米国で肥満と並び克服しなければいけない疾患として挙がっているのが心臓疾患だ。
現在、総人口の約25%が、心疾患を患っているといわれる。コレステロールを下げる
鍵は食事にあり、砂糖や精製した炭水化物類、飽和脂肪酸を含む肉の脂は避ける――が
鉄則だ。とはいえ、食事管理でコレステロールの低下を図るのは面倒というのが本音の
ところ。手軽にできるサプリメントに手が伸びがちだ。米国で、注目されているサプリ
メント成分を紹介する。
アメリカの1億人以上が高コレステロール値
米国疾病対策予防センター(CDC)によると、アメリカの心臓病患者は現在、約6100万人。
総人口の約25%が、血液循環の要になる心臓にダメージを抱えていることになる。心臓
発作や脳卒中で年間に死亡する人は93万人以上。心臓病は全死因の40%で、死因の第1位
を占めている。
これまで心臓病で突然死亡するケースは大半が65歳以上だったが、最近、15歳から34歳
と若年層で増えているといわれる。
心臓の血管を細くしたり、詰まらせたりして、心臓病をを引き起こす原因の一つが、
悪玉コレステロールといわれているLDL-コレステロールの増加だ。悪玉コレステロール
を下げることで、心臓病を予防できることは科学的に立証されている。
米国心臓学協会の意識調査によると、回答者の91%が「正常なコレステロール値は健康
のために重要」と認識している。ところが、半数以上は自分のコレステロール値を知ら
ない、というお粗末な現状がある。
同協会の推定では、現在、正常なコレステロール値を超えているアメリカ人は、1億人を
超えるといわれている。
コレステロール値を下げると注目のサプリメント成分
こうした背景のもとに、コレステロール値を下げるサプリメントの需要が高まってきて
いる。注目されている成分、問題点などを幾つか取り上げる。
○Red rice yeast (紅麹)
アメリカのサプリメント市場に登場したのはここ数年前。新顔とはいえ、コレステ
ロール値を下げる医薬品とほぼ同じ効き目があることから注目度は大きい。悪玉コレ
ステロールを低下させるだけでなく、中性脂肪(トリグリセライド)も減らし、善玉
コレステロールといわれているHDLコレステロールを上昇させることが科学的に立証
されている。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校のデビット・フィーバー博士らが行った研究に
よると、対象83人を2グループに分け8週間にわたり、紅麹と偽薬をそれぞれ投与した
ところ、紅麹グループは悪玉コレステロール値が平均22%下がったのに対し、偽薬
グループは1%しか下がらなかったという。ボストンのタフツ大学医学部の研究報告
でも、紅麹がコレステロール値を下げることが確認されている。
研究員らは、紅麹が効くのは、肝臓でコレステロールが作られるのを抑える医薬品と
同じメカニズムだと報告。成分は医薬品と非常に近いとみている。
それならサプリメント扱いは要注意――と、連邦食品・医薬品局(FDA)が紅麹サプリ
メントのアメリカ国内販売禁止に乗り出した。全米栄養食品協会の抵抗で今のところ
それは実施されていないが、デンバーで起きた紅麹をめぐる裁判では、判事は、
Lovastainを成分に含んだ紅麹サプリメントは、栄養補助食品ではなく医薬品扱いと
いう判決を下している。
◎植物ステロール
穀物、野菜、果物、木の実などに含まれている成分。コレステロールと類似した
構造を持つ。コレステロールの吸収を抑制し、血漿コレステロール値を低下させ、
動脈硬化性疾患にともなう生活習慣病を予防する成分として注目されている。
いくつもの研究報告で、植物ステロールの効果は立証されており、悪玉コレステ
ロールを平均10%減少し、健康的な食事と組み合わせれば「平均20%減」まで効き
目は高まる。さらに、長期にわたって摂取すれば、動脈硬化性疾患のリスクを20%
軽減するという。
全米コレステロール教育プログラムは、悪玉コレステロールを下げるため1日2グラム
の摂取を薦めている。「心臓病のリスクを減らす」という商品表示まで正式に認めら
れているFDAお墨付きの成分だ。
ここ1、2年、コレステロールや中性脂肪を減らすサプリメントとして、植物ステ
ロールサプリメントが相次いで売り出されている。また、マーガリンやドレッシング
に加えた機能性食品や、チョコレート味やキャラメル味のソフトキャンディーなどの
菓子も人気を呼んでいる。
◎Polymethoxylated flavones (PMFs)
オレンジやタンジェリンの皮に含まれる成分。悪玉コレステロールを下げる作用が
ある。農業・食品化学誌2004年5月号に掲載された米国農務省とカナダの
KGK Synergize社の共同研究によると、エサでコレステロール値を高くしたハムスター
に、PMFsを与えたところ、悪玉コレステロールが32%から40%減少、善玉コレステ
ロールの値は変わらなかったという。
こういった研究報告から、医薬品にみられる肝臓疾患や筋肉衰弱といった副作用なし
に悪玉コレステロールを下げると、脚光を浴びている。
商品の注目株は、PMFsにトコトリエノールを加えたサプリメント「シトリノール
(Sytrinol)」。トコトリエノールは、ビタミンEの一種だが、その抗酸化作用は、
従来のビタミンEの数10倍と驚異的だ。いくつかの臨床実験で、総コレステロール値
が最高で23%、悪玉コレステロールは最高で21%、中性脂肪も最高で26%、いずれも
減少していることが報告されている。
◎ニアシン
ビタミンBの一種。悪玉コレステロールと中性脂肪を下げる働きがある。内科学
学会誌2000年号に掲載された研究報告によると、研究対象にまずニアシン375mgを
与え、徐々に量を増やしていったところ、善玉コレステロールが25%上昇、一方、
中性脂肪は30%減少した。
また、コレステロールを下げる医薬品を服用している
患者にニアシンを与えた研究では、医薬品だけよりも病気の進行が68%遅くなって
いることも分かった。ニアシンには、肝臓で中性脂肪と悪玉コレステロールが
作られるのを抑制する働きがあるといわれている。