米国・代替医療への道 2001
増加する若年性アルツハイマー / ホメオパシー療法の最新研究 / 遺伝子組み換え、栄養強化など開発 / 一般食品の機能性食品化に拍車 / ネットビジネス、監視体制強化 / アロマセラピー市場、成長株に / 急伸するオーガニック市場 / 「代替医療」への抵抗勢力 / サプリメント、虚偽広告規制へ / コンプレックス商品、好調な売上げ / 米国代替医療~①ハーブ・サプリ編 / アンチエイジング市場に活路 / ビタミンEなど、有効性が論議の的に / サプリメント、妊娠中摂取の問題点 / 拡大するオーガニック市場 / ビタミンなど1日の標準推薦量報告 / 「ニューエイジ・ドリンク」がブーム米国で栄養補助食品(サプリメント)の安全面の管理などはFDA(米食品医薬品局)その任を果たしてはいるものの、'94年のDSHEA(栄養補助食品教育法)の施行以後、商品に科学的根拠があればFDAに通知するだけで、一定の効能効果の記載が可能となり、業界側が主導権を握ることとなった。
インターネットでのサプリメント販売、誇大広告で提訴
ここ数年の代替医療ブームで、サプリメントの売上が急伸する中、科学的に十分な立証がないにもかかわらず「サプリメントは薬品と違いナチュラルで安全」などの謳い文句が跋扈し、行き過ぎた虚偽広告が目につくようになった。これに対し、DSHEAの見直しを迫る声がそこかしこから挙がりつつあるが、ここにきてFDAも健康関連業社6社を虚偽広告で訴えるなど対策に腰を上げ始めた。'94年のDSHEA施行以前のような政府主導の規制が再び頭をもたげつつある。
コンフリー含む商品に発がんリスク、全商品を回収措置に
7月20日、FDAはハーブのコンフリーを含むサプリメントを扱う栄養補助食品企業に対し、商品が肝臓障害をもたらす、あるいは発がんの危険性があるとして、商品の全面回収を求めた。FDAが米国ボタニカル評議会、米国ハーブ商品協会、全米自然食品協会などサプリメントメーカーを代表する各団体に宛てた通知によると、問題があるのは、common comfry、 prickley comfry、Russian comfreyの3種類で、いずれも毒性アルカロイドを含んでいる。
FDA関係者は「コンフリーまたは毒性アルカロイドを含んだサプリメントをただちに回収するほか、すでに利用している顧客に対し使用を即中止するよう呼びかけるよう、各団体を通じてメーカー側に強く要請している」と話している。
また、FDAは6月20日にも、健康に害を及ぼす危険があるとして13種類のハーブ商品の使用を中止するよう消費者に警告。いずれもaristolochic acidを含んだハーブ商品で、腎不全をはじめ腎臓に障害を及ぼすほか、発ガンの危険があるという。商品回収の対象となったのは、ニューヨーク州ブルー・ライト社の「Treasure of the East」ブランド13種類で、MFG No. 200008(2000年8月)以前に製造されたもの。同年9月以降に製造されたものは対象になっていない。
商品は次の通り
Item # Single-ingredient
100176-0 Mu Tong
100644-2 Ma Dou Ling
Herbal combinations
B015 Ba Zheng San
D060 Dang Gui Si Ni Tang
D075 Dao Chi San
F050 Fu Fang Di Hu Tang
G005 Gan Lu Xiao Du Dan
K030 Kou Yan Ning
L070 Long Dan Xie Gan Tang
P005 Pai Shi Tang
X072 Xiao Ji Yin Zi
X125 Xin Yi San
Y020 Yang Yin Xiao Yan tang
いずれも全米のハーブ店で、パウダーまたはカプセルの形で販売されていた。回収は、aristolochic acidの健康への悪影響を心配したメーカー側が自発的に行ったもので、今のところ健康を害したという報告は出ていない。
エキナセアなどの売れ筋ハーブ、医薬品との併用で相互作用が指摘
米国メディカル協会誌の最新号もハーブの問題性を指摘したシカゴ大学の調査報告を掲載した。問題になったのは、エキナセア、エフェドラ、ガーリク、イチョウ葉、ジンセン、カバ、セントジョンズウォート、バレリアンの8種類。いずれも手術直前まで服用していると、手術中に多量の出血を起こす危険があるという。
米国麻酔医協会によると、合併症などの危険から、患者は手術を受ける少なくとも2、3週間前には一切のハーブ服用を止めるべきだという。これに対し、シカゴの調査報告は、イチョウ葉の場合は少なくとも手術の36時間前、ガーリックは少なくとも1週間前から服用を控えるよう、8種類のハーブについて細かく指示している。
報告書では、これまで再三にわたり言われてきた「服用の仕方さえ誤らなければハーブはプラス効果がある。しかし、十分な知識なしに利用するのは危ない。患者は医者にハーブを服用していることをきちんと話すように」と念を押している。
インターネット上の虚偽告知で業社6社を摘発
不正慣行や虚偽広告などを防止するFTC(米連邦取引委員会)は6月、インターネット上で嘘偽広告をしていたとして、サプリメントの販売企業をはじめ健康関連業社6社を相手取り連邦地方裁判所で訴訟を起こした。うち5社は即、示談に応じた。起訴された6社は次の通り。
・パンダ・ハーバル・インターナショナル(ペンシルベニア州、ヴァイアブル・ハーバル・ソルーションの社名でも営業している)
