米国でここ数年、40、50代の若年性アルツハイマー病患者が増えていることを報告をしたが、こうした傾向は最近日本でも見られるといわれ、今後の高齢者人口の増加も考え合わせると深刻さが一層増すところだ。
ビタミンC、アルツハイマー病などの脳疾患治療に貢献
米国では、アルツハイマー対策は重要課題であるとして、NIA(米国国立衛生研究所)のNCCAM(米国代替医療センター)などが対応素材としてギンコ
(イチョウ葉)やEやCといった抗酸化ビタミンを取り上げ、その有効性について熱心に研究に取り組んでいる。
アルツハイマー症の原因としては、脳血管障害説、喫煙説、さらに電磁波説なども挙げられているが、現在最も有力視されているのが「βアミロイド蛋白説」。βアミロイド蛋白というのは幾つかのタンパク質のカスのかたまりが沈着したもので、神経細胞を殺す毒性があるといわれている。
現在、オレゴン州立大学では、マウスを使い、脳内のβアミロイド蛋白沈着と「酸化」との関連を調べており、ギンコ(イチョウ葉)やビタミンEのアルツハイマー症への予防効果を検証している。
また、βアミロイド蛋白ばかりでなくフリーラジカル(活性酸素)のもたらすダメージによるところも大きいとされ、EやCといった抗酸化ビタミンの脳機能の改善効果についての研究が進められている。
これまでに、米農務省支援によるラット実験で、いちご、ほうれん草、ビタミンEを配合した食事を毎日8ヶ月間与えたところ、老化による中枢神経組織の衰退や認識行動障害が予防でき、さらに神経変性障害の抑制に効果がみられたという研究報告もある。について研究者たちは、「いちごやほうれん草は抗酸化剤が豊富に含まれている」としている。
こうした抗酸化ビタミンのアルツハイマー治療への貢献が期待されているが、最近のものでは、ビタミンCがアルツハイマー病の薬物治療の際の手助けとなることが、Journal of Medicinal Chemistry'02/1月号に掲載されている。脳には、外界の異質侵入を防ぐバリアが張り巡らされており、時として薬物治療の妨げとなる。しかし、ビタミンCとの結合により、そのバリアを通りやすくなるという。
イタリアの研究グループは、ビタミンCの脳への運搬に役割を果たすと考えられる受容体、SVCT2トランスポーターを基に動物並びに人の組織サンプルを使った研究で、ビタミンCに結合させた治療薬をマウスに注入したところ、ビタミンC結合薬はアルツハイマー症の発作を遅くしたという。
妊娠前並びに妊娠中のビタミンC摂取で早産の危険性低下
ビタミンCに関するニュースがもう一つ届いている。これまで、妊娠適齢期や妊娠中の女性の1日400マイクログラムの摂取で、胎児の神経管損傷を防止するとされ、葉酸摂取の必要性が叫ばれてきたが、同時にビタミンCの摂取も女性たちは心がけたほうがよさそうだ。
妊娠前並びに妊娠期間中にビタミンCを十分摂取しないと、細胞膜が破裂し早産の危険性が高くなると、Society for Maternal Fetal Medicine会合で発表された。ノースカロライナ大学の研究グループが、妊婦2,247人にビタミン摂取などについて調査を行ったところ、妊娠前にビタミンCを1日21mg未満しか摂取していないと、細胞膜の早期破裂を起こす危険性が2倍になった。
また、妊娠中に1日65mg未満しか摂取しないと、細胞膜破裂の危険性は70%増大することが判ったという。研究者は、ビタミンCは胎児の細胞膜のコラーゲン構造に大きな役割を果たしており、不足すると膜が弱くなるとし、胎盤への膜の付着力が弱くなると早産などを起こしやすくなるとみている。
ビタミンE、生理痛を緩和
ビタミンCの他にビタミンEも女性特有の症状の緩和に一役買うようだ。ビタミンEが生理痛の症状を緩和するという研究報告がBritish Journal
of Obstetrics and Gynaecology誌に掲載されている。
イランの研究グループは、生理痛がある16歳から18歳の女子高校生100人を調べた。被験者の半数は、生理が始まる2日前と3日後にビタミンEを1日5錠飲んだ。後の半数はプラセボを5錠与えられた。この結果、2ヵ月後の生理痛のスコアが、ビタミンEグループは3.5と低かったという。
一方、プラセボグループでは4.3であったという。女性の月経困難症の緩和については、この他にも魚油に含まれるオメガ3脂肪酸が、子宮筋層の痛みを軽減するといった報告もある。
また1日1,000mg〜1,200mgのマグネシウムを摂取すると、疲労感、焦燥感、浮腫みといった月経前症候群(PMS)の症状が大きく緩和されることが認められたということも報告されている。
日頃の食生活においては、脂肪を減らし、野菜中心の食生活を送ると、生理痛や月経前症候群の症状を緩和するという報告が多い。Physicians Committee for Responsible Medicine、Georgetown University Medical Centerの研究グループが37人の女性を対象に、低脂肪、野菜中心の食事を2ヶ月間続けたところ、被験者の3分の2は開始前と比べ生理時の痛みや月経前症候群の症状改善が見られたという報告もある。
