米国・代替医療への道 2001
増加する若年性アルツハイマー / ホメオパシー療法の最新研究 / 遺伝子組み換え、栄養強化など開発 / 一般食品の機能性食品化に拍車 / ネットビジネス、監視体制強化 / アロマセラピー市場、成長株に / 急伸するオーガニック市場 / 「代替医療」への抵抗勢力 / サプリメント、虚偽広告規制へ / コンプレックス商品、好調な売上げ / 米国代替医療~①ハーブ・サプリ編 / アンチエイジング市場に活路 / ビタミンEなど、有効性が論議の的に / サプリメント、妊娠中摂取の問題点 / 拡大するオーガニック市場 / ビタミンなど1日の標準推薦量報告 / 「ニューエイジ・ドリンク」がブーム米国におけるビタミン、ハーブの売り上げが失速している。栄養補助食 品健康教育法(DSHEA)が成立した1994年以来、毎年2桁成長を続けていた が、昨年はじめてほぼ横這いを記録した。市場拡大の牽引車となっていたセ ントジョンズウォートに代表されるハーブサプリメントの安全性や効き目に否定的 な研究が発表されたことで、売り上げが急降下。加えて、米国のこのところの景 気後退で、消費者は購買品に的を絞りはじめてきたためだ。ほぼ5年続いたサプ リメント旋風が停滞する中、メーカーは新たなマーケットに活路を求めはじめた。 米国栄養補助食品業界の現況を報告する。
2桁成長が突然、1.2%に
サプリメントの自由化ともいえる栄養補助食品健康教育法(DSHEA)が成立した のが1994年。米国食品医薬品局(FDA)への業界の強力なロビー活動が実を結び、 業界側がサプリメントの安全性や効用を判断する権利を握った。FDAは関門では なく、あくまでも問題が生じた際の単なる取り締まり役に回った。
テレビで大々的なサプリメント広告が展開され、健康食品店、量販店の店先には、 効用を謳った資料がずらりと並んだ。ナチュラルな素材の栄養補助食品は、薬剤 と違って副作用もなく体に優しい―と。
健康志向が高まっていたこともあり、消費者は迷わずサプリメントに飛び付いた。 売り上げは毎年、2桁の伸率を記録。販売調査会社のインフォメーション・リソース 社によると、量販店のサプリンント売り上げは、97年の6億9950万ドルから99年に は12億6千万ドルと80%もアップした。しかし、この99年のピークを境にどうも雲行 きがあやしくなってきた。2000年の売り上げは前年比1・2%増と、これまで見たこ ともない低成長ぶりに業界関係者は愕然とした。
メディアのネガティブ報道などが失速の要因に
天然の抗鬱剤の異名で爆発的にヒットしたセントジョンズワォート。しかし中・重度 のうつ症状にはまるで効き目がない―そんな内容の研究報告がつい最近、発表 された。大手メディアがこぞって「効き目なし」とセンセーショナルに報じたのはい うまでもない。他にも「エキナセアの長期使用は安全面で問題あり」「イチョウ葉の 記憶力アップに疑問」といった研究内容が昨年ごろから次々と発表され、そのたび にメディアは大きく取り上げた。
前出のイフォメーション・リソース社によると、2000年4月1日から今年の4月1日ま でに、セントジョンズウォートの売り上げはマイナス45%、イチョウ葉もマイナス32%、 ジンセン(高麗人参)もマイナス26%と、メディアのネガティブ攻勢を受けた人気 御三家はいずれもマイナスの売り上げを記録した。
含有量の不正表示が消費者の不信を買う
また、含有量が表示を大きく下回った悪質商品が出回ったことも、マーケットに大き なダメージを与えたことは否定できない。たとえば、最近ではConsumerLab.comが 昨年行った調査結果をホームページに掲載。坑鬱作用で注目されているサプリメント 「SAMe」の13商品を調べたところ、5商品が成分の含有量が表示をはるかに下回 っていた。ネガティブな研究報告に加え、インチキ表示に消費者のサプリメントへの 不信感がますますつのった。
5年前には業界にとって朗報だったDSHEAの成立が今、仇になっている―そんな 見方をする業界関係者も出てきた。といってもまだまだ小数派の意見だが、消費者の 信頼を回復するため政府主導の規制を歓迎するムードも漂いはじめた。
業界雑誌「ニュートリション・ビジネス・ジャーナル」3月号の中で、ある大手ハーブ会 社の幹部は「とにかく消費者に買ってもらわないことには。信用を取り戻すのに政府 の規制が必要ならば、それも辞さない」とコメントした。
