9月5日にNational Academies’ Institute of Medicineから、アメリカ人
は脂肪や炭水化物のバランスに柔軟性を持たせた食生活を送るべきという新
ガイドラインが発表された。これによると、脂肪は多すぎても少なすぎても
健康を阻害するという。また、従来のガイドラインでは、炭水化物から摂る
カロリーを全体の50%以上、脂肪は30%以下としているが、今回のものは
炭水化物を45〜65%、脂肪は20〜35%、プロテインは変更無く10〜35%とし、
かなり幅を持たせたフレキシブルなものになっている。新ガイドラインの
概要を報告する。
米国では1989年以降、6回目の改訂
米国では1989年にRecommended Dietary Allowances(RDA、1日推薦栄養
摂取量)が、カナダでは1990年にCanadian Recommended Nutrient Intakes
が発表されてから現在に至るまで栄養摂取ガイドラインは部分的に徐々に更新
され、今回は6回目にあたる。
9月5日にNational Academies’Institute of Medicineから発表された新し
いガイドラインでは、エネルギー、炭水化物、脂肪、脂肪酸、食物繊維、コレ
ステロール、プロテイン、アミノ酸摂取事項について改訂している。
米国はこれまで、RDAを適正栄養摂取の基準としてきたが、最近では栄養摂取
量を問題にするとき、Dietary Reference Intakes(DRI)を使うケースが
増えてきた。DRIは、個人の1日栄養必要量を知らせるだけでなく、これ以上
摂取すると何らかの害になる症状を引き起こす恐れがある上限量(Uls)も
盛り込んでいる。
栄養を単独で考えるのではなく、相互作用など考慮して検討
新ガイドラインの考え方では、炭水化物や脂肪、プロテインはどれもエネル
ギーの供給源として重要な栄養素であり、ある程度はお互いがお互いの代わり
をして必要なカロリーを満たすこともある。
ガイドラインの検討を行った専門家は「栄養を一つ一つ離して考えるのではな
く、相互作用を考慮してまとめて検討するべき。例えば、脂肪を非常に少なく
する代わりに炭水化物を多く摂ると、HDLつまり善玉コレステロール値が下が
る。反対に、高脂肪の食生活は肥満を引き起こす。そうしたことから、推薦
量の範囲もこれまでより幅を持たせ、フレキシブルにした。これなら、食の
好みに合わせ選択の幅も広がり、従いやすいガイドラインだと言える」と
自信を表わす。
食生活のバランスを重視、加えて運動量の見直しも
報告では、食生活のバランスを重視し、それに加えて運動量も見直している。
さらに、個人の身長、体重、性別、運動量によって適正な摂取カロリーも導き
出している。例えば、30歳で身長が5フィート5インチ(約162.5センチ)、
体重111〜150ポンド(約50〜67.5キロ)の女性で、1日殆ど座ることが多い
場合、1日1,800〜2,000カロリー摂取を勧める。
同じ年齢、体型でもほどほどに動いているなら2,200〜2,500。そして殆ど1日
中動いている場合なら、必要カロリーは2,500〜2,800に増える。
また、今回は推薦運動量を時間にしてこれまでの30分から1時間にアップして
いる。例えば、座りっぱなしの仕事をしている場合、4マイル(約6.4キロ)を
1時間で歩き、これを毎日行う、あるいはジョギングなら20〜30分を週に4〜7日
行うことで目標の運動量に達するという。
炭水化物は従来の50%以上から45〜65%に
慢性疾患に罹る危険性を最小限にしながら1日に必要なエネルギーや栄養素を
得るために、成人は炭水化物から摂取するカロリー量を全体の45〜65%に、
脂肪は20〜35%、プロテインは10〜35%にしている。これまでは、炭水化物
は50%以上、脂肪の場合は30%以下だった。プロテインは変化なし。
また、脂肪は子どもも成人と似た割合で、1歳から3歳は30〜40%、4歳から
18歳は25〜35%。だが、乳幼児の脂肪の割合は成人より少々高く25〜40%に
なっている。
炭水化物は幼児では5〜20%、それ以上になると10〜30%に設定してある。
栄養素はオメガ6脂肪酸(リノール酸)、オメガ3脂肪酸(アルファリノレン
酸)、そしてアミノ酸も脳の発達や体の代謝過程に欠かすことができないも
の。つまり、様々な食品を種類多く摂ることが、栄養素全てを適正に摂取
する近道ということである。
砂糖は総カロリーの25%を超えないよう忠告
子どもも成人もこれまでは、炭水化物を1日最低130g摂取すべきだといわれて
きた。新ガイドラインでは、脳が正常に機能するに必要なグルコースを作れ
る最低限の炭水化物を摂取するよう薦めている。また、砂糖添加は総カロリー
の25%を超えないよう忠告している。
脂肪はエネルギーの主要供給源で、必須ビタミンの吸収に欠かせないものでも
ある。しかし、飽和脂肪を増やすとLDL(悪玉)コレステロール値を上げる結
果となり、心臓病の危険性も増大してくる。
飽和脂肪は大抵、肉や乳製品に含まれており、アメリカ人の食生活からこの
飽和脂肪を完全に消し去るのは不可能で、専門家はなるべく低く抑えること
が望ましいと強調する。
トランス脂肪の扱いは難題
一方、脂肪に含まれる一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸は血中のコレステ
ロール値を下げ、ひいては心臓病の危性も下げることが数々の研究で報告され
てきた。多価脂肪酸では、アルファリノレン酸(オメガ3脂肪酸)とリノール
酸(オメガ6脂肪酸)が有名。
新ガイドラインでは、リノール酸(サフラワーオイル、コーンオイルなど)を
男性で1日17g、女性12gの摂取を勧める。また、アルファリノレン酸は(大豆
オイル、亜麻タネオイルなど)男性が1.6g、女性1.1gを設定している。
現在問題になっているのが、マーガリンやショートニングに使われる部分水素
化オイル。これには、トランス脂肪として知られる飽和脂肪が含まれているが、
「悪玉」コレステロール値を上げ心臓病を招く恐れがあることが最近の研究で
明らかになってきている。
FDAは食品のラベル成分表示にトランス脂肪を記載する懸案を固めているが、
現在は殆どの加工食品にトランス脂肪が含まれているため、トランス脂肪の扱
いは難題中の難題となっている。
食物繊維の摂取量を重視
新ガイドラインでは、食物繊維の推薦量も設定した。食物繊維が少ないと心臓
病の危険性を増すという研究報告が多く提出されていることから、食生活に
食物繊維を取り入れることを強く薦めている。
ガイドラインに設定した成人の総食物繊維量は50歳未満の男性で1日38g、女性
は25g。一方50歳以上になると男女それぞれ30g、21gとなっている。食物繊維
の場合、高齢者の推薦量が少なくなるのは、食べる量が減るためという。
食品の成分ラベルにしばしば“総食物繊維”という言葉を見つけるが、“ダイ
エタリー・ファイバー”と“ファンクショナル・ファイバー”のコンビ
ネーションだと定義されている。
“ダイエタリー・ファイバー”は炭水化物の非消化性成分が含まれている。こ
れを含む主な食品には、コーンフレーク・ブラン、スイートポテト、オニオン
などがある。一方の“ファンクショナル・ファイバー”は“ダイエタリー・
ファイバー”と同様の性質を持ち、柑橘類の皮から抽出したペクチンなどに
含まれる。