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【 遺伝子組換え食品、機能性食品へ方向転換 】

栄養素は補助剤よりも食品で摂りたい―そんな消費者のニーズに応え、機能性食品 ブームが起きている。ビタミン、カルシウム、鉄などを加えたミルクやジュース、人気ハ ーブのセントジョンズウォート入りスープまで出てきたほどだ。中でも、目を見張るのが 「機能性スナックバー」の種類の豊富なこと。世界中で批判の的になっている遺伝子 組み換え(GM)食品の開発メーカーも、「栄養素は食べ物で」というこの消費者動向 に目を向けてか、栄養素を強化した商品の生産へと方向転換しつつある。「バー」を 中心にした機能性食品とGM食品の現状、およびアメリカの大手開発メーカーの取り 組みを報告する。

米国の機能性食品市場、10-15%と急成長遂げる

健康増進のために栄養素が強化された、スナックやジュースなどの一般食品が相次 いで登場している。栄養補助食品のメッカ、米国でも錠剤のサプリメントより食品という 形態の方が気軽で食べやすいと感じている人がまだまだ多いからだ。牛乳に初めて ビタミンDが配合されたのは1933年。食品に機能性を求めるのは、今に始まったこと ではく、昔からのごく自然な流れといえる。

米国の機能性食品市場は、推定200億ドル。一般食品市場の伸び率が年間、1-3% なのに対し、10-15%と急成長を遂げている。ワシントンに本部を置く国際食品情報 評議会(IFIC)は、1,000人を対象にした電話調査で、91%が「機能性食品について の情報がもっとほしい」、95%が「健康な食生活が病気予防になつがると信じている」 などと答えていることから、「消費者は、食品で栄養素を摂取したいと望んでいる」と結 論付けている。

FDAが大豆の心臓病予防を認可、大豆たんぱくのシリアルなど続々登場

こういった消費動向を踏まえて、ジョンソン・アンド・ジョンソンをはじめとする大手薬品 会社も機能性食品市場に次々と参入し、ケロッグ、ハインツ、ネッスル、クラフト、キャン ベルなどの大手食品会社は、大規模な栄養部門を設け商品開発に力を入れている。

米国食品医薬品局(FDA)はつい最近、大豆たんぱく質の摂取は心臓病の予防に効 果があることを認めた。これにすぐに反応したのがケロッグだ。先月、ボール一杯が6.25 グラムの大豆たんぱくを含むシリアルを発売。大手メーカーによる大豆たんぱく質を素材 にしたシリアルはこれが初めてという。

ニューヨークに拠点を置くデーターモニター・アメリカは「メーカーは、消費者がどういっ た成分に最も関心を示しているかに気をくばり、正確に把握しておく必要がある」と指摘 する。ケロッグの例がまさにこれだ。「データモニター社」によると、エキナセアやセント ジョンズワォートといったハーブ素材が注目されているものの、ビタミン、ミネラルといた 基本的な栄養素に関心を示す消費者がまだまだ大半を占めているという。

そこで人気の成分は、カルシウム。カルシウムを加えたオレンジジューズ、即席ライス、 パスタなどが出まわっている。ビタミンも機能性食品の定番だ。ただし、キャンディーや ガムなど「お菓子」の類いとなると、ギンコ(イチョウ葉)、ジンセン(朝鮮人参)、エキナ セアなどのハーブ類が目立つ。

目的に合わせ、ターゲット絞った商品開発進む

Nutrition Business Journal誌によると、米国のスナックバー市場は、栄養補強バーが 8億6千万ドル、Slim Fast、Boostといったダイエットバーが2億ドル、NutriGrain 、 Snackwellsなどのシリアルバーが7億7千万ドルと、合わせて約18億ドルの市場だ。 中でも、エネルギー増強をうたったスナックバーが売れている。ハイカー、運動選手、 女性の運動選手といった消費対象を絞り込んだ商品開発が最近の傾向だ。

また、コレステロール値を下げる、糖尿病に効く、ダイエット効果がある、記憶力を増進する、疲労 を回復する、とターゲットを絞った商品も多い。目的に合わせて、いつでもどこでも気軽 に食べられるのがなんといっても人気の秘訣といえるだろう。

70年代に話題となり、今でも信仰者の多いアトキンス博士のダイエット。そこで、消費者 に右にならえした滋養強壮バーも多い。アトキンスダイエットに基づいて、成分は高プロ テイン、高脂肪、低炭水化物。具体的には、18グラム、19グラム、2.6グラムの割合。 それ以外のバーは、高炭水化物、低脂肪と逆の組み合わせになっている。

