予備軍を含めて1千600万人はいるといわれる米国の糖尿病患者。子供や十代に発症
するインスリン依存型のタイプIと、40歳以降に発症する非インスリン依存型のタイ
プIIに分かれるが、最近では子供の間にタイプII糖尿病が急増していることに医療関
係者は危機感を覚えている。米国で糖尿病の改善に有効とされる栄養補助食品、ハ
ーブ、代替医療を紹介する。
米国で精神機能と糖尿病との関連研究進む
インスリンに過敏なタイプIと違い、タイプIIは血糖値を制御するインスリンをう
まく活用できなくなるのが大きな特徴。米国の糖尿病の90〜95%がこのタイプII型。
また、タイプIIになる要因には運動不足、家族の病歴などが挙げられるが、中でも肥
満が主因だといわれ、最近子供の肥満が急増していることも子供にタイプIIが増えて
いる現状を説明するものだという。
糖尿病の症状は、過剰なのどの渇きや過労から始
まり、ひどくなると心臓病や神経障害など重度の合併症を引き起こすため恐れられて
いる。精神機能と糖尿病との関連性を調べる研究も多い。
Archives of Internal Medicine1月24日号に掲載された米疾病予防センター(CDC)
による研究では、ボルチモア、メリーランド、ポートランド、オレゴン、ミネアポリス、ミネソ
タ、ペンシルベニアなどに住む65歳以上の白人女性9千679人を対象に6年間にわた
って調査している。
そのうち、682人が糖尿病患者と認定。報告によると、糖尿病患者は対照グループに比
べ、認識機能に関する3つのテストで低いスコアを出している。また、認識力が低下する
スピードも速くなっていた。特に15年糖尿病を抱えている患者は、認識力低下の危険
性が57%から114%も高くなっていた。
また、心臓への影響を調べる研究では、マサチューセッツの研究者グループが26歳
から82歳の男女3千人を調べているが、糖尿病と診断された被験者はいなかったが、
約20%にある程度のグルコース過敏が見られた。
空腹時にインスリン濃度が最低のグループでは、凝結ならびに抗凝結物質のバランス
は維持していた。だが、空腹時のインスリン濃度が急上昇したグループでは、過剰な
凝結作用が見られたという。また、粘着性の血中プロテインであるフィブリノゲンを
分解する能力が損なわれていた。
米国で糖尿病に有効とされる栄養成分・栄養補助食品
一度糖尿病を発症するとその治療は一朝一夕には成功しないが、食生活やライフス
タイルとの関連性が強いことから予防できる病気といわれる。例えばアメリカ人の食
生活では、ソフトドリンクやクッキー、ケーキなどの甘味類から年間平均150ポンド
(約68キロ)を消費、反対に野菜や果物が過不足気味であるという特徴から、食生活
の見直しが叫ばれている。
特にほとんどのアメリカ人家庭で使われている加工食品が
元凶といっても過言ではないだろう。さらに、ある種の多価不飽和脂肪の不足や脂肪
摂取のアンバランス、クロム不足、植物性化学物質の欠乏など、こうした食生活を変
えることが血中のグルコース濃度の制御に繋がる。それと同時に、体のグルコース、
インスリンの効率的な活用を助け、合併症を防ぐような栄養素を摂取することの重要
性も強調されている。糖尿病に対応する栄養素には次のようなものが挙がっている。
@ 多価不飽和脂肪(PUFAs):細胞内膜の柔軟性がインスリン受容体を健康にし、効
率的なグルコース代謝を行う。PUFAsは細胞内膜を柔軟にするもの。中でも重要な
PUFAsには、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)がある。
A クロム:この微量ミネラルは、インスリンの機能を正常にする働きがある。この
栄養素が不足すると、グルコース濃度の上昇やインスリン結合、インスリン受容体の
数減少、HDL(「善玉」コレステロール)値低下、トリグリセリド値上昇といった糖
尿病に似た症状を呈する。1日200〜400mg摂取がタイプII糖尿病を防ぐと指摘される
が、患者に対しては足りないという指摘もある。1997年に行われたUSDAと北京大学に
よる研究では中国人患者60人にクロミウムピコリネート500mgを1日2回与えたとこ
ろ、偽薬に比べその有効性に格段の違いが出たという。
B アルファリポ酸(ALA):1970年に行われた研究ですでに、ALAがグルコース燃焼
を増加させることが指摘されている。ドイツの研究では、グルコースの燃焼や細胞へ
の取り込みを50%増加することを示した。また、糖尿病に多い酸化ストレスを減少さ
せることもわかっている。
また、糖尿病の合併症としてよく見られるのが神経障害。
糖尿病の50%以上で起こるといわれるが、Diabetes Careが掲載した研究によると、
多量のALAを数ヶ月間にわたって与えつづけると、ダメージを受けた神経機能を部分
的に回復させるという。ドイツの研究者グループは、成人の糖尿病患者73人にALAを1
日800mgあるいは偽薬を与え観察した。この結果、ALAグループでは交感神経系でか
