「non-GMO」「GE-free」「contains no GMOs(遺伝子組み換えは含まない)」---。
そんな文字の並ぶ食品パッケージがここ数年、増えている。消費者の間で遺伝子組み
換え食品への不安が高まっているにもかかわらず、米国政府は、遺伝子組み換え食品
表示をいっこうに義務付けしようとしない。しかし、消費者サイドはやはり自身の
健康のためにと、商品選択には敏感だ。そこで、遺伝子組み換え食品か否かを知り
たいという消費者のニーズに応え、「non-GMO」表示を打ち出し、購買意欲を誘う商品
も出回っている。だが、政府機関による正式な表示規制があるわけではない。自称
「non-GMO」がまかり通る現状に、オーガニックと同じような統一基準を求める声も
一方で挙がっている。米国における遺伝子組み換え(GM)食品の最新状況を報告する。
全米消費者の20%が購入の際に遺伝子組み換えか否かに注意払う
最近のナチュラルマーケティング・インスティテュートの調査によると、全米消費者
の20%が、食料品店を選ぶうえでnon-GMO食品を扱っていることは重要なポイントと
回答している。
また、ワシントンDCに拠点を置く別の団体の調査では、対象になった消費者の31%が、
non-GMO表示のある食品はなにも表示のない食品よりも良い商品だと思う、と答えている。
そのほか幾つかの消費者意識調査でも、「食品の材料に遺伝子組み換え作物が使われて
いるかどうかを知ったうえで、買うかどうかを決めたい」と考える消費者が大半を占め
ていることが分かった。
そんな消費者のニーズに応えて登場したのがnon-GMO表示。アメリカで食品パッケージに
こうした表示が記載され始めたのは1999年頃から。今では対象はパスタからベビーフード
までと幅広く、食品表示のホットトレンドとして最も注目されている。
ちなみに、大手ナチュラルフード店のトレーダー・ジョーズ、ホールフーズマーケット、ワイルド・
オーツマーケットは、「店内に遺伝子組み換え食品は一切置いておりません」と店丸
ごとnon-GMO宣言を出したほどだ。
加工食品の約80%、遺伝子組み換え材料がベースに
食品パッケージにnon-GMO表示が増えている背景には、政府機関による表示も義務付けら
れず、ジワジワと浸透している遺伝子組み換え食品への消費者の不安がある。ある調べ
によると、食料品店で売られている加工食品の約80%は、何らかの遺伝子組み換え材料
を含んでいるともいわれているほどだ。
特に米国の三大遺伝子組み換え作物といわれる「とうもろこし」「大豆」「カノーラ」
を材料に使った加工食品はGMフードの可能性が極めて高い。一方、野菜などのフレッシュ
な農作物については、遺伝子組み換えものは少ないといわれている。
ただし、パパイヤ、スイートコーン、カボチャは遺伝子組み換えが多いという。また、遺伝子組み換え作物
を飼料に飼育されたミートも広く出回っている。目に見えない遺伝子組み換え食品を避け
るため、それでも消費者にとってnon-GMO表示は貴重な情報源となる。
知らないうちに進むGM汚染、オーガニック食品も疑問視
non-GMO表示のある20商品を調べたところ、16商品で遺伝子組み換え素材が検出---。
ウォールストリート・ジャーナル紙が数年前にそんなショッキングなニュースを報じ、
non-GMO表示の信ぴょう性に疑問を投じたことがある。
さらに、今年2月に発表された研究報告もnon-GMO表示の疑問を呈した。研究報告は、
non-GMO表示があっても、意図的ではないにしろGM汚染されている可能性が極めて高い
と結論付けている。というのも、non-GMOのはずのとうもろこし、大豆の種をいくつか
調べたところ、半数が知らないうちにGM汚染されており、カノーラの種にいたっては
約83%が汚染されていたからだ。
同報告書は、たとえきちんと認定されたオーガニック食品であっても100%遺伝子組み
換えフリーはむずかしかもしれないと指摘している。
FDA、non-GMO表示商品のメーカー6社に表示内容について書簡送る
また、non-GMO表示が消費者の誤解を招いているという問題も浮上している。食品
医薬品局(FDA)はnon-GMO表示商品のメーカー6社に対し、表示内容が遺伝子組み換え
素材を含んでいないため優良商品であるというイメージを消費者に与える恐れがあると、
書簡で指摘した。
この中で、「ピュアー」といった言葉使われ、優越性を錯覚させると指摘している。
食品にオーガニックが含まれるのはごく稀で、さらに農作物の大半はテクノロジーを
使って品種改良されており、ほとんどがある意味でgenetically modified済み、
no Genetically Modifiedと表示するのは問題がある、としている。
FDAは、この書簡はあくまでメーカー側の表示方針に関する問い合わせであって、決して
警告ではない、としている。一方、これを受け、メーカー側はプレスリリースなど
の中で、「遺伝子組み換え素材が商品に含まれているかどうかを知りたいという消費者
のニーズに応えているだけ」と反論している。
オーガニック・トレード協会、GMO汚染の可能性が強いため表示には否定的
FDAは、減量中の人がファットフリー商品を購入するのと同じように、消費者がヘルシー
フード感覚でnon-GMO表示商品を購入する恐れがあるとして、non-GMO表示には否定的だ。
「non-GMO」や「non-GM」表示のかわりに、「バイオテクノロジーを使って生産した材料
は一切使っておりません」、「同商品は遺伝子操作した(genetically engineered)素材
は使っておりません」といった文章表示のほか、オート麦などの遺伝子組み換えがもと
もとあまり盛んではない作物を素材にした商品へのnon-GMO表示は避けるよう薦めている。
また、オーガニック・トレード協会もnon-GMO表示には否定的だ。GMO汚染の可能性が強い
うえ、GMO含有の有無を調べる方法に限界があるからだという。同協会もnon-GMO表示の
かわりに、文章で「GMOを使わずに栽培、生産しました」と表示するほうが好ましいという
見解を打ち出している。
業界内でGMO含有の有無を調べる第3者認定機関を求める声高まる
このように統一基準がまだ確立されていないことから、かえって表示が命取りになる恐れ
があると、表示を見送るメーカーも少なくない。表示したものの、後で遺伝子組み換え
作物が検出されブランドイメージにダメージを与えたり、FDAからのクレームで表示内容
差し替えなどが生じれば予想外の出費となるからだ。
そこで、業界内ではGMO含有有無を調べる第3者認定機関のニーズが高まっている。GMOが
含まれているかどうかを調べるプログラムをもち、一応の基準を確立した民間機関である。
non-GMO認定エージェントの老舗はCert IDで、3年の歳月をかけ認定プログラムおよび
統一基準を確立した。また、最近では、種から商品になるまでの過程すべてにおいて
GMOフリーを証明できる独自のプログラムを持つメーカーも出てきている。