米国・代替医療への道 2001

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米国食品業界で進む一般食品の機能性食品化
米国食品業界で一つの異変がおきている。健康志向の高まりで、一般食品の機能性食品化に拍車がかかっている。空腹を満たすだけなく、健康にもひと役買う―そんな食品が次々と発売されている。食品とニュートラスーティカルを掛け合わせた機能性食品の近況を報告する。

  2000年新発売の食品および飲料水の14%が機能性食品

米国の食品市場は4740億ドル。そのうち機能性食品の占める割合はわずか4%ほどである。ところが、新商品だけみると、少し様子が変わる。
ニューヨークに拠点を置く、新商品開発のリサーチ会社「マーケティング・インテリジェンス・サービス」によると、昨年に新発売された食品およびドリンクの14%がビタミンやミネラルなどを補強した機能性食品であった。96年の5.1%から大幅にアップしている。

こうした、一般食品の機能性食品化の傾向は今後ますます進むと予想する食品業界関係者は多い。ケロッグ、クエーカーオーツ、コカコーラといった大手食品および飲料メーカーはヒットを狙い、やっきになっているという。

手軽に食べられる栄養添加スナックバーで大手参入

機能性食品のパイオニアといえばケロッグ社が知られる。1999年にコレステロール値を下げる機能性食品「アンサンブル」を開発した。しかし、試験的に売り出してはみたものの売れ行きはさっぱり。製造も販売もむずかしいと断念した経験もある。そうした失敗をバネに開発した最新商品が、ビタミン、カルシウム、プロテインを補強したスナックバー「Krave」であった。

チョコレート味をべースにした各種フレーバーを取り揃え、現在、ミシガン州とその周辺の州に限り、試験販売を行っているが、売り上げは好調だ。一日に必要な栄養分が簡単に摂れるうえ、どこでも手軽に食べられる点が、忙しく飛び回る現代人のニーズに合い、人気の秘訣だ。全米での展開も時間の問題といえる。

女性をターゲットにした商品も狙いどころ。この秋の新商品で注目されているのが、クエーカー・オーツの「クエカー・オートミール・ニュートリション・フォー・ウーマン」。女性の身体に必要な栄養分を補強した温めて食べるタイプのシリアルで、骨を丈夫にするビタミンA、Dや、心臓疾患を予防するといわれる可溶性ファイバーなど含まれている。フレーバーは、バニラ・シナモンとゴールデンブラウンシュガー。

コーラなど大手飲料メーカー、健康イメージを前面に打ち出す

飲料水分野でも激戦が展開されている。ゲーターレードは、「フィットネス」を謳ったウォーターに全力投球中。コカコーラはプロクター・アンド・ギャンブルと手を組んで、コーラからのイメージアップを狙った「背が高く、強くて、頭のいい子供に」を謳った子供向けドリンク「NutriStar」をはじめ新ブランドの開発に力を入れている。デトロイトニュース紙によると、ビールメーカーのアンハイザー・ブッシュ社まで乗り出し、ハーブのガラナ、一日に必要な摂取量のビタミンB6、B12、Cを含有したエネルギードリンクに取り組んでいるという。

オーガニックと機能性食品がドッキング

ニュートリション・ビジネスジャーナル誌によると、昨年のオーガニック食品マーケット市場は、前年比19%増の58億ドル。機能性食品については、今後4年間の年間成長率が8-9%になるものと予想している。食品業界にとってオーガニックと機能性食品は非常に魅力的な市場だ。それならば二つをドッキングさせてはどうか―そんな動きも一方で起きている。

オーガニックのドライ・シリアル市場は昨年、前年の2億8200万ドル(総シリアル市場の2・9%)を上回る3億4400万ドルを記録した。オーガーニックとニュートラスーティカルを組み合わせた例をいくつか紹介しよう。

オーガニックシリアルの大手メーカー「ネーチャーズ・パス・フーズ社」一年前に、「オーガニック・オプティマム・パワー・ブレックファースト・シリアル」を発売。遺伝子組換えは一切使わずすべてオーガニックで、大豆、ファイバー、プロテイン、オメガ3、葉酸、ビタミンA、C、B12、カルシウム、鉄分などが補強されている。
ゴールデン・テンプル社もエキナセア、ジンセン、グリーンティー、ギンコといったハーブ入りのオーガニック・シリアルを販売。いずれも昨年、2桁の売り上げ伸び率を示している。

プロテイン、オメガ3など強化のオーガニックブレッド登場

またオーガニック・ブレッドメーカーの老舗「フレンチ・メドー・ベーカリー」のヒット商品は「ウーマンズ・ブレッド」。1スライス当たり、プロテイン7グラム、ファイバー5グラム、大豆アイソフラボーン40グラムを含んだブレッドで、普通のブレッドに比べ値段は少々はるものの、大手スーパーで飛ぶように売れているという。

また、同社はつい最近、「メンズ・ブレッド」も新発売。1スライス当たり、プロテイン6-8グラム、ファイバー6-8グラム、低炭水化物、高オメガ3および6脂肪酸などを含み、無イースト菌で遺伝子組み換え食品は一切使っていないオーガニックのブレッドを、男性消費者を対象に、「バイタリティーと耐久力をつける」をキャッチフレーズに売り出した。

ハーブ添加には厳しい指摘も

カラダにいいのはもちろん、