米国・代替医療への道 2001
増加する若年性アルツハイマー / ホメオパシー療法の最新研究 / 遺伝子組み換え、栄養強化など開発 / 一般食品の機能性食品化に拍車 / ネットビジネス、監視体制強化 / アロマセラピー市場、成長株に / 急伸するオーガニック市場 / 「代替医療」への抵抗勢力 / サプリメント、虚偽広告規制へ / コンプレックス商品、好調な売上げ / 米国代替医療~①ハーブ・サプリ編 / アンチエイジング市場に活路 / ビタミンEなど、有効性が論議の的に / サプリメント、妊娠中摂取の問題点 / 拡大するオーガニック市場 / ビタミンなど1日の標準推薦量報告 / 「ニューエイジ・ドリンク」がブーム米農務省は、4年間の研究分析を経て、ビタミン・ミネラルの上限を含む1日の標準推 薦量(RDA)を新たに発表した。今回は上限摂取量も示されたが、この中から特に摂 取人口の多いビタミンEに関する同省の発表内容を報告する。
アメリカ人の4割が日常的にビタミンを利用
常にビタミン剤を飲む「ビタマニア」とよばれる割合はアメリカ人の40%。日常的 に飲むものでも、ビタミンはどのくらい必要であるか、毎日の食事からどの位取れる ものなのか、さらに、多すぎるというのはどの程度なのか――そうしたことを知らず に飲んでいるケースが多い。
ビタミン剤を使用する場合、一番目安となるのがRDA(Recommended Daily Allowance)といわれる1日の標準推薦量。研究をまとめてNational Academy of ScienceのInstitute of Medicineが設定、数年毎に改訂版を発表するが、今回は上限 を示すTolerable Upper Intakeも合わせて報告されている。RDAは、男女それぞれの グループで、特定年齢層の健康な個人の殆ど全て(97~98%)に必要な栄養素基準 を満たす1日の摂取量を表す。
□ ビタミンEの場合++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ビタミンEには、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、δト コフェロール、αトコトリエノール、βトコトリエノール、γトコトリエノール、δ トコトリエノールの8つの形があるが、ヒトの血漿の中に保持される形はαトコフェ ロールで、さらにその中でも2R-stereoisomeric(RRR-、RSR-、RRS-、 RSS-α-tocopherol)ということから、報告の中で設定されている推薦摂取量はαト コフェロールの2R-stereoisomeric型のこと。
ビタミンEのRDAは、1~3歳では6mg、4~8歳7mg、9~13歳は11mg、14~18歳は15mg。 19~30歳では15mg、31~50歳も同じく15mg。51~70歳、さらに70歳以上でも15mgとな っている。ビタミンEの一番の機能は、抗酸化作用。フリーラジカル反応の増殖を抑え、特 にリン脂質膜内ならびに血漿リポ蛋白にある多価不飽和脂肪酸(PRFAs)を保護する。
ビタミンE吸収の効率性はヒトに関しては低いといわれているが、1970年代の始めに、 51~86%との推定が発表されている。ただ、胃がん患者とリンパ性白血病患者でのビタ ミンE吸収率を調べたところ(1968年)21~29%のみだったという。
虚血性卒中、心筋梗塞の発症などの危険性が減少
ビタミンEの欠乏は、ヒトの場合ほとんど見られない。何らかの機能不全を起こしている 患者、例えばα-TTPの遺伝子異常の結果として、あるいは脂肪吸収不良の結果など で起こる。
しかし、こうした不全の場合、ビタミンEを補給して回復することが多い。ビタ ミンE欠乏で起きる主な症状としては、例えば感覚ニューロン内の口径の大きい軸索 変性が特徴となる末梢神経障害が挙げられる。 慢性疾患に関連するビタミンEの働きを調べる研究はかなり多く行われている。挙げら れる主な働きとしては、次のようなものがある;
■ LDL(悪玉)コレステロールの酸化を防ぐ。
■ プロテイン・キナーゼを抑制することにより平滑筋細胞の増殖を抑える。
■ 血小板の粘着、凝集を抑制する。
■ 血小板レセプターと結合して凝集を誘発するトロンビンの発生を抑える――など。
さらに、疾患との関連性では、例えばAlpha-Tocopherol Beta-Carotene(ATBC) Cancer Prevention Study(1994)では、αトコフェロール(1日50mg)とベータカロチン (20mg)をそれぞれ、あるいは併用して与えた場合の肺がんへの有効性を調べたとこ ろ、ビタミンEは肺がんにはそれほどの有効性を示さなかったが、前立腺がんの罹患率 は減少したことがわかった。
一方、ビタミンE摂取グループは出血性卒中による死亡率が50%も高かったが、虚血 性卒中の死亡率は16%、虚血性心臓病による死亡率は5%減少した。さらに、致命的 ではない心筋梗塞の危険性は38%低かった。Cambridge Heart Antioxidant Studyで は、冠状動脈性心疾患患者に400IU(268mg)あるいは800IU(567mg)の RRR-α-tocopherolか偽薬を与えたところ、致命的でない心筋梗塞の発症が77%も減 少した。
ただ、19カ国で行われた研究、Heart Outcomes Prevention Evaluation(HOPE) Studyでは、55歳以上で虚血性心臓病、卒中、抹消動脈疾患の病歴がある9千人以上を 対称に、被験者には、RRR-α-tocopherol400IUか偽薬を4年半与えたが、死亡率、 心臓病死、心筋梗塞、卒中についてはその有効性があいまいだった。
副作用の心配のない最大摂取量を1日1000mgと設定
糖尿病の合併症と酸化ストレスとの関連性でビタミンEの働きを調べた研究では、糖 尿病患者あるいは糖尿病に罹っていない被験者にαトコフェロールを与えたところ、 LDLの酸化への影響が減少したことが分かった。
さらに、糖尿病の神経障害との関連性を調べた研究では、神経障害を併発するタイプII型糖尿病患者21人にαトコフェ ロールを1日900mgあるいは偽薬6ヶ月間与えたところ、空腹時並びに食後のグルコー ス値は変化しなかったが、可動性における神経伝達の速度が格段に向上したという。
特定年代グループのほとんど全ての人々に副作用が起きない摂取量の最大を Tolerance Upper Intakeというが、ビタミンEでは1日1000mgと設定されている。これを 越すと出血の危険性が出てくる。ビタミンEの毒性を調べた研究によると、2100mg以下 では副作用は見られなかったという。また、アルツハイマー患者85人に1日2000IUを2 年間与えた研究によると、出血性卒中の増加は見られなかったという。
60歳以上の女性の5割弱がビタミンを利用し、7割強がビタミンEを摂っている
Third National Health and Nutrition Examination Surveyでは1988年から94年 までビタミンE摂取量を調べたが、これによると平均9mgだった。また、1994年から96 年に行われたContinuing Survey of Food Intakes by Individuals(CSFII)による と、食事から摂るビタミンEの量は31歳から50歳の男性が1日9.3mg、女性が6.8mgだった。
また、アメリカ人のビタミンEサプリメント摂取は多いが、Boston Nutritional
Status Surveyによると、60歳以上で男性の38%がサプリメントを利用しているが、
ビタミンEを摂取している割合はそのうちの68%。女性は49%が何らかのサプリメン
トを摂取しており、そのうち73%はビタミンEを摂っているという。