米国立衛生研究所(NIH)の一機関であるオフィス・オブ・ダイエタリーサプリメント
(ODS)はこのほど、ダイエタリーサプリメントに関する優れた研究をまとめた
Annual Bibliography of Significant Advances in Dietary Supplement Research
第5版を発表した。ODSは、年間に一流医学誌、研究誌などで発表された論文から優れ
たものを厳選し取りまとめ、2000年から毎年発表しているが、今回も2003年度にLancet、
JAMAなどに掲載された栄養成分と疾患、健康維持に関する論文300件以上から総数25件を、
厳しい目で選び出した。第5版では、(1)サプリメントと骨の健康(2)サプリメントと
がん(3)サプリメントと循環器系の健康(4)サプリメントと炎症(5)サプリメントと
胎児・新生児といった項目に分類し、それぞれ選び出した論文の概要を紹介している。
各項目の主要研究は以下の通り――
■サプリメントと骨の健康
British Medical Journal(BMJ)掲載:
成人男女の骨折および死亡率に対するビタミンDサプリメントの影響骨粗しょう症患者
の骨折予防で、最も費用効率の高い対策としてビタミンDサプリメントを検証する。
英国の研究グループは、65歳から85歳の内科医2,686人(男性2,037人、女性649人)
にビタミンD(100,000IU)か、プラセボのどちらかを4ヵ月毎、5年与え続けた。
この結果、ビタミンDグループでは、骨折部位に関わらず最初の骨折割合が22%低下
したことが分かった。腰、手首、上腕などに限って言うと33%低下している。ただ、
死亡率に関しては、これといった影響は見られなかった。
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism掲載:
ビタミンD不足患者(閉経期後女性)のカルシウム+ビタミンD治療で骨形成マーカー
によるBMD予測カルシウム+ビタミンDサプリメントは、骨ミネラル密度(BMD)の向上
に有効。だが、短期的治療についてはその有効性が評価されていない。研究グループ
は閉経期後の65歳以上で、血清中の25(OH)D値が12 ng/mlの女性192人を対象に調べた。
このグループは、ビタミンD不足の危険性が高いと考えられる。被験者には、炭酸カル
シウム500mg+ビタミンD400IUか、プラセボが1日2回、1年与えられた。被験者のBMDが
研究開始後、3、6、9、12ヶ月の時点で計測された。
この結果、カルシウム+ビタミンD
グループでは、BMD、カルシウム恒常性、骨形成マーカーがそれぞれ向上したことが分
かった。3ヶ月の時点で、骨形成マーカーとBMD変化には相関関係が見られることから、
研究者は、マーカーの短期的変化でBMDの長期的変化が十分占えると指摘している。
――など。
■サプリメントとがん
Journal of the National Cancer Institute掲載:
セレンサプリメントと非黒色腫皮膚がんの二次予防Nutritional Prevention of Cancer
Trialでは、1度以上の扁平上皮がん病歴、あるいは2度以上の基底細胞皮膚がん病歴を
持つ患者1,312人を対象に調べた。
被験者には、セレン(200マイクログラム)か、プラ
セボが毎日与えられた。これによると、セレンサプリメントと基底細胞がん発症との
関連性は見られなかった。ただ、非黒色皮膚がんと扁平上皮がんの危険性は高くなって
いた。
Indian Journal of Pharmacology掲載:
化学療法による悪心、嘔吐予防に対するジンジャーの有効性研究グループは、がんの
化学療法による吐き気を抑制する医薬品とジンジャーを比較した。
抗がん剤を投与され
た患者60人はグループに分かれ、さらに(1)粉末ジンジャーカプセル2個(1,000mg)
+saline(2ml)を化学療法20分前に静注;化学療法6時間後に粉末ジンジャーカプセル
2個(2)ラクツロースカプセル2個+metoclopramide(20ml)を化学療法20分前に静注;
metoclopramide(5mg)を経口で化学療法6時間後に投与(3)ラクツロースカプセル2個
+ondansetron(20mg)化学療法20分前に静注;ondansetronカプセル2個を化学療法6時間
後に投与――をそれぞれ与えた。この結果、粉末ジンジャーはmetoclopramideに匹敵して
有効だったが、ondansetronの効力を下回った。
――など。
■サプリメントと循環器系の健康
Circulation掲載:
アテローム硬化に対するビタミンCおよびビタミンE併用の影響Antioxidant
Supplementation in Atherosclerosis Prevention(ASAP)研究では、頚動脈のアテ
ローム硬化進行抑制に関するビタミンCおよびビタミンE投与の有効性を検証した。
研究グループは、45歳から69歳の喫煙および非喫煙男女440人に、食事と一緒に
(1)d-α-tocopherol(91mg)(2)徐放型ビタミンC(250mg)(3)1錠に
d-α-tocopherolと徐放型ビタミンCの混合(4)プラセボをそれぞれ6年間与えた。
この結果、d-α-tocoperolとビタミンCグループではアテローム硬化の進行が全体
として26%抑制された。男性では33%、女性は14%となっている。また、男女合わ
せて見ると、頚動脈の血管壁は、プラセボグループで平均0.014mm増大した。サプリ
メントグループでは0.010mmだった。
Archives of Internal Medicine掲載:
テアフラビンが豊富な緑茶抽出物のコレステロール値低下の影響力を検証研究
グループは、中国在住、18歳以上で軽度から中程度の高コレステロール血症を呈
している240人を2グループに分け、テアフラビンが豊富な緑茶エキス375mg(テア
フラビン75mg、カテキン150mg、その他ポリフェノール150mg)か、プラセボの
どちらかを、12週間与え続けた。
この結果、緑茶エキスグループではHDL(「善玉」
コレステロール)値に対する総コレステロール値、LDL値の比率が低下したことが
分かった。プラセボグループでは変化は見られなかった。――など。
■サプリメントと炎症
Am J Physiol Renal Physiol掲載:
高血圧自然発症ラットの高血圧改善と腎間質性炎症減少に関するメラトニンの有効性
を検証研究グループは、高血圧自然発症ラット(SHR)グループとWistar-Kyotoラット
(正常)グループに、それぞれメラトニンを混入していない水を与えた。また、別の
SHRグループには水100mlに対しメラトニン10mgを混入したものを与えた。さらに全
グループには、塩化ナトリウム(4%)入りのエサを6週間与える。
この結果、メラトニン
を混入していない水を与えたSHRグループでは、血圧が上昇。一方、メラトニン治療の
SHRグループは、研究期間6週間の間に、徐々に血圧が下降したことが分かった。
――など。
■サプリメントと胎児・新生児
Journal of Epidemiology掲載:
口唇口蓋裂の危険要因としてのレチノイン酸受容体α遺伝子、総合ビタミン使用、肝臓
摂取研究者グループは、妊娠中のデンマーク人女性869人を対象に研究を行った。
妊娠に総合ビタミン剤(ビタミンA)と肝入りの食事を与えた。総合ビタミン剤に含まれ
るビタミンAは800当量(RE)と推定される。新生児の血液からDNAサンプルを抽出。
この結果、口唇裂は、口蓋裂の有無如何に関わらず、RARA遺伝子型とは関連性がない
ことが分かった。また、ビタミンAは多く摂ると、口唇口蓋裂の危険性低下に繋がること
も分かった。ビタミンAを1日500RE増加すると危険性は0.88低下するという。――など。