管轄し、姉妹機関の米取引委員会(FTC)が、印刷媒体、 テレビ・ラジオコマーシャル、インフォマーシャル、カタログ、インター ネットなど宣伝・広告での監視を行う。

1999年以降、FDAとFTCが協力して健康関連サイトを監視

最近では雑誌やカタログなどの宣伝媒体に比べ広告費が節減できることから、 インターネットでの広告・販売に力を入れる企業が急増している。 また、そうした情報を受け取るインターネット利用者も格段に増えている。 ある調べによると、アメリカ人9000万人以上が現在、インターネットから 健康情報を得ているという。

そうした一方で、医薬品ほどの厳しい規制を受けずに市販できるサプリメント による健康トラブルも発生し、製品の宣伝文句の違法も目立つようになった。 こうした事態を受け、FDAとFTCは協力して、FDAやFTCに遵守しないサイトや 製品の広告・宣伝の摘発に乗り出すことを発表した。

両機関は、1999年から“Operation Cure.all”と題し、インターネットの ウェブサイトを対象にした監視作戦を開始。結果、FDAは最低12製品を押収、 11製品に回収を命じ、また逮捕も43件に上った。

例えば、HIV感染およびエイズ治療としてハーブのセント・ジョンズワートを 販売したサイトに対する法的措置などがあるが、これに対し、医療関係者は、 セント・ジョンズワートはエイズ治療剤として使われるプロテーゼ阻害剤と 相互作用を及ぼすと、併用に際して注意を呼びかけている。

宣伝文句が正当な科学的根拠に基づいたものかを調査

両機関が監視の対象とするのは製造業者だけでなく、直接的、間接的にでも サプリメントの販売に関係する全ての個人、団体であり、その宣伝・広告の 中でのうたい文句が条項に照らし正しいものであるかを確認、またその文言 が正当な科学的根拠に基づいたものかを調査する。

FTCが掲げる基本ルールは、
1)顧客を引きつけようとする広告は真実でなければならず、誤解を招くよう   な操作がなされていないか確認する。

2)広告を作成する前に業者は、対象となる製品のキャッチコピーなどが適切  な研究などに基づいて確証を得ていることを確認する――   などである。

広告の作成前に確証を得るには、大半の製造業者は人に対する二重盲検、プラ セボ対照での臨床研究が必要となる。 また、FTCは基本的に、その製品や成分に関して厳しい研究は強要しないが、 米国の大学研究室で行われた、あるいは権威ある科学雑誌に掲載されたヒトに 対する臨床研究報告で最低1件を提出することが望ましいとしている。

サプリメント告知の望ましいあり方

それでは、どういった宣伝広告が望ましいのか。両機関の摘発を受けずにすむ のか。FTCは1998年、“Dietary Supplements An Advertising Guide for Industry”を発表し、広告に関するガイドラインを提示している。

その概要は以下の通り――

1)宣伝コピーの確認と意味の解釈
原則的に、広告のコンテンツを全体的に捉え、全て真実でなければならない。 例;広告で「大学が行った研究で証明されたところによると、ミネラルサプリ メントはアスリートのパフォーマンスを向上する」という文章を掲載する場合、 その「大学が行った研究」という部分に責任を持たなければならない。 また、ビタミンサプリメントの広告文に「心臓科医の90%が使用」と書けば、 消費者に“製品は心臓病に効果がある”との意味合いを伝えることになるため、 業者側はその証明をする義務が生じる。

2)身体の構造や機能についての言及
身体の構造や機能への製品の影響について言及することは、製品が何らかの 疾患へ有効性をもつとの意味を消費者に伝えかねない。たとえ広告文に何ら かの疾患名を挙げていなくても業者は示唆する有効性を証明する必要がある。 例;“Cold Away”などという名前がついたハーブ製品で「免疫を強化して、 冬、のどや鼻の健康を維持する」と宣伝した場合、コピー全体からその製 品が風邪に効果があるという意味合いを消費者にもたせてしまうため、業者 は科学的証明をする義務が生じる。

また、“Arthricure”という製品名をつけ、「関節の健康を維持」とする コピーと杖を突いて歩いている女性の写真の隣にダンスをしている同じ女性 の写真を掲載した場合、その製品が関節炎の治療に有効性を発揮するという 意味を伝えてしまう。この場合も、業者が科学的証明を行う義務が生じる。

3)情報を残らず公開
情報は、正の印象を与えようと負のイメージをもたらそうと、全てを包み隠 さず公開する。例;ダイエットサプリメントがプラセボ対照研究、二重盲検 (研究では規則的な運動とカロリー制限した食事療法も同時に行っている) を引用して、8週間で15ポンドを減らしたと宣伝する場合、運動と食事の カロリー制限を行ったことも同時に明らかにしなければならない。

4)宣伝文句の証明――広告コピー内に記載する“証明”に関し、その正確性 を裏付ける語句にも様々なレベルがある。例;“研究者がうなづいた!”など と宣伝すると、消費者は「科学者が全般的にその有効性に異議を唱えない」と いう意味にとってしまう。これは証明の正確性にはならない。 また、“海外で長年研究された”、あるいは“米政府が援助した研究”という 文句では、この実証に責任を持つ義務が生じる。

5)研究の程度――in vitro、動物、ヒトなどいろいろなタイプの研究がある が、原則的にはヒトによる臨床研究が最も信頼性高いと考えられる。動物、 in vitro研究も評価されるが、タイプはいずれにしろ量より質ということで ある。例;“in vitro研究で支持された”と宣伝しても、その研究では製品 に配合されている以上の成分濃度で試験されている可能性も否めない。

6)証拠の質、証拠の統合、専門家および顧客の感想など 例;果物成分を配合したサプリメントの抗凝血作用を示す場合、3件の研究を 引用すると仮定する。1件は1週間の期間で対照グループなしに行われた研究。

次は長期にわたって行われたがその影響が顕著に現れなかったもの。さらに、 静脈注射という手段で行われ顕著な抗凝血作用を示した研究。だが、1件目は 対照グループがなく短期である点、2件目は有効性のほどが評価できなかった点、 最後は静脈注射以外の経口投与で同じ結果が出るかどうかなどの点でこの3件 の正確性が揺らぐ。

また、体重減を助けると“証明”された食物繊維サプリメントの宣伝で、製造 会社は、食物繊維と体重減少とを関連付ける研究報告を持っているとする。 だが、製品と同じ量、同じタイプの食物繊維を使っていない研究、また、 製品と同量、同タイプの食物繊維を使っていても減少した体重を明確にして いない研究が中に混じっている。

こうした場合、全体から見て宣伝文句は “証明”されたとは言いがたい。ダイエット製品で、使用者の使用前後の写真 およびその横に「8週間で20ポンドやせました」などとコメントが記載され、 その側に“結果には違いが出ます”と表示を出すこととする。

一方、サプリメントは8週間で平均6ポンドを減少させると指摘する研究報告が 出ている場合。こういう場合、消費者に結果には個人差が出るということを 正確に伝えていない。誤解を招くと指摘されないためには、使用者のコメント にすぐ続いて同じ活字で“こうした結果は典型的なものではありません。 減らせる平均体重は6ポンドだと研究では指摘しています”とはっきり表示す る必要がある。

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