期待した即効性が得られないことも消費者離れの原因
この他、低迷の理由として同ジャーナルの編集者は全国紙「USAトゥデー」のインタ ビューにこう答えている。
「薬と同じように即効性を期待した消費者が、すぐに効いてこないため買うのを止めた。 セントジョンズウォートを服用すればもう憂鬱な気分になることはないとか、エキナセア を飲めば2度と風邪をひかない―そんなふうに考えている人は多い。商品に対する 正しい知識を消費者に教育する必要がある」
また、「サプリメントよりできれば食品で栄養分を摂りたい」という消費者のニーズに 応え、ビタミンなどを補強した食品へと流れたとの見方も強まっている。
高齢者層の「若返り」ニーズに活路
栄養補助食品市場にこうした停滞ムードが蔓延する中、企業は新なニーズの掘り起 こしにやっきになっている。今世紀、先進諸国は高齢者人口の増加という問題に否応 なく直面せざるを得ないが、こうした層をターゲットにした「若返り」商品のラインアップが 目立つ。すでにこれは消費者のサプリメントニーズの根底にあるものだが、企業サイド にしてみれば王道ともいえる手堅いマーケット。--とくに、米国は新しいものに価値基 準を見出す国。
Aging―。いつまでも若くハツラツとしていたいというベビーブーマー世代にはなんとも いやな響きの言葉だ。しかし、同世代が中高年にさしかかった今、「老化だからしかた がない」とあきらめず、あの手この手で若返りを試みる人が増えている。売り上げが 低迷するサプリメント業界がこのマーケットを見逃すはずがない。中高年をターゲットに したマーケットが今、ホットだ。
「グルコサミン」「コンドロイチン」、「SAMe」が目玉
年を取るとひざの痛みを訴える人が増えてくる。軟骨組織の中にある「グルコサミノグリ カン」と呼ばれる成分が少なくなってくるからだ。つまり、グルコサミノグリカンが十分で あれば、関節のトラブルは起こりにくい。そこで、グルコサミノグリカンの増やしてくれる 「グルコサミン」と「コンドロイチン」を配合したサプリメントが飛ぶように売れている。
昨年の売り上げは、マルチビタミンに続く2位で、3位のカルシウムをわずかに上回り、 前年比27%増の3億6850万ドルだった。また、変形性関節炎に大きな効果を発揮、 鬱も短期間に改善させるとサプリメント業界の目玉になっている「SAMe」は、2000年 の売り上げが3070万ドルと、前年の2400万ドルを上回った。
更年期のトラブルを解消するサプリメントも人気上昇
更年期のトラブルに用いられるサプリメントも急上昇組に入っている。特に、乳がん、 子宮がん、更年期障害、骨粗しょう症などへの影響が盛んに報道され関心が高まっ ているのが大豆イソフラボン。植物性のエストロゲン(女性ホルモン)といえる成分で、 体内で作られるエストロゲンと同じような働きをする。
更年期などの治療に女性ホルモン剤を使うと乳がんのリスクを高める可能性があるこ とから、自然でより安全な選択肢として人気だ。女性向けサプリメントの中でも急成長 株で、2000年の売り上げは4890万ドルで、前年比112%増を記録した。
更年期症状を緩和するハーブも売上げアップ
女性限定サプリメントとしてほかには、レッドクローバー、ブラック・コホシュ、べレリアン (カノコソウ)などが売れている。ブラック・コホシュは、ネイティブ・アメリカンに古くから 利用されていたハーブで、植物性エストロゲンが含まれているため更年期の症状を緩 和するといわれている。昨年の売り上げは620万ドルで前年比5%増。ストレスを和ら げ熟睡をサポートするバレリアンも、更年期の症状のひとつ不眠に効果があると2000 年の売り上げは前年比70%アップを記録した。
商品としては、大手サプリメント会社のEnzymatic Therapy社が今年2月に「Women's
Choice AM/PM Menopause Formula」を発売。朝にブラック・コホシュ、ジンセン、緑
茶を配合した錠剤を1錠、夜にブラック・コホシュ、カバ、バレリアン、ホップを配合した
錠剤1錠を服用する。モーニングピルは、のぼせなどの更年期の症状を緩和するほか
エネルギーアップ、イブニングピルはリラックスして安眠を助ける働きがあると、午前と
午後のニーズに合わせたユニークな商品として注目されている。