せっかくビタミンやミネラルを摂るならおいしく摂りたい――。米国では、
ここ最近、これといったヒット商品もなくパッとしないサプリメント市場を
横目に、一般食品に栄養機能を高めた食品・飲料市場が拡大傾向を辿ってい
る。サプリメントと同成分を一般食品から摂れると、ベビーブーマーや若い
世代を中心に人気が高まっている。中でも稼ぎ頭の「ドリンク」、「スナッ
クバー」などの機能性食品のトレンド、市場規模などを報告する。
市場は185ドル、低価格・品揃えの充実で伸びが期待
もともと食品がもつ栄養の一次機能のほかに、がん、老化、生活習慣病の予防
や疲労回復など栄養の三次機能を高めた栄養機能食品。米国で、その歴史を
ひもとくと、ビタミンDを補強したミルクが市場にお目見えしたのは1930年代
初期、そして40年代にはすでにビタミンやミネラルを補強したパン、小麦粉、
シリアルが発売されている。
しかし、当時の注目度はほぼゼロ。脚光を浴びはじめたのは、ここ最近のこと
だ。今では米国の食生活にすっかり定着し185億ドル市場にまで成長した。
フード・マーケティング・インスティテュート(FMI)とプリベンション・マ
ガジンの調査報告書「ショッピング・フォー・ヘルス2001」によると、消
費者の多くが健康維持のため食生活を見なおす必要があると指摘する。
ヘルシーな食生活を怠っている理由として、健康・栄養食品の値段が高い、調理
済み食品のバラエティーが乏しい――などを挙げている。こういった点を
改善していけば、この市場はさらに拡大していくと予測する専門家は多い。
トレンドはマルチタイプ、「先手必勝」が成功のキーワード
スーパーの棚に並ぶ機能性食品の数々。サプリメントも手軽に全ての栄養が
補給できるマルチタイプが人気を呼んでいるように、機能性食品も「ビタミ
ンA、C、E、そしてカルシウムも入ってる」とオールマイティタイプが目立つ。
シリアルの大手ケロッグ社の「ハート・トウ・ハート」は、オート麦、オート
ファイバーのほか7種類の穀物、抗酸化効果があるといわれるブドウの種
抽出液、グリーンティー、葉酸などバラエティに富む。
とはいえ、成長が期待できる市場だけに競争は激しい。トレンドを踏まえた
上でヒットを飛ばせるか否かのキーワードは「先手必勝」。
今や機能性飲料市場を牛耳るゲータレードをはじめ、スナックバー・カテ
ゴリーのトップで、「エネルギー・バー」のコンセプトをはじめて紹介した
パワーバーなど、いずれも、これまでにない斬新な商品でマーケットに一番
乗りした勝ち組みだ。既存の商品を改良した後発組はほどんど日の目を
みないといわれている。
「コレステロール低下」食品、マーケティングに1億ドルかけるも失敗
この分野で、消費者のニーズが読み取れず先走るのは危険だ。負け組みの
例をいくつか挙げてみよう。「コレステロールと血圧を下げる」を謳い文句に
新商品の冷凍食品を発売したキャンベル・スープ社。同社は約5千万ドルを使い
販売キャンペーンを実施したものの、売れ行きは期待はずれ。1年未満で商品
がマーケットから姿を消した。
ほかにもベネコールが「コレステロールを下げ
る」というマーガリンを発売したが売れ行きはさっぱり。1億ドルを投じての
マーケティングは徒労に終わった。これらの例から、消費者は機能性食品に
病気の治療効果をさほど期待していないとの見方もできる。
成長続けるスポーツ飲料
機能性食品の中でもとくに注目株はスポーツ飲料。市場調査会社「ミンテル」
によると、2002年の小売店売り上げは、前年比8%アップの30億ドル。
2007年の売り上げは41億ドルに達すると予想する。
また、成人の60%、10代の75%が、スポーツドリンクを運動した後だけ
でなく、ジュースや水と同じ感覚で普通に飲んでいることが、同社の調べで分
かった。ちなみに、熱狂的なファンをもつエネルギー・ドリンク「レッド・ブル」
は2001年、前年の売り上げを118%も上回った。同品の成分は、ソーダー水、
砂糖、カフェイン、ビタミン各種、グルクロノラクトーン、タウリンなど。