ギンコ(イチョウ葉)、緑茶、大豆など日本由来の素材が人気

ゾーン・ダイエットブームを引き起こしたベストセラー、Barry Sears著「The Zone」。これ を基にしたバーは、総カロリーのうち40%炭水化物、30%たんぱく質、30%脂肪。この 配分を採用しているバランス・バー社は「40-30-30プランは、血糖値のバランスを 整える効果がある」と指摘する。

また、ギンコ、緑茶といった話題のハーブ成分を入れたバーも相次いで登場している。 心臓病への予防効果で注目されている大豆たんぱく質も人気成分のひとつ。ダリアの 塊根やキクイモの塊茎に含まれる繊維質のイヌリンも、鮮度を長持ちさせるほか、ミネラ ルの吸収を助け、腸内バクテリアを排除し、悪玉コレステロールを下げる効果があると評 判だ。フロリダ州のパフォーマンス・ゾーン社は、55グラムのエネルギーバーに10グラム のイヌリンを加えているという。

遺伝子組み換え食品、機能性食品化でイメージの転換図る

ヨーロッパの遺伝子組み換え(GM)バッシングが飛び火し、元祖アメリカでも敬遠ムード が漂っている。GM種子の使用をしばらく見送るという農家もあり、「GM食品は死んだ」 とまで言い切るアナリストも出てきたほどだ。安全性を裏付ける科学的データが十分揃 わぬうちに、市場拡大を早急に進めたのと、農薬散布の手間が省けるとか、収穫量が 増えるという、農業生産者に対する利点に重きをおいた背景が足を引っ張ったと見る関 係者は多い。

アメリカは1996年から、GM技術を使った種子を発売、今では栽培されている大豆の 50%以上、トウモロコシの30%がGM種子を使っている。しかし、米国トウモロコシ生産 者協会は昨年、「消費者から敬遠されている作物を作っても仕方がない。GM種子を使 わない方向を検討するように」とメンバーに警告するなど、世界で栽培されるGM作物 の4分の3を生産するGM大国アメリカにも陰りが見えてきた。

このまま、「GM離れ」が進めば、GM種子メーカーに打撃を与えずにはおかない。そこで、 種子や農薬を作っているモンサント、デュポンといったアメリカの大企業が、これまでの生 産側重視から、栄養素を強化するなど消費者重視に方向転換しつつあるのが明らかに 分かる。世界的に印象の悪くなったGM食品のイメージ改善に大手メーカーが乗り出した。 以下、代表的な企業の取り組みを紹介する。

○モンサント

種子や農薬を作り、GM種子では世界的に有名なアメリカの大企業モンサント社。除草 剤をかけても枯れにくい種子「ラウンドアップ・レディ」(Roundup Ready)を開発した会 社だ。ところが、世界第2位の大豆生産国ブラジルが、世界的なGM農産物への不信を 受けて遺伝子組み換え大豆の栽培を止めるなど雲行きが怪しくなってきたため、ここに きてこんな方針を打ち出している。

「バイオ技術による食品開発は今後、おいしく、栄養価を高めるといった食品の質向上 に重点を置いていく」。主体を農業生産者から消費者へ―この方向転換に基づいてす でに商品の開発を進めている。

マーガリンやショートニングの健康面でのベネフィットを高める大豆油のほか、家畜のエ サ用にヘルシーな野菜油やコーン油を2年以内に開発したいという。また、2002年から 2006年の間には、調理過程で油をあまり吸収しないじゃがいの商品化。実現すれば、 さらにおいしく、健康にもいいフレンチフライやポテトチップが市場に出まわることにな る。また、2006年をメドに、黒い斑点のできないじゃがいも、味もよく栄養価を高めた Canola、大豆、麦などの開発も進めているという。

○デュポン

パイオニア・ハイブレッド社との共同事業で、GM技術を使っていない低脂肪酸の大豆 油を生産しているほか、GM関連では最近、味をよくした大豆の開発に力を入れている。

○ダウ・ケミカル

世界最大のケミカル会社。子会社を通じてバイオ農業部門の強化を図っている。健康 にいい調理用油を作る、気温に対し安定性があり、脂肪酸の低いヒマワリを作っている ほか、スターチレベルの高いトウモロコシを現在、開発中。子会社のひとつダウ・アグロ サイエンスは、インディアナ州インディアナポリスに本社を置き、バイオ技術を使った農 業製品を手がけ、世界を市場に売り上げは20億ドルを超える。

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