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【 栄養補助食品についての米国マスコミ報道〜入り乱れる情報 】

アメリカの生活保護の一部に「フードクーポン」というのがある。スーパーなどで買い物できる金券のことだ。貧しい人々への政府からの援助ということで、金券で買える商品は限定されている。食べ物やトイレットペーパーといったあくまでも生活必需品だけ。それが最近、「ビタミンやミネラルなどの栄養補助食品も必需品枠に入れるべきではないか」という議論が持ちあがっている。そこまで定着したかにみえる栄養補助食品だが、実際の効果となると、賛否両論入り乱れ、消費者は混乱するばかり。今、米国で熱い視線が注がれているサプリメントと、栄養補助食品についてのマスコミの取り上げ方を報告する。

大豆、グルコサミンに人気が集中

雑誌や新聞で最近、頻繁に目にするのが「大豆」の中に含まれている「Isoflavones」。「一番ホットなダイエタリーサプリメント」と呼ばれていることからも、その人気ぶりがうかがえる。がんや心臓病の予防に加え、更年期の骨粗しょう症予防にも効果があることから、米国では豆腐、納豆、そして大豆プロテイン入りドリンクといった大豆商品の売り上げがうなぎのぼり。

14日には米国ハート協会が正式に、「コレステロール値を下げるなど体によい大豆食品を毎日食べましょう」と発表し、メディアが一斉に取り上げた。食品・医薬品局(FDA)も最近、大豆を少なくとも6.25グラム含んだ低脂肪食品への「ヘルス効果表示」を許可。こういった公的機関のお墨付きで大豆熱は高まるばかりだ。

また骨関節炎に悩む人が多いことから、骨や関節にいいといわれる「グルコサミン」「コンドロイチン」「Sadenosylmethionine(SAM-e)」といった栄養補助食品への関心も高い。最近、TVコマーシャルで頻繁にお目にかかるサプリメント商品である。ただし、西洋医学および関節炎協会(www.arthritis.org)は今のところ、いずれの効果も認めていない。ほかにも、コレステロール値を下げると「ニコチン酸」、コレステロールや血圧にいいと「ガーリック」などが、ホットな商品といえるだろう。

効能についての情報が入り乱れるという状況も

こういったサプリメントに関するメディアの取り上げ方だが、研究報告に左右されるのはいうまでもない。やっかいなのは、大学や研究所から発表されるこの研究報告が猫の目のようにクルクルかわるため、消費者の間に大きな困惑が生じていることだ。はっきりいって「効く」「効かない」という報告が入り乱れているというのが現状だ。そこで、ワシントンポスト紙が人気サプリメント情報を整理した興味深い記事がある。簡単に紹介して
みよう。

骨関節症の救世主と注目を浴びている「グルコサミン」。同紙は、貝からの抽出ということで、「貝アレルギーの人は要注意」と指摘。さらに、ダイエタリーサプリメントニュースレター(www.thedietarysupplement.com)からの情報として、体内のインシュリン分泌を低下させ、さらにその働きを邪魔することから、糖尿病患者は摂取する前に必ず医者に相談するよう警告している。

また、サプリメントとしてはまだ目新しく、最近マスメディアで大々的な広告を展開しているSAM-eは、MAO反応抑制剤などの抗鬱薬と併用すると副作用の危険があるという。また、健康な骨作りの定番であるカルシウムも1日に2500ミリグラムを超える過剰摂取は、腎臓結石や亜鉛の吸収を妨げる恐れがあるという。

ガーリック、ビタミンE、大豆の効能で割れる議論

食生活に関する健康講習会で頻繁に質問されるのが「ガーリック」。コレステロールや血圧によいと人気のサプリメントだ。しかし、ガーリックの効果については実は議論が割れている真最中だ。最近発表のいくつかの研究報告は、「血中のコレステロール値を下げる働きはない」と効果を否定。一方、別のいつくかの研究では「収縮性のある健康な血管を保ち、血栓を防ぐ効果がある」と絶賛。このように賛否両論が飛び交い、消費者が戸惑っているというのが現状だ。さらに、抗凝血剤と併用すると、薬の作用に影響を及ぼすうえ、血栓を作る可能性があると警告している。

また、最近になって、規模の大きな研究報告で心臓発作、脳卒中への効果が否定された「ビタミンE」も、抗凝血剤、ガンの科学療法、糖尿病の薬などの働きを妨げる危険があるという。豆腐ブームが高まる中、主成分であるIsoflavonesも、乳がん患者の場合、医者に相談してから摂取するよう呼びかけている。

