米国・代替医療への道 2001

増加する若年性アルツハイマー / ホメオパシー療法の最新研究 / 遺伝子組み換え、栄養強化など開発 / 一般食品の機能性食品化に拍車 / ネットビジネス、監視体制強化 / アロマセラピー市場、成長株に / 急伸するオーガニック市場 / 「代替医療」への抵抗勢力 / サプリメント、虚偽広告規制へ / コンプレックス商品、好調な売上げ / 米国代替医療~①ハーブ・サプリ編 / アンチエイジング市場に活路 / ビタミンEなど、有効性が論議の的に / サプリメント、妊娠中摂取の問題点 / 拡大するオーガニック市場 / ビタミンなど1日の標準推薦量報告 / 「ニューエイジ・ドリンク」がブーム

拡大が期待されるオーガニック市場~米国内統一基準を発表
米農務省(USDA)は昨年末、遺伝子組み換え(GM)作物を使用した食品をオーガニック食品として表示することを認めないなど、オーガニック食品に関する米国内統一基準を発表した。明確な基準を打ち出した背景には、健康志向や食品の安全性への関心からオーガニック食品の需要が高まっているのと、規制の厳しいヨーロッパ市場を開拓する狙いがある。同基準は官報への公示などの手続きを経て2002年半ばに実施される見通しだ。USDAが10年あまりの歳月をかけ、改定に改定を重ね策定した統一基準の内容と、今後ますます市場拡大が期待される米国オーガニック市況について報告する。

  統一基準の内容~USDAへの約41,000のコメントを参考に改定

まずは、おおまかに統一基準の内容を説明しておこう。GM作物使用の食品のほか、日持ちをよくするためにガンマ線照射でバクテリアの増殖を防いだ食品、防腐剤の亜硫酸塩化合物などを添加した食品、ホルモンや抗生物質を投与した動物の畜産品―などを有機食品として表示するのを禁止する。

また、表示方法については、食品内の有機成分含有量に応じて、「100%有機食品」、有機成分が95%を超える「有機食品」、70%から95%の「有機成分食品」、「70%以下の食品」と、4種類に区分した。

統一基準について、USDAのダン・グリックマン局長は「オーガニック表示は、あくまでもマーケティング上の要素が強く、食品の安全性や栄養価を示すものではない」と強調している。USDAは、2000年3月に発表した統一基準改定案に寄せられた約41,000のコメントを参考にさらに改定を加え、この最終統一基準を作成した。

□最終段階で改定が加えられた主な項目は次の通り。

1)「有機成分食品」の表示について、改定案では有機成分の含有量は「最低50%」とあったのが、ヨーロッパの基準にならえと「70%」に引き上げた。

2)食品製造会社は、主要食品表示ラベルに有機成分有量の正確な割合を表示することができる。

3)「有機畜産品」に関しては、従来の飼育から有機飼育へ切り替える際に、最初の9カ月は100%に満たない有機作物飼育を許可する。(100以下の例外を認めるのは1回限り)

4)「有機ワイン」の亜硫酸塩化合物の使用を認める。

5)含有量95%の場合、残り5%は「市販の有機もの」で代用できないことを証明しなければいけない。USDAが正当と認めた場合、「有機食品」ラベルの表示が許可される。

議論をよんだ「含有量70%以上の場合、残りの成分についてもGMおよび放射線の使用を禁じる」については変更なし、「有機農業に移行中であることを示す表示ラベルも作ってほしい」という業者の願いは、「消費者の混乱を招くだけ」(USDA)という理由で却下された。

「オーガニック業界に改革もたらした」と高い評価

統一基準に対する食品業界関係者の評価はまずまずだ。ジェネラル・ミルズの1部門「スモール・プラネット・フーズ」の創設者、ジーン・カーン氏は「統一基準は、オーガニック業界に改革をもたらし、市場がさらに拡大されるものと大きな期待をよせている」と歓迎。

また、オーガニック・トレード協会(OTA)のエクゼクティブ・ディレクタのキャサリン・ディマット氏も「基準内容は厳しく、オーガニック業界の前進に多いに役立つことだろう。ただ、まだ完璧とはいえないので、OTAでは今後もUSDAに対し問題点を指摘してきしていく」と話していた。

全米で統一された基準を設けたことで、消費者はもとより、供給側の困惑も解消され、これまで様子見していた農家や食品メーカーが次々と参入してくるものと予想する関係者は多い。

オーガニック市況~90年代半ば頃から毎年20-25%の伸び

ところで、統一基準の必要性がここまで重視されたオーガニック市場の現状をみてみよう。米国オーガニックフード市場報告によると、2000年の売り上げは推定78億ドルで、前年の65億ドルを20%上回った。90年代半ばごろから毎年20%から25%の成長を遂げているという。

有機栽培に切り替える農家も増えており、公認の有機農家は現在、12,000件を数える。昨年4月26日付けの全国紙「USA TODAY」によると、1997年現在、有機栽培の農地面積が最も広いのが、アイダホで107,955エーカー(以下エーカー略)、次がカリフォルニアで96,851、ノースダコタ88,581、モンタナ 59,362、ミネソタ 56,275、ウィスコンシン41,245、 コロラド35,127、アイオワ 34,276、フロリダ32,745、ネブラスカ28,104と続く。