また、同様にObstetrics & Gynecology誌'00/2月号でも、Physicians Committee for Responsible Medicineの研究グループが、22歳から48歳で生理中に腹部などの痛みを経験する女性33人に、低脂肪で野菜のみの食事を2ヶ月間与えた(被験者は、ヨーグルト、ミルクなど乳製品も含み、動物性食品を一切禁止された。また、脂肪摂取も総カロリーの10%までと限定された)ところ、ひきつりの痛みは初め4日、その後2.7日に減ったと報告している。
ビタミンBの摂取不足、パーキンソン病の危険性高める
パーキンソン病は筋肉の動きを司る脳内物質・ドーパミンを分泌する脳細胞に障害が生じ、顔や手などに震えや引き攣りを起こす疾患で、現在米国では疾患者が100万人いると推定され、さらに毎年5万人発病しているといわれている。
こうしたパーキンソン病の発症に関して、食事から摂るビタミンBの量が不十分だと、パーキンソン病の危険性が高まるという研究報告がJournal of Neurochemistry'02/1月号に掲載されている。これまでの研究で、パーキンソン病患者は血中のホモシステイン濃度が高いことが分かっているが、ボルティモアの研究グループが、マウスにビタミンB群である葉酸が含まれる餌か、葉酸が不足している餌のどちらかを与え、さらに、パーキンソン病を誘発するMPTPを与えて観察したところ、葉酸不足のグループではパーキンソン病の重い症状を併発し、また血中のホモシステイン濃度も葉酸が含まれる餌グループの8倍にもなった。これにより葉酸不足の食事を続けると、脳のドーパミン生成細胞がダメージを受けやすくなることが判ったという。
葉酸とビタミンB12の併用で心臓病の予防効果がさらにアップ
葉酸は胎児の脊椎披裂や神経管障害の予防に役立つことで知られるが、この他にも心臓病の要因の一つとされている血中のホモシステイン濃度を下げ、心臓病の危険性を低下させるといわれる。さらに葉酸にビタミンB12を加えることでその効果が高まることも報告されている。
また葉酸およびビタミンB12を設定されている1日推薦標準量の3倍食べると、心臓病やがんの危険因子を減らすことができるという報告もある。
オーストラリアの研究機関が発表したもので、南オーストラリア地域の1,000人を対象にDNAのダメージとビタミンとの関連を調べたところ、葉酸やB12を多く摂ると、DNAの遺伝子材料の摩滅を遅らせることがわかったといわれる。被験者には、食事に葉酸とビタミンB12を補給したものを12週間与えている。
お茶やチョコレートのフラボノイド、心臓病予防に有効
チョコレートに含まれるフラボノイドが凝血を抑え、心臓発作や卒中を予防するという報告はこれもまでに幾つかされている。カリフォルニア大学デービス校の研究グループによると、チョコレートを食べた後、フラボノイドにより抗酸化力が増し、チョコレート25gを食べた被験者とパンを食べた被験者の血液サンプルを集めて比較してみると、チョコレートグループでは血小板の活動が低いことがわかったと報告している。ちなみに、苦味の濃いチョコレートバー1本にはリンゴ6個分、お茶4.5杯分、白ワイン28杯分、赤ワイン2杯分に相当するフラボノイドが含まれているという。
また、お茶とチョコレートは心臓病予防に有効性を示すという研究報告が、Current Opinion in Lipidology誌に掲載されている。ペンシルベニア州立大学などの研究グループが、これまでの研究66件を分析し、お茶並びに/チョコレートと心血管系疾患予防との関連性を調べたところ、フラボノイド150mgを摂取すると即時(急性)の有効性が期待でき、500mgだと持続性(慢性)の有効性が期待できることが判ったという。
この他にも、'98年3月に行われたAmerican Chemical Society会合でもカリフォルニア大学デービス校の研究者らが、チョコレートに含まれているカカオのフラボノイドが抗酸化剤の役目を果たし、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を阻止することから、心疾患の予防に役立つと報告されている。
Butterbur(フキの一種)、花粉症を緩和
Butterbur(フキの一種)は花粉症治療に有効性があるという研究報告が、British Medical Journa'02/l1月号に掲載されている。スイスの研究グループは、患者125人にButterburか治療薬のcetinzineのどちらかを2週間与えたところ、どちらのグループでも同じ程度の症状緩和が見られたが、治療薬グループについては副作用の眠気報告が多かったという。