米国・代替医療への道 2001

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米国で増える若年性アルツハイマー症、現状と対策
アルツハイマー病患者といえば、思い浮かぶのは65歳以上の高齢者。ところが、アメリカで最近、40、50代の若年性アルツハイマー病患者が増えている。高齢者に比べケースは少なく社会的な認識が低いため、行政をはじめ医療・福祉関係者の関心は極めて薄い。アメリカにおける若年性アルツハイマー症の現状と、対応素材として注目されているギンコ(イチョウ葉)研究などNational Center for Complementary and Alternative Medicine (NCCAM)のアルツハイマー治療に関する最新状況を報告する。

  40、50代の働き盛りがアルツハイマー症に

アルツハイマー協会ミネソタ―ダコタ支部のウェッブサイトには、若年性アルツハイマー病患者および介護者がネットワークを作るための掲示板がある。そこには、患者本人、そして介護する家族たちの生の声が綴られている。

「夫が若年性アルツハイマー病だと診断されたのは1年前のこと。まだ56歳でした。私は、それより2年ほど前から夫の異常に気付いていました。夫は5年ほど前にも神経科の検査を受けていました。その時の診断は『異常なし』。その後、夫の理解力は少しづつ衰え、最近では字を書くこともままならない状態で、アルファベットの形すらわからなくなるようです。また、感情の起伏が激しくなり、精神安定剤も飲んでいます。アルツハイマー病のサポートグループの集まりに参加しても、大半が80歳以上。私のようなケースとはあまり接点がなく、参加してもあまり得るものはありません」(2000年に掲載)

掲示板によると患者はいずれも30代から60代前半。「最初は、ちょっとした鬱状態、または中年層によくある倦怠感みたいなものだと思っていました。まさか、アルツハイマー症だったなんて」と、まったく予想していなかった診断に、本人はもちろん周囲の戸惑いは大きい。目立つのは「おかしいと気付いたのは2年ぐらい前」というコメント。誰も「アルツハイマー病」=「老人の病気」という図式ができあがっているため、物忘れしやすくなったなどの異常に気付いても、まさか40、50の働き盛りがアルツハイマー病とは思わない。

アルツハイマー症の5%は若年性

アメリカで現在、アルツハイマー病患者は推定約400万人。うち、5%から10%が65歳以下の若年性アルツハイマー病といわれる。遺伝子DNAの異常に原因があるとみられ、血族に若くして発病した患者のいる人の罹患率は高いという。ただし、身内に病歴がなくとも突然発病する場合もある。今のところ治療法はない。

老人性アルツハイマー病より痴呆の進行が早く、数年のうちに重症まで進み、診断から10年以内に亡くなるケースが多い。ベビーブーマー世代の高齢化に伴い、アルツハイマー病は今後も増加し続けることは確実だ。いくつかの推定によると、2050年にアルツハイマー病患者は1400万人に膨れ上がり、「若年性」も15%近くに達すると予想されている。

しかし、アルツハイマー病といえば高齢者の病気という社会認識ができあがっているため、「若すぎる」がゆえの弊害は大きい。職場では、病気による機能の低下を、アルコールや麻薬中毒と疑われることも少なくない。さらに、アルツハイマー病患者を受け入れるさまざまな福祉施設はあるものの、いずれも高齢者を対象としていることから利用できない。

連邦や州政府が提供する在宅医療援助といったサービスも年齢制限で、はじきだされてしまう。高齢化社会の到来で、アルツハイマー症への関心が高まる一方で、典型的な患者プロファイルに当てはまらない人たちは取り残されているというのが現状だ。

現在、アルツハイマー症の対応素材として注目されているのがギンコ(イチョウ葉)。米国で最も人気の高いハーブだが、こうしたハーブによるアルツハイマー症の改善に期待がかかっている。

National Center for Complementary and Alternative Medicine(NCCAM)の最近の取り組み

さまざなま代替医療についてその効果を研究するNCCAM(米国代替医療センター)。National Institutes on Aging(NIA:米国国立衛生研究所)がアルツハイマー症についてまとめた最新号「2000年アルツハイマー病報告」で、NCCAMで現在3つの研究が進行中という。その内容を紹介しよう。

酸化がβアミロイド蛋白沈着の原因か

オレゴン州立大学で行われている研究。アルツハイマー病に罹ったトランスジェニック(新たなDNAを卵核中に導入された生物)のマウスを使い、アルツハイマー病の原因とみられる脳内のβアミロイド蛋白沈着と「酸化」の関連を調べている。

酸化は、老化の一要因といわれるほか、アルツハイマー病の危険要因とも指摘されている。マウス実験で、(1)抗酸化作用で注目されるビタミンE、ギンコ(イチョウ葉)を投与する、(2)酸化をさらに進める(3)何の治療もしない―という3つのケースにおける、βアミロイド蛋白の沈着度を比較する。

○85歳以上を対象にギンコの効き目を調査

オレゴン・ヘルス・サイエンス大学で実施。85歳以上で痴呆のみられない約200人を、ギンコまたは偽薬品投与の2組に分けて追跡調査する。ギンコの痴呆防止と抗酸化剤としての働きを調べるのが目的。一般的に、85歳を超えたあたりから、認知力の低下が目立ちはじめ、そのまま進むとアルツハイマー病を発症するケースが多いといわれている。

○75歳以上を対象にギンコの効き目を調査

NCCAM、NIAなど複数の機関が関与。75歳以上を対象にギンコの効き目を調べる。1日にギンコ240mgまたは偽薬品を投与する二つのグループに分け痴呆に対する防止効果を調べている。