ビタミンやミネラル、そしてハーブは今やアメリカ人の生活に溶け込み、欠か
せないものとなっている。国民の60%以上が肥満であるとされ、食生活や栄養
素への関心は高まる一方だ。昨今、栄養素と疾患との関連性を示す膨大な数の
研究報告が発表され、ビタミンやミネラル、ハーブなどのサプリメントは単に
栄養補助というだけでなく、疾患予防の役割を果たすものとして変貌しつつあ
る。そうした米国におけるビタミンやハーブの最新の利用状況と栄養行政の近況
を報告する。
サプリメント、4つに1つに何らかの問題
Council for Responsible Nutritionが2002年に行った調査によると、成人の
75%はダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)の安全性、品質、効能を
信頼しているという。しかし、その一方で、ニューヨークの薬品系テスト会社、
ConsumerLab.comによると“サプリメントの中には、ラベルに表示されている
成分含有量に一致しないものや重金属に汚染されているものも多いと報告して
いる。
同社では、「我々がテストしたサプリメントの4つに1つには何らかの問題が見
つかり、特にハーブ製品はひどい」と指摘、製品の39%は成分含有量が表示
より少ないなどの不備があることを明らかにしている。
米薬局方、サプリメントの含有量とラベル記載の一致をチェック
米国でダイエタリーサプリメント産業が躍進しつづけ、製品がインターネット
や通販で簡単に手に入るようになったと共に、信用できない品物も多くなった。
そのため、事態を重く見た政府関連機関、US Pharmacopeia(UPS、米薬局方)
では、ダイエタリーサプリメントの標準化をはかる新しいラベル表示プログラ
ムを開設した。
このプログラムはDietary Supplement Verification Program(DSVP)と呼
ばれ、サプリメントの含有量がラベル記載と一致するかどうか、また殺虫剤や
重金属などの汚染があるかどうかをチェックする。ただ、成分の有効性や安全
性を調べることは目的としていない。
DSVPのテストをパスした製品はDSVPラベルが表示されるが、その第1号が既に
昨年12月から、商品棚に並んでいる。しかし、消費者支援団体、「National
Consumers Leagueは“DSVPは、消費者が製品は全く安全なものであると誤っ
て認識してしまいがち。再検討して誤解を招かないような表示を考えるべき」
と非難する。
FDA(米食品医薬品局)の介入や権限強化を強く求める声
ラベルの虚偽記載やDSHEA(栄養補助食品教育法)に背く宣伝文句に関するコ
ントロールは、ダイエタリーサプリメントを見守る政府機関の優先課題となっ
ている。ラベル表示課題は米食品医薬品局(FDA)が中心となって取り組んで
いるが、FDAのさらに積極的な介入やFDAの権限強化を求める声が周囲から起こ
っている。
FDAは、市場調査、検閲、インターネット検索、副作用報告、消費者からの苦情、
さらに他の政府機関からの情報などを基にダイエタリーサプリメント製品に関
する不正行為を監視している。
不正のあった製品や業者に対しては警告を行い、さらに悪質な場合、訴訟に持
ち込み製品押収、販売停止を求める姿勢だ。
ノニジュースやサメ軟骨製品など数製品を検閲、販売差し止め要求
FDAは昨年、業者80社以上の査察を行い、製品や製造過程、施設内部などを調
べた。2002年5月には、ノニジュースを製造するFresh Vitaminsを検査。
Fresh Vitaminsでは、免疫性疾患から関節炎、マラリア、アルコール中毒まで
治療するとして製品を販売していた。検閲を受けた後、Fresh Vitaminsは企業
ホームページから、疾患治療の宣伝用記載を削除した。
また訴訟に持ち込んだケースでは、例えば、Kirkman社の“Taurine325mg
Dietary Supplement Capsules”。同社が“Taurine使用で、自閉症が治る”、
また“発達不全に効果”と宣伝、販売したことに対し、FDAは「こうした記載に
ついての科学的根拠が証明されていない」と主張した。
その他、Lane Labs USAとAndrew Lane社に対し、サメの軟骨製品を始めとす
る数製品がダイエタリーサプリメントのジャンルで、がん治療をうたい文句し
ている点を追及、製品の押収、あるいは販売差し止め要求を行っている。
また、Triax Metabolic Acceleratorに対しては、ダイエット用ダイエタリ
ーサプリメント、Syntraxの成分に心臓発作や卒中の危険性が指摘される
tiratricolを含有している点を追及、販売中止を求めている。
さらに、今年3月には、合成エフェドリンを成分とするダイエタリーサプリメン
ト、約300万ドル分を押収した。
FDA、関連機関と連携しインターネット介したサプリメント被害の防止に乗り出す
FDAの監視、あるいは取り締まりに関しては、FTC(連邦取引委員会)などが
強力にバックアップしている。全世界的にインターネットが普及し、国境を
越えたダイエタリーサプリメントに関する不正行為や不良製品が増加、粗悪
製品や有害成分の汚染拡大が懸念される。
FDAはFTC、そしてヘルス・カナダとの協力体制を確立し、
“Operation Cure.All”と名づけた対策で、インターネットを介して広がる
ダイエタリーサプリメント被害食い止めに乗り出している。
また、輸入製品への監視ではUSCustomer Service(通関)とも協力、水際
での監視強化も行う意向だ。
また、インターネット販売に関しては、2002年2月、FDAとFTCは、
Australian Competition and Consumer Commissionなどが主導を握る国際
インターネット・サーチに参加。こうした検索により、FTCは、疑わしい宣伝
文句で健康関連製品を販売する国内、海外のサイト280以上に注意を促す書簡
を送付した。
副作用についてのFDAへの報告は実際に起きている件数の1〜10%にすぎないとの推定も
FDAは、今後もこうしたダイエタリーサプリメントの監視姿勢を崩さない意向
を固めているが、監視ツールの一つとして重視されているのが副作用報告シス
テム。頼りとなるのがCFSAN(FDA’s Center for Food Safety and
Applied Nutrition)Adverse Event Reporting System(CAERS)と呼ばれ
ているものだ。
専門家分析によると、副作用のFDAへの報告は実際に起きている件数の1〜10%
にすぎないと推定される。CAERSは総合的なコンピューターシステムで、CFSAN
規制製品に関する副作用報告や消費者の苦情の収集・分析をより迅速に行うこ
とを狙いとする。