エキゾティックなパッケージに、飲めば「活力がみなぎり、疲れた心や体を癒します」と謳うハーブ、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の入った機能性飲料水が、今米国の若年層の間で静かなブームを呼んでいる。相変わらず、コカコーラ、ペプシが根強い米国飲料水市場にあって、ヘルシーを前面に打ち出した「ニューエイジ・ドリンク」の健闘ぶりは注目に値する。米国機能性飲料水の市況を報告する。
機能性飲料水市場、昨年は4億ドル市場(推定)に拡大
フルーツジュースや緑茶などに、ハーブやビタミン、ミネラルといった栄養素を添加した機能性飲料水が、今米国で人気を呼んでいる。飲料水マーケティング社によると、1996年にはわずか210万ドルだった機能性飲料水の市場が、1999年には前年比1億ドルアップの2億8600万ドルに急成長したという。
その後も、依然売れ行きは衰えず、昨年は、推定4億ドル市場に膨れ上がっている。年間約1110億ドルといわれるアメリカの飲料水市場で、いま最も注目されているカテゴリーとなった。なぜ、これほどまでに人気が高まっているのか。要因は2つ。高まるヘルシーブームとこれまでにない斬新なボトルデザイン。従来の、似たりよったりの変わり映えしない製品とは一味違い、ファンキーでエキゾティックなパッケージがうけている。健康への関心が高く、トレンディーなニューエイジ世代の消費者にとって、まさに「こんなドリンクがほしかった」というところだ。
全米でいま一番ホットなニューエイジ・ドリンクというと、まず「レッド・ブル・エネルギー・ドリンク」が挙げられる。マスコミはこれをこぞって「カルト・ライク」と表現するが、まるでカルトに心酔した信者たちのように、特に若い層がこのドリンクにはまり込んでいる。
このドリンクのキャッチフレーズは「心身の疲労に効くドリンク」。炭酸飲料だが、基礎代謝を高めるといわれるアミノ酸Taurinとglucuronolacton、さらにカフェイン、ビタミンなどが含まれている。必須アミノ酸の一種Taurinには、基礎代謝を助け、毒素を分解するほか、心臓の働きを強化する働きがある。激しく体を動かすと、体内での生産が停止、欠乏状態に陥るといわれている。
緑茶+ギンコ+カバカバで感覚をとぎすます
また、スナップル社の「エレメンツ」シリーズも評判で、丸みのあるおしゃれなボトルが人気を呼んでいる。商品は機能性フルーツドリンクとティーがあり、「レイン(雨)」「ムーン(月)」「アース(地球)」「ライトニング(稲妻)」「ファイヤー(火)」「サン(太陽)」といったユニークなネーミングも、若年層に受けている。
中身については、「レイン」は、ヒガンバナ科のサボテンの果汁に、ジンセン、アガーベ属、マメ科ゲンゲ属を加えたドリンク。「ムーン」は、緑茶+ギンコ+カバカバで、感覚をとぎすますと好評。ブラックティーをベースにSchizandra、ジンセン、マテ茶を加えた「ライトニング」は活力の元に。エネルギー強化を謳う「ファイヤー」は、ドラゴンフルーツ、ナシ、ラズベリー、ストロベリー、ライムに、ジンセン、ガラナ、ギンコ入り。オレンジドリンクにエキナセア、ベータカロチン、ローズメリー抽出液を加えたのが「サン」。「ファイヤー」と「レイン」が一番売れているという。販売ターゲットはティーンエイジャー、ヤングアダルト。
マインド、そしてスピリットまでも高揚させるハーブ配合機能性飲料
今、米国では健康管理のうえでボディからマインドへ、そしてスピリットへと意識が向けられつつある。一昨年、世界保健機構(WHO)は健康管理のうえでスピリチュアル(精神性)について取り上げ、健康という状態を維持するうえで、重要な要因として明確な位置付けを行ったが、機能性飲料の世界にもまさにこれに焦点を当てた商品が登場し、話題を呼んでいる。
ボディー、マインド、そして魂を元気にするハーブ配合ドリンク。「Rx Enhanced Herbal Elixirs」がそれだ。フレーバーは4種類。「Rxストレス・リリーフ・エリキシル」は、カフェインフリーのブラックティーとグリンティーをブレンドし、さらにジンセン、カバカバ、カモミール、バレリアン(カノコ草)を加え、ビタミン、ミネラルを補強している。「Rx メモリー・マインド・エリキシル」は、輸入物のカフェイン抜きのグリーンティーに、選び抜いたトロピカルフルーツそしてカンキツ系フルーツ、さらにギンコ、ジンセン、ビタミンA、C、Eを加えている。
「Rx ヘルス・免疫エリキシル」は、カフェイン抜きのブラックティーとグリンティーをブレンドしたものに、クローバー・ハニー、エキナセア、バラの実、カンゾウ(甘草)、ビタミンC、亜鉛グルコン酸塩入り。「Rx エネルギー・ボディー・エリキシル」は、グリーンティー+カンキツ系のトロピカルフルーツ+ジンセン+ガラナ+Schisandra+ビタミンA、C、E。常に心も身体もリフレッシュ。これらは闘う国アメリカで登場すべく登場した飲料といえるかもしれない。
20オンスの各種ダイエット素材配合ドリンク
この他にも、話題の飲料水としては、カンキツ類フレーバーのソーダに、トリン、ローヤルゼリー、イノシトール(動物の重要な成長促進因子)を加えた疲労回復に効果ありと謳う「ジョーンズ・ウープ・アス・エネルギー・ドリンク」。日本風のパッケージが好評という。また「SoBe Lean」は20オンスのボトル入りでカロリーわずか10カロリー。基礎代謝を高めるといわれるCitrimax、クロム、カルニチン配合で、ダイエットに最適と謳う。フレーバーは、ピーチ、カンキツ系、トロピカル、グリーンティー、オレンジ・キャロットの5種類。
ダイエットドリンク愛好家の間で低カロリー人工甘味料「アスパルテーム」への敬遠ムードが濃くなっていることから、SoBe社では昨年初めから、「Lean」シリーズにアスパルテームの使用を中止し、Sucralose(甘味料)に切り替えている。
一部の消費者団体から「いんちき商品」との痛烈な批判も
こうした変わり種とも、究極ともいえる数々の機能性飲料水が、今米国でうけているが、「ニューエイジ飲料水は、21世紀のいんちき商品だ」といった痛烈な批判も一部の消費者団体から挙がっている。
ハーブや栄養素を添加してはいるものの、含まれている量は、効き目があるといわれる量にはほど遠いからだ。近年、米国で国民的な盛り上がりをみせている代替医療への関心を不当に利用した商品と非難されている。今後、「商品が単なる飲料水なのか、それとも薬なのか、そこのところの境界線があやふやになっているため、明確にする必要がある」といった指摘もあり、機能性飲料の今後の行方が注目される。