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【 新感染症時代に活躍が期待〜米疾病予防センター(CDC)の役割 】

昨年、日本ではBSE(狂牛病)問題が発生し、その後食品の偽装表示などの 発覚で、食品の安全性に対する国民の不安や不信が高まった。また健康食品に ついては中国のヤセ薬による健康被害で、日本の健康産業界までもが信頼を 失墜しかねない状況に追い込まれた。こうした一連の不祥事に関連して、 食品衛生法改正で安全性が疑われる商品の流通禁止や健康増進法による健康食品 の虚偽・誇大広告の禁止が盛り込まれる格好となったが、輸入食品の増加などで、 今後さらに食品の安全性についての監視が強まり、公衆衛生に絡む規制が強化 されることが予測される。一方、米国では米疾病予防センター(CDC)が国民の 公衆衛生問題に取り組み、健康管理に寄与している。CDCの最近の動向を報告する。

45カ国に関連施設、約8,500人が公衆衛生問題に取り組む

米疾病予防センター(CDC)は米保健福祉省(HHS )の傘下機関で、ジョージア 州アトランタに本部を置く。1946年、US Public Health Service(PHS)の 一環としてアトランタのダウンタウンにある古いOffice of Malaria Control in War Areasの中に設立された。1951年、Epidemic Intelligence Service (EIS)が設立。これは国内および世界で発生した緊急事態に対応するチームである。 1955年、Polio Surveillance Unit(PSU)ができる。1961年、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)の発行が始まる。エイズ発症第1号も1981年、 このレポートで発表された。

1966年、Smallpox Eradication Programを開始。アフリカ20カ国で、天然痘 撲滅、はしかの抑制に乗り出す。1980年、機関をCenters for Disease Control と改名。組織全体の構築改善を図る。以後、Violence Epidemic Branch、 Office of Smoking and Health、Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotionなどを次々に設立し、1992年、機関名にPreventionを 付け加える。2000年度では、47州のCDC関連施設で2千人以上が業務を行っている が、そのほか海外45カ国の施設などを含めると全体で約8千500人が公衆衛生問題に 取り組んでいる。

HIVやSARSなど感染症の撲滅に先進的取り組み

米疾病予防センター(CDC)が目指すところは、自国あるいは海外の人々の健康 と安全を守ることで、世界中の医療・健康関連機関と協力し、情報の収集、配信 などを行いながら公共の健康促進に努めている。

また、疾患予防や制御、環境衛生、健康教育にも力を入れている。HIVや最近の SARSのように、現代では人々の生命を脅かす疾患が世界的に広がる傾向が強く なっているが、こうした疾患予防および撲滅におけるCDCの役割は日ごとに大き くなっている。

CDCは、特に感染症の流行に対しては、Epidemic Inteligence Service(EIS) プログラムを通じて取り組んでいる。最近、20カ国以上にField Epidemiology 米疾病予防センター(CDC)Training Programを設立し、感染性疾患の検出や 抑制に的をしぼっている。

また、食物起因性疾患調査ネットワーク、PulseNetを通し40医療研究所でO-157や サルモネラ菌検出を行っている。さらに、女性のために乳がん、子宮頸がん検査 を充実させ、1991年から1999年までにNational Breast and Cervical Cancer Early Detection Programを通して250万人以上を診察し7千394件の乳がんを 発見している。

肥満問題、CDCの最優先課題に

CDCなど医療関連機関が取り組む健康問題は、今や様々な分野に広がっている。 その一つに狂牛病問題がある。アメリカでは、CDCをはじめ米農務省、 米食品医薬品局、米国立衛生研究所が一体となり、アメリカ国内での狂牛病の広 がりを食い止める努力を続けている。CDCでも、定期的に調査を行い狂牛病の発生 に目を光らせている。

また、CDCが現在、最優先課題として取り組んでいるのが肥満問題。米国では この20年ほどで、成人の肥満度合いが全体の60%以上を占めるようになって いる。また、成人にとどまらず、子供の肥満度も1980年代以降、2〜3倍に膨れ上 がっている。

肥満はそれだけですむ問題ではなく、糖尿病や高血圧、心臓病、がんなどの疾 患を引き起こす大きな要因としても憂慮される。成人型糖尿病といわれる、II型 糖尿病が今や子供の間で広がっていることも、肥満対策を急ぐ要因となっている。 また、米国では肥満や太りすぎに関連した医療費が年間千117億ドルにものぼって おり、これが肥満への取り組みを重視する理由にもなっている。

これまでII型糖尿病の発生は成人以後になることが多かったが、最近は児童や 思春期で罹患するケースが急増している。これは、カロリー摂取やファースト フード、テレビやコンピューター利用の激増、戸外活動や運動時間の激減などが 要因として挙げられる。

CDCは現在、肥満とそれに関連する慢性疾患を削減することを狙って、12州に対し 資金援助を行っている。この援助により、栄養や運動活動状況を検査し進展させ 肥満を防ごうというもの。例えば、マサチューセッツ州の場合、NIHは、脂肪を 削減するために野菜・果物摂取を増大させるというPlanet Health プログラムを 展開。CDCは、現在このプログラムを公立、チャータースクールシステムへ拡大 する支援を行っている。

ダイエット剤やサプリメント使用に関しても厳しい目

CDCでは最近、フロリダ、アイオワ、ミシガン、ウエストバージニア、ウイスコン シンの5州を対象にダイエット剤の使用を調査した。これによると、成人の7%が 過去2年のうちに市販のダイエット剤を使用したと回答。2%がphenylpropanolamine、 エフェドラ関連製品の使用を報告した。

また、男女とも肥満者の間でダイエット剤使用が増加しており、女性の場合は30%、 男性が14%という報告が出ている。

ダイエット剤以外のサプリメント使用に関してもCDCは厳しい目を注いでいる。 CDCは最近のハーブ、kava剤使用と肝臓障害との関連性を重視し、ドイツとスイス などで報告された肝臓障害の副作用報告を掲載している。さらに現在、問題に なっているエフェドラ関連製品での副作用についても、1993年から1995年まで テキサスで通報されたケースを発表している。

ヘルスケア情報を広く浸透

疾患やヘルスに関する最新情報を提供するのも大切だが、CDCは情報を一方的に 発信しているだけではなく、広く一般に浸透させる努力も行っている。 CDCは幾つかの発行物で市民に適正なヘルスケアを呼びかけている。

Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)には、州や地方自治体医療 機関に報告された感染症、慢性疾患、環境破壊、その他障害などに関する詳細 データが盛り込まれている。

また、公共の医療社会が関心を持つ国際的なトピックスに関する報告が掲載され ている。 Emerging Infectious Disease Journalは、公共衛生に関する情報を促進する ことで急激に広がる感染性疾患と闘い、対策に遅れが生じないようにする狙いで 発行されている。

また、Behavioral Risk Factor Surveillance System(BRFSS)は、アメリカ 国民がとる危険な行動やそれに関連する健康問題に関する情報を掲載している。 BRFSSデータは、州や地方レベルで疾病予防や健康促進状況の評価に使用される。 CDCはもちろん、公共の健康や疾病予防を統括する唯一の機関ではなく、政府の あらゆる期間・団体と協力体制を敷き、一丸となってヘルス、およびヘルスケア 問題に取り組む。

HHSの参加機関としてともに力を尽くしているグループには、 National Center for Health Statistics、National Center for Environmental Health、National Center for HIV, STD and TB Prevention、 National Center for Injury Prevention and Controlなどがある。 CDCは疾患予防や研究に対し、多くの資金援助プログラムを提供している。

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