米国・代替医療への道 1997

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米国の健康関連機関・CDC

  CDCでエボラウイルスを解析、世界中の感染症に対応

ジョージア州アトランタに本部を置く米疫病対策センター(CDC)。その使命は、疫病、傷害などを予防・管理し、世界の保健衛生および生活の質を向上させることにある。アラスカ、オハイオ、コロラド、ワシントンDCなど、米国各地に施設を持ち、約6千9百人の職員が約170種の異なる職種につく。

世界中のどこで恐ろしい感染症が発生してもすぐに専門家を派遣できる機動部隊の出撃地でもある。エボラウイルスによって起こる伝染病、エボラ出血熱。現在有効な治療法はなく、防疫対策が重要なカギとなっている。米国では94年、エボラウイルスなどと闘う研究者を描いた「ホットゾーン」がベストセラーになり、95年には同じテーマで映画「アウトブレイク」がヒットした。これに呼応するように95年4月半ば、ザイール南西部でふたたび流行。最終的にエボラと確認したのは、CDCの遺伝子解析室だった。

世界で最も信頼される設備

エボラのように致死率が非常に高く、しかも治療法のない危険性の高いウイルスの解析と研究を行なえるのは、病原体の封じ込めレベルの極めて高い実験室だけ。バイオハザードレベル4(BL-4)実験室と呼ばれ、そこでは、研究者はすべて宇宙服のような防護服を着て、空気は外から供給されるという状況の中で活動を行なう。

また、実験室から出るウイルスに汚染された空気、水、ごみなどはすべて何段階かの減菌処理を経てから施設外に排出するという厳重な安全対策をとっている。CDCのほかに、メリーランドにある米国陸軍フォートデトリックの研究室、パリのパスツール研究所、そして英国とモスクワにもBL-4実験室があるが、建物の老朽化や予算削減んなどから、最も安心して利用できるのは現在、CDCの実験室といわれている。

各国から客員研究員を招き、専門家の育成に傾注

あっという間に世界中に広がる新興の感染症。今や感染症対策に国境はないといわれている。そこで、CDCは現在、世界各地の関連施設を結ぶ新感染症の国際監視網づくりを進めているほか、専門家の育成にも力を入れ、各国から数100人の客員研究員を招いているという。

防疫対策のひとつとして今年、医療関係者を対象に疫病対策ガイドラインの草案を作った。医療施設での感染のわかっている感染症の予防、医療関係者の病原体接触を防ぐための事前対策、すでに病原体にさらされてしまった後の予防処置、病原体に接触またはすでに感染している医療関係者の労働規制などに焦点を当てた、現状に適したガイドラインだ。今後も内容の検討を重ねていき最終案がまとまった時点で、83年に作られたこれまでのガイドラインにとってかわるという。

災害発生時の対応でも大きな功績

さまざまなCDCの活動の中で、災害発生時の公衆衛生上の予防および対応でも目を見張るものがある。米国内はもとより世界中で起きた天災および人災への対応では大きな功績を上げている。最近では、カリフォルニア州、フィリピン、エジプトの大地震、ハリケーンヒューゴとアンドリュー、イリノイ州とカンザス州のトルネード、フィリピン、チリ、ニカラグアの火山噴火、中国と米中西部の大洪水など、発生の際に迅速に保健衛生上の影響を調査。

これらの調査の狙いは、死傷者を推定し、被害を防ぐまたは最小現におさえるための効果的な対策を作り上げていくことにある。例をあげると、トルネードについてのCDCの発見をもとに作成された災害予防ガイドラインは、頻繁に襲われる地域の生活に大きく寄与しているという。

このように疫病や災害と闘うほか、頻繁に統計を発表し、メディアを通じて保健衛生に関する情報を広く一般に提供するのも重要な役割のひとつだ。最近では9月はじめに、インフルエンザについての情報を公開。全国で年間に2万人の死者が出ていると警告したうえで、予防注射をすれば70から90%は感染を防ぐことができる、とその需要性を強調した。

また、職場における事故についても調査結果を発表。米国で80年から92年の間に7万7千人が死亡しており、これは一日平均16人が職場の事故で命を落としていることになる。94年には約6百30万人の労働者が勤務中にけがをし、休職や治療などのため、1千2百10億ドルの損失が報告されている。こういった現状をふまえ、職場での事故防止管理の大切さも訴えている。