先日、高齢者のための「記憶力強化セミナー」を覗いてみたところ、質疑応答セクションで真っ先に出た質問が「ギンコ」の効き目。講師は「私は栄養補助食品の専門家ではないのできちんとした答えはできないが、知る限りでは今のところ賛否両論。実際に効くというよりも、効くと思いこむ精神的な効果の方が高いのでは」と話していた。

そこでワシントンポストの記事だが、「ギンコに脳の働きを活性化させる効果があるかどうかはまだ証明されておらず、現在、研究の段階」とある。さらに「アスピリンも含め抗凝血剤との併用は副作用の危険あり」と指摘する。

エストロゲンのような働きが指摘されたことから、更年期の諸症状緩和に効果ありと、スポットライトを浴びているのがイソフラボン(Isoflavones)。甲状腺治療薬の効き目を妨げるほか、乳がん患者の摂取は危険を伴うといわれている。

栄養補助食品業界、高齢者マーケットをターゲットに

先に紹介したワシントンポストの記事にもあるように、マスメディアがこぞって指摘するのが「ハーブを含めた栄養補助食品と医薬品の併用で生じる危険」。医療団体が、栄養補助食品、特にハーブを摂っている人は医者にかかる際に「何を飲んでいるか」という情報をきちんと提供するよう呼びかける消費者キャンペーンを開くなど、医薬品との併用問題がクローズアップされている。加えて「自然だからいくら飲んでも安全とは限らな
い。摂りすぎはかえって毒」といった報道も影響してか、これまで毎年、売り上げが2ケタの伸び率を示していたハーブ市場もここのところ横ばい状態が続いているという。

そこで売り上げを伸ばしたい栄養補助食品業界が目をつけたのが「高齢者市場」。ヘルシー志向の強いベビーブーマーがこぞってシニア人口の仲間入りしていることから、ボケ防止に「ギンコ」、体力向上に「ジンセン」、骨の健康に「グルコサミン」と、シニアが飛びつきそうな商品展開に乗り出した。

栄養補助食品専門のリサーチ機関「ハートマングループ」(ワシントン本社)の調べによると、1999年に、50歳以上の総人口の69%がビタミン、ミネラル、ハーブといった栄養補助食品を利用、年間の売り上げで見ると72億ドル市場といわれている。人気ナンバーワンは複合ビタミンで、次ぎにビタミンE、カルシウム、ビタミンC,ガーリック、ギンコ、グルコサミン、亜鉛、複合ビタミンB、ポタシウム、マグネシウム、ビタミンB12、セレニウム、葉酸、ベターカロチンと続く。広い意味での健康維持、栄養補助、老化防止のほか、血圧やコレステロール値を下げる、骨関節炎の症状を緩和する―などが摂取の主な理由としてあげられている。

「2003年までに、ネット上の食品販売の3分の1が栄養補助食品」との予測

そこでメディアの反応だが、ロサンゼルスタイムズ紙をはじめいずれも「高齢者向けに宣伝されている栄養補助食品だが、あくまでもサプリメント(補助)であって、リプレースメント(代用)ではない」という見解が強い。ビタミンにしろミネラルにしろ、理想的なのは食品から摂ること。専門家の意見として「いろいろな種類のフルーツや野菜を豊富に食べ、バランスのとれた食生活が何よりも肝心である」と強調している。

ただし、年をとって食生活がおろそかになりどうしても栄養のバランスが偏る場合や高齢化に伴い欠乏しやすくなる物質の充足に、栄養補助食品を利用するのは決して悪いことではないというのが、今のところの論調だ。しかし、健康に必要なビタミン、ミネラルなどを食品から得るのとサプリメントで摂るのでは、同じような効果があるのか―そんな疑問を投げかけるメディアも少なく
ない。

また、10月16日付ロサンゼルスタイムズ紙は、インターネット上でのサプリメント販売に警告を発している。マーケティング会社「フォレスター・リサーチ社」は、インターネット上で買う食品の売上高は2003年までに108億ドルに達すると予想。うち、3分の1は栄養補助食品を含めた健康食品だという。ロサンゼルス・タイムズ紙は、「予想が当たるかはずれるかは別にしても、オンラインによる栄養補助食品ショッピングは着実に定着しつつある」と強調する。そこで、指摘されるのが「政府のずさんな管理」という問題点だ。

インターネット上の健康食品販売における規正は基本的に食品・医薬品局(FDA)の管轄だが、栄養補助食品を売っているサイトを全部チェックするなどとても無理な話。そこで、何か問題が生じるまでははっきりいって「野放し状態」だという。死亡者まで出し1997年に発売禁止となり実在するマーケットから姿を消したダイエット薬「フェンフェン」すら、バーチャルマーケットではいまだに販売されているという現状に、メディアは、インターネットでの買い物は十分注意するよう呼びかけている。

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