問題になったのは、同社商品「ハーバル・アウトルック」と「ハーブ・ベール8」の広告。「アウトルック」はセント・ジョーンズ・ワートを含んだサプリメントで、インターネット上で「エイズ、ヘルペス、結核、インフルエンザ、B型肝炎に利く」と宣伝、さらに「ほかの薬と併用しても副作用はない」と付け加え、販売していた。「ベール8」は局所用の塗り薬で、「上皮性の悪性腫瘍などの治療に効果あり」と宣伝していた。FTCは、広告にある効果はいずれもなんら根拠がない上、「ほかの薬と併用しても副作用がない」とあるのは偽りであるとして、同社を訴えた。
・ForMor, Inc(アルカンサス州)
同社商品「セントジョンズワート・カバカバ」「コライダル・シルバー」「アルティメイトII・シャーク・カートリッジ」の虚偽広告で訴えられた。複数のハーブを複合したサプリメント「セント・ジョンズ・ワート・カバカバ」が、エイズ、かぜ、結核、赤痢などに効くと謳ったほか、「コライダル・シルバー」は、「650種類の疾患に効くと科学的に立証されており、安全で副作用はまったくない」と偽りの広告を掲載した。
さらに、同ハーブが赤痢、関節炎、りん病、ハンセンシ病、皮膚結核、マラリア、リューマチなどの治療に効果があるといい、「シャークカートリッジ」は「関節炎などの治療に効果があると科学的に裏付けられており、脳腫瘍の治療にも効き目がある」と、虚偽の広告をしていた。
・MaxCell BioScience(またはOasis Wellness Network、コロラド州)
マルチ商法でサプリメント販売。インターネットはもとより、営業用ビデオやカセットテープで、同社商品「Longevity Signal Formula(LSF)」「Anabolic/
Catabolic Index Test」の虚偽広告を展開していた。DHEAを含んだLSFが、「老化を防ぐだけでなく若返りも助け、関節炎、高血圧、高コレステロールなど
老化と関係の深い疾患の治療に効き目がある」と宣伝したほか、自宅用尿検査キット「Anabolic/Catabolic Index Test」で、健康度および老化の進み具合が分かると偽りの広告を展開していた。
・Aaron Company(フロリダ州)
同社商品「コライダルシルバー」は科学的に650種類の疾患に効くと立証されている、「ビタミンC入りチトサン」はダイエットしなくても痩せられる、エフェドラを含んだ「アルティメート・エネルジャイザー」は安全で副作用がない、といずれも根拠のない表示をしていた。
・Jaguar Enterprises of Santa Ana (テキサス州)
同社の電磁健康機器が、がん、エイズ、関節炎、慢性疲労症候群などの疾患に治療・予防効果があるといって販売していた。また、いつくかのハーブを複合したサプリメント「ミラクル・ハーブ」が、がん、エイズなどの治療に効果があると宣伝。いずれも商品も「安全性および効果は科学的に立証されている」と偽りの表示をしていた。
・Western Dietary Products Co. (またはWestern Herb & Dietary Products Inc. ワシントン州)
複合ハーブサプリメントの広告で、「がん、アルツハイマー、エイズ、関節炎、糖尿病などの疾患などに治癒効果あり」と謳った上、「がん患者がこれを服用すれば、手術やキモセラピーをしなくても病気を完治できる」などと、なんら根拠のない偽りの表示をしていたとして起訴された。
米国厚生省(Health and Human Services局)などFDAの規制強化を提案
こうした現状を踏まえ、米国Health and Human Services局は、栄養補助食品業界に関する調査報告書の作成に乗り出した。4月初めに提出した草稿では「連邦のサプリメント規制は公共の健康を守るのに十分な役割を果たしていない」と結論づけ、業界主導型の規制のあり方に難色を示した。
草稿によると、サプリメントについては、発売前にFDAの安全保証審査を受ける必要がない上、「商品を利用して健康を損ねた」という利用者からの苦情が企業あっても、企業サイドはFDAに報告する義務はない。あくまでも企業側の良心に委ねている。 報告書は「FDAは企業側の報告に依存しており、たとえ報告があってもその後、どんな処置が取られたかはほとんど知らない。これは公共の健康を守る上で大きな問題だ」と指摘。消費者の安全を考え、健康に悪影響があった場合の報告および発売前の商品登録を義務付けるといったFDAの規制強化を提案している。
さらに草稿は、最近のFDA調査報告を引用し、「FDAが把握しているのは、サプリメントによる健康障害ケースの1%にも満たないはず」とも。現在、アメリカの総人口の60%がサプリメントを利用しており、今のシステムは消費者の安全を守るには機能していないと批判した。
草稿の内容に対し、栄養補助食品業者で構成する団体CRN(Council for Responsible Nutrition)は「報告書は不備な点が多く、公けに発表する前に
内容の改善が必要だ」と反発。さらに「報告書には『会社を作ってはすぐに店じまいするような無責任な業者が多いため、FDAが追跡できない』といった指摘があり、栄養補助食品業界に対するネガティブなイメージを作り上げている」と、マイナス影響を心配している。同団体によると、同団体が把握している65社が、米国市場の約75%を占めており、悪徳な業者はごく一部。それが業界全体の現状のように受けとれる報告書は大きな問題というわけだ。