1997年前後に大ブレークしたアメリカのダイエタリーサプリメント産業はここ
にきて、一時の勢いを失いつつある。伸び率が2桁台だった当時に比べ、現在は
1桁台で推移している。市場の成長鈍化の要因として米国の景気の失速や代替医
療におけるサプリメント利用の際、医薬品との相互作用がマスコミで指摘された
ことなどが挙げられるが、それでも、業界関係者は潜在需要の高さを挙げ、
この先まだまだ伸び続けるものと強気を示す。ここ数年、世界的に大きな流通
販路として台頭してきたインターネットでのサプリメントビジネスの最新
動向を報告する。
ネットでのサプリメント販売、2002年に5億ドルの売上が予測
アメリカ人のビタミン好きは以前からのものだが、現在では10人に6人が普段の
生活の中で殆ど毎日何らかのサプリメントを飲んでいるといわれる。加えて、ア
メリカではベビーブーマーが中年を過ぎ、高齢者人口が膨れ上がっていく状況
もあり、サプリメント業界はさらに成長が見込まれている。
米国国勢調査によると、1995年以来、人口動態は25歳から39歳台が6%減少、代
わって40歳から65歳台が17%増加している。高齢化の進む米国で、健康で長生きで
きる生活を自分の力で手にいれようとする傾向はますます高まることが予測される。
米国健康補助食品業界の市場動向についてみると、2000年に、サプリメントの売上
の全体の34%を占めたのが大量販売店(WallMartなど)で57億2千万ドルを計上。
次いで、自然製品/健康食品ストアが全体の33.3%を占め、56億ドル。
マルチ商法は31億9千万ドルの売上げで全体の19%を占めた。
また直販会社(Watkinsなど)が全体の18%。その他、カタログ・インターネット
販売が5%などとなっている。インターネットでの販売は1998年の売上が4千万ドル
を示し、1997年の1千200万ドルから急成長を見せたが、それでもまだ
全体の0.3%を占めるのみ。しかし、今後2002年には、売上5億ドルを計上するま
でになるだろうと予測されている。
ネット上に各社参入で、競争が熾烈化
サプリメント業界でインターネット販売を行う業者は多いが、その経営形態は様々。
Healthshop.com、MotherNature.com、GreenTree.comなどのようにベンチャー
企業が支援するものも最近急成長している。また、Soma.comやPlanetRX.com、
Drugstore.comなどはドラッグストアがウェブサイトを持って、オンライン販売
を行うもの。
VitaminshoppeやHealthWatchers、Amrion Catalogs、SelfCareの
ように、カタログ会社も以前からオンラインでサプリメントを販売するサイトもある。
さらに、GNCやWild Oats、Whole Foodsなどの健康食品店も既に自社のサイトを持ち、
オンライン販売を行うもの。これにマルチ販売、直販会社などが入り込み、競争
はますます熾烈化、混戦模様を呈している。
連邦取引委員会(FTC)や米食品医薬品局(FDA)、1999年から監視体制を強化
こうした、インターネット上での販売では、消費者の目をいかに
引くかがポイントとなってくるが、競争激化のあまり政府の規制を無視したり、安
全性や有効性で納得いく実証に欠ける製品の不正・誇大広告による販売が一方で
目立ってきた。
こうした事態を、連邦取引委員会(FTC)は重く見て、米食品医薬品局(FDA)、
カナダ厚生省などの政府機関と協力し、1999年からOperation Cure.Allキャン
ペーンを展開している。このキャンペーンは、ホームページ上にがんやHIV/エイ
ズ疾患などを治すといった誇大宣伝を記載、消費者の購買意欲をそそろうとする
販売会社の思惑を阻止することにある。
また、薬剤治療を受けているHIV/エイズ患者が安易にサプリメントを利用する
と、サプリメントと相互作用を起こす薬剤もあるため、薬剤の有効性が損なわれ
たり、副作用で最悪の場合死に至る恐れがあるが、こうしたキャンペーンを展開す
ることで、消費者の注意を喚起することも目的としている。
がんやHIV/エイズなどを治療をアピールする企業をマーク
こうしたキャンペーンにより、政府機関はインターネット上での販売の監視をさらに
厳しくしている。最近では、FTCはインターネット上で健康関連商材を不正に販売
していた企業6件に対して訴訟を起こしている。
ターゲットとなった企業は、健康機器、ハーブ・サプリメント製品などを、がん
やHIV/エイズ、関節炎、肝炎、アルツハイマー、糖尿病など多くの疾患を治療す
ると明記し、販売していた。
例えば、「がんやエイズ、アルツハイマーのような重大な疾患の原因となる寄生
虫を殺す微弱な電気を流す機器」や「エイズ/HIV感染患者にセントジョンズ・
ワートを安全な治療薬として薦める」など。
6社のうち5社とは既に和解が成立し、製品の回収やインターネット上から宣伝文
句を削除するなどの処置が取られている。
FDAはその他、Colloidal Silver(コロイド状銀)を使った製品を、重大な疾患
の治療、予防のためと称して販売している48サイトに対して、警告状を送っ
ている。
”ナチュラルは、安全という意味ではない”と消費者にも指導
キャンペーン開始以来、FDAとFTCは、虚偽の宣伝文句や誇大広告で販売されてい
た製品12件を差し押さえ、製品回収が11件、逮捕が43件といった成果をあげている。
この他、FDAは80件についても現在調査中である。
FTCなどは、監視を強化すると共に消費者に対しても指導を続けている。消費者
にアドバイスする内容は――
1.“自然製品”“天然”などという言葉にまどわされない。ナチュラルは、安全という意味ではない。自然素材を使ったサプリメントには、セントジョンズ・ワートのように、薬との相互作用を起こす場合もある。
2.“奇跡的に治療”“秘密の成分”“古代療法”といった謳い文句に注意。
3.“様々な範囲の疾患に効果を発揮”という文句も注意。
4.会社名、住所、電話番号などの情報を明記していないサイトは要注意
――などとなっている。