疾病予防謳う機能性ウォーター(水)が急成長株
そして、ニューフェースは、2年ほど前から市場に参入した「機能性ウォー
ター(水)」。アメリカにおけるボトル・ウォーターの消費量はここ10年間に
トリプル成長を遂げており、70億ドルの飲料水市場の中でも急成長株。そん
なボトル・ウォーター人気と機能性食品人気を組み合わせたというわけだ。
例えば、ダイエット向けにはビタミンおよびミネラルや食欲抑制ハーブなどを
含んだ、ピース・マウンテン・ナチュラル飲料水社の「スキニー・ウォーター」。
同社は特に女性をターゲットに、心臓病の予防、偏頭痛や更年期障害の症状
緩和効果を謳った高マグネシウム入りミネラルウォーター「ピース・マウンテ
ン・ミネラルウォーター」も販売している。
また、滋養強壮にはゲータレード
社の「プロペル・フィットネス・ウォーター」。ビタミンB複合のほか、抗酸
化作用のあるビタミンC、Eを含み、オレンジ、レモン、ベリー、ブラック・
チェリーの味がほのかにする4種類のフレーバーも人気だ。
FDAやFTC、機能性ウォーターに監視の目
こういったヒット商品が生まれる一方で、禁煙効果を謳った「ニコ・ウォタ
ー」は、連邦食品医薬品局(FDA)から「承認されていないニュードラッグ」
と指摘されるやいなや市場から撤退しているほか、体は大量の酸素が必要
です――と、通常に比べ大量の酸素を含んでいると謳った商品に対する疑問の
声が上がっているなど、FDAおよび連邦取引委員会(FTC)は、機能性ウォー
ターに監視の目を光らせている。
ダイエット用途など、ターゲットを絞った機能性スナックバーが人気
昨年の小売店売り上げ16億ドルといわれるスナックバー市場(市場調査会
社インフォメーション・リソース社調べ)。うち半分近くを機能性スナックバ
ーが占めているという。2001年のACNielsenによると、1995年から2000年に
かけて機能性スナックバーの成長率は約567%。今後も数年間は2桁代の成長が
続くものと予想されている。また、ミンテルの調べによると、機能性スナック
バー購入者の20%は、スナックではなく食事として愛用しているという。この
傾向は女性に多いことも分かった。
最近の傾向としては、販売ターゲットを絞った商品が次々と発売されている。
ダイエットしたい人に売れているのがアトキンス・ニュートリショナル社の
スナックバー。高プロテイン・低炭水化物のアトキンス・ダイエットに沿った
商品ラインはダイエットバーの定番商品だ。
オーガニックバーなどが今後のトレンドに
また、話題を呼んでいるのが、スポーツ別にターゲットを絞り込んだ新商品。
NutriGolf Productsのゴルファーを対象にした「Meal Replacement for
Golfers」をはじめ、エネルギー・バー・カンパニーは「ベースボール・バ
ー」「サッカー・バー」「テニス・バー」「フィットネス・バー」を新発売。
いずれも20種類前後のビタミンやミネラルが含まれているほか、ジンセン、
ギンコ、ガラナといったハーブ、カルシウム、大豆プロテインなどがスポーツ
別の体力消耗や用途に合わせ配合されている。
ほかにもアウトドア愛好家の体
力増強を狙ったスナックバーなども人気を呼んでいるほか、女性をターゲット
にした商品や、オーガニック商品が増えているのもトレンドといえるだろう。
食生活に定着するも、困惑する消費者
このように食生活にすっかり定着したかに思える機能性食品だが、実のとこ
ろ「でも本当は何なの」と困惑している消費者も少なくない。
CMF&Zマーケ
ティング・コミュニケーションが毎年行っている食品安全世論調査によると、
「機能性食品は本来食品が持つ栄養機能のほかに、何らからの健康への利益
を兼ね備えた食品」と回答できたのは調査対象の49%。11%が「生きていく
のに欠かせない食品」と答えたほか、「健康食品の一種」「料理が簡単な食品」
「基本栄養素に含まれた食品」などの回答があった。ただ、はっきりとした
ことは分かっていないものの、「体にいい」とポジティブに受け止めている人
が大半だった。