遺伝子組み換え食品の登場が有機食品人気に拍車をかけた

市場成長の背景には、大手食品会社の参入がまず挙げられる。ジェネラル・ミルスズ、ケロッグ、ハインツといった大手の参入で、大型のスーパーマーケットや自然食品店といった量販店への道が開かれ、価格競争も盛んになり、オーガニック市場が活性化された。 さらに、有機成分入り食品の量産を可能にしたのと、大々的な宣伝効果も決して無視できない要因だ。いつくかの資料によると、量販店が、有機食品売り上げの半分近くを占めているという。

GM食品の登場も有機食品人気に拍車をかけた。メディアを通じてGM食品の安全性をめぐり賛否両論が報道される中、消費者は食品の安全性に疑問を抱きはじめ、「環境にやさしいオーガニック食品ならば、体にもやさしいはず」と有機食品を好んで買うようになっていった。

しかし、いざ現実となると「オーガニックがいいのはわかるが、わざわざ自然食品店に行くのはめんどうだし、どうしても近くのスーパーで、値段の安い食品を買ってしまう。オーガニックかどうかは二の次。まずは値段の安さ」というのが消費者の本音。オーガニックが伸びているとはいえ、年間の食品総売り上げ4600億ドルのうち、わずか数%しか占めていないのは、そこに理由があるといえるだろう。

最近の傾向~オンライン販売が盛んに

これまで、スーパーで見かける有機食品といえば、ほどんどが野菜か果物、牛乳、穀類だった。それが、昨年ぐらいから少し変化が起きている。冷凍食品、飲料水、アイスクリーム、フローズンヨーグルト、クッキーなどのお菓子、調味料の類にも有機食品がお目見えした。いずれも2001年の売れ筋として大きく注目されている。とはいえ、食品カテゴリー別に見ると、一番売れているのは野菜やくだもの。全体の約42%を占めているだけあって「有機食品の王様」とよばれるゆえんである。

最近の傾向といえば、インターネットを利用した有機食品のオンライン販売も盛んになってきている。ナチュラル・マーケティング・インスティチュートによると、有機食品も含めた自然食品全体のオンライン販売は2000年、前年比136%増を記録。オーガニックだけでみると111%増だった。インターネットでの生鮮食品販売は、決して容易ではない。しかし、テクノロジーの開発および創意工夫、また消費者のオンラインショッピングへの信頼感の高まりが、量販店につぐ市場の可能性を生み出した。オンラインで、レストランと有機栽培農家を結ぶ、バーチャル・ファーマーズマーケットも人気を呼んでいる。

遺伝子組み換え食品市況~米国でGM嫌いが進行

悪玉の評判が悪ければ悪いほど、ヒーローの株があがる。これはまさに、いまの有機食品と遺伝子組み換え(GM)食品の関係だ。ヒーローはもちろん環境にやさしいといわれる有機食品で、悪玉は安全面で問題視されているGM食品。昨年、世間を騒がせた遺伝子組み換えトウモロコシのアレルギー問題も消費者のGM不信に拍車をかけた。大手自然食品チェーンのホール・フーズ・マーケット、ワイルド・オーツ・マーケットは、自社ブランドすべての「100%GMフリー」を宣言したほど。どこまで行くのか米国のGM嫌い。現状を報告する。

食品・医薬品局(FDA)は先月、食品会社に対し、新商品として遺伝子組換え食品を発売する際、店頭に並ぶ120日前にFDAへ通知することを義務付けるというガイドライン案を発表した。ガイドライン案に、GMの表示義務がなかったことで、消費者団体の中からは不満の声があがっている。

USDAによると、昨年、GMトウモロコシ作付け面積が激減したほか、GM大豆でも若干の減少がみられた。GMトウモロコシは昨年、トウモロコシ総収穫のうち20%と、前年の33%を大きく下回ったほか、GM大豆は、57%から54%に減少。「2000年までに80%」と豪語したモンサントの予想は大きくはずれた。国内のGMバッシングに加え、GMのラベル表示を義務づけているヨーロッパ、アジア市場からも敬遠されていることが、農家のGM離れ最大の理由。GM作物を作っている農地は2000年、前年比20・4%減と大幅に縮小されている。

一方、GMコットン作付け面積は相変らず伸びている。2000年のGMコットン収穫は推定で総収穫の61%、作付け面積は950エーカーと、前年の55%、820エーカーを上回った。ヨーロッパですでに勢いを増しているGMコットン反対運動はまだアメリカには飛び火していない。しかし、綿実油がサラダドレッシング、スナックなどに広く使われていることから、GMコットン離れも時間の問題かもしれない。

GM食品、消費者サイドに立った「栄養強化」技術でイメージ転換図る

GM普及の失敗は、「虫除け」、「収穫増」と生産者側の恩恵ばかりを優先したからという見方が強まっている。そこで、なんとか、消費者へのメリットを増やし、受け入れてもらえるように業界は今、軌道修正をしている最中だ。消費者サイドに立った新GM商品をいつくか紹介しよう。いずれも2、3年すれば店頭にお目見えする予定。

・「ゴールデンライス」 遺伝子組換えコメ。ベーター・カロチン、Carotenoidsを豊富に含み、視覚障害の原因とされるビタミンA欠乏に効果がある。

・アラバマ州の大学では、ピーナッツアレルギーの元といわれるプロテインの除去を試みている。

・抗酸化作用のあるLycopeneを補強したトマト。がんや心臓病の予防への効果を期待。

・カフェインフリーの紅茶の葉