なりの進歩を見た。
C マグネシウム:適切なマグネシウム摂取は、グルコース過敏や視覚障害などの糖
尿病合併症減少と関連性があることが研究で示されている。
D タウリン:糖尿病患者では血中のタウリン濃度が低いことが指摘されている。イ
タリアで行われた研究では、患者73人にタウリンを与えたところ血小板の凝集を抑制
したという。
E バナジウム:バナジウムはいまだ必須栄養素に分類されていないが、インスリン
効果を真似る働きをすることが分かっている。これまでの研究でも、グルコース耐性
を改善し血中グルコース濃度を下げることが指摘された。
F ビタミンA:カリフォルニアの研究者グループは、タイプII患者52人にグルコース
とインスリンを注入。その後多量のビタミンAを与えたところ、インスリンの効率的
な活用が見られたという。
G ビタミンC:イギリスの研究者グループは被験者12人にビタミンC投与後、糖尿病
のコントロール値を査定するため、ブドウ糖のたんぱく質への非酵素的結合を表す糖
鎖形成を計測した。これによると、ビタミンCが糖鎖形成を減少させたという。ま
た、ビタミンCは抗酸化剤として、グルコースと細胞受容体サイトを争うことで有益
な働きを示すことも指摘されている。マサチューセッツ大学研究者グループは、ビタ
ミンC投与が糖尿病を悪化させると考えられているソルビッドの蓄積を抑えたことを
示した。
H ビタミンE:テキサス大学研究者グループは、糖尿病患者28人にナチュラルビタミ
ンEを1200IU、8週間に渡って与えた。この結果、被験者のLDLの酸化傾向が抑制され
たという。
I オメガ3脂肪酸:魚オイルに含まれるこの必須脂肪酸がインスリン耐性をかなり減
少させることは、多くの研究で明らかになっている。
J ファイバー(食物繊維):食物繊維の多い食生活は糖尿病の危険性を低下させる
という研究報告が多く行われている。ハーバード大学は女性6万5千人以上、男性4万5
千人以上を対象にした研究で、未精白の穀類を多く食べたグループは糖尿病の危険性
が30%減少したことを明らかにした。専門家は、未精白のパンやパスタなどを1日数
杯分、そして野菜・果物を5杯分食べることを薦めている。
米国で糖尿病に有効とされるハーブ(薬草)製品
また、有益性が研究で指摘されているハーブ、植物には次のようなものがある。
@ ビターメロン(ニガウリ):1993年インドで行われた研究では、糖尿病患者6人に
ビターメロンを1日100ml与えたところ、3週間後空腹時のグルコース濃度が54%低下
したという。また、7週間後では被験者全員が正常値に戻った。
A 朝鮮人参:1995年、フィンランドで行われた研究では朝鮮人参を1日200mg、8週間
にわたって与えたところ、偽薬と比べ血中グルコース濃度や体重が減少、感情状態な
どが向上したという。
B ホリーバジル(アメリカ産メボウキ):1997年、インドで行われた研究では糖尿
病患者17人に1日バジルの葉1gを30日間与えたところ、空腹時のグルコース濃度が
20.8%、総コレステロール値が11.3%、トリグリセリド値も16.4%低下した。
C Gurmar(アフリカ産ギムネマ樹):インスリン分泌を刺激しコレステロール値や
トリグリセリド値を低下させることがこれまでの研究で明らかにされている。1990
年、インドで行われた研究では、糖尿病の薬物治療を行っている患者22人にエキスを
1日400mg、18〜20ヶ月与えたところ、全員が薬物治療の量や回数が減少した。また、
5人は完全に薬物投与が必要なくなった。
D 亜麻種:1993年、トロント大学研究者グループが行った研究では、一般の被験者5
人にグルコースを純粋の水に溶かした溶液、あるいは亜麻種エキスの溶液に溶かした
ものを与えたところ、亜麻種溶液ではグルコース代謝が27%促進した。また、精白の
パンあるいは25%の亜麻種を含むパンを与えたところ、亜麻種パンのグループでもグ
ルコース代謝が28%向上したという。
E Fenugreek(コロハ種子):この植物の種の50%は食物繊維。1990年、インドで行
われた研究では患者10人に食事と共に脱脂肪したコロハ種子粉末100g、あるいは通常
の食事だけを与えたところ、10日後コロハ粉末グループで空腹時のグルコース濃度が
30%減少した。尿からの糖排出も54%低下したという。コロハ種子には、プロテイ
ン、サポニン、クマリン、フィチン酸、トリゴネリンなどが含まれ、どれも血糖を下
げることが指摘されている。1997年デンマークで行われた研究では、患者20人にコロ
ハ種子5gを1ヶ月間与えた。重度と軽度の糖尿病患者が半数ずつ。この結果、軽度グ
ループで空腹時と食後のグルコース濃度が低下している。
F Nopal(ウチワサボテン):1990年メキシコで行われた研究では、患者8人に500g
を空腹時に与えた。与えられたサボテンは、料理されたものや生のものとさまざま。
180分後、すべての状態で空腹時のグルコース濃度が22〜25%低下した。このサボテ
ンにはペクチンが豊富。