アメリカ最大の国立医学研究機関、国立衛生研究所(NIH)と、その傘下にあるNational Center for Complementary and Alternative Medicine(NCCAM)が昨年秋、NCCAMの9研究センターへの資金援助を発表した。代替医療の効果を科学的に裏付けるため、NCCAM予算の25%をつぎ込むという大型出資だ。加えて、Office of Dietary Supplements(ODS)と共同で昨年10月、カリフォルニア州ロサンゼルスとイリノイ州シカゴの2カ所に、初の栄養補助食品研究センターも開設した。目的はハーブおよび漢方薬を中心に、安全性、効き目、効き方の科学的な立証。新設および9センターの活動内容を報告する。
人気ばかりが先行する栄養補助食品、米国で科学的評価の遅れを指摘する声
新研究センターに選ばれたのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とイリノイ大学シカゴ学校(UIC)。2センターに合わせて150万ドルが毎年、五年間にわたり研究費として支給される。
食品・医薬品局(FDA)が最近行った世論調査によると、アメリカでの栄養補助食品利用者は数100万人にのぼり、年々、増加の傾向にある。しかし、コマーシャルや口コミで「人気」ばかりがひとり歩きし、科学的根拠で裏打ちされた情報が不足しているというのが現状。医薬品とも食品とも異なるカテゴリーに置いて、医薬品のようにしっかりした臨床実験が実施されることもなく、はるかにゆるやかな基準で効果効能の表示を認めた結果、科学的な評価の遅れが生じた。
初の栄養補助食品研究センター設立、緑茶や大豆の有用性などテーマに
そこで問題解決にのりだした連邦議会が1999会計年度、ODSに助成金を出して、全米の主要研究所と協力して栄養補助食品の専門研究所を開くよう要請。UCLAとUICに白羽の矢が立ち、昨年10月開設にこぎつけたというわけだ。
ロサンゼルスにできた新センターの名は、UCLA Center for Dietary Supplements Research on Botanicalsで、デービッド・ヒバー博士が所長を務める。当面の研究課題は、イースト発酵した米が、心臓疾患の予防と密接な関係のある悪玉コレステロールの削減にどういう効果を示し、どういう仕組みで働くのか、また、緑茶抽出物と大豆の悪性腫瘍の成長を抑える効果および効き方について臨床研究する。ほかに、抗うつ薬の定番「セントジョーンズウォート」の効用についても研究の予定。
シカゴのUICセンターは、ノーマン・ファーンズワース博士を筆頭に、10種類のハーブについて更年期障害を含む女性の健康への効果を臨床研究する。加えて、生薬学分野の研究者養成、ウエブサイトを使った消費者や医療関係者への生薬に関する情報提供を積極的に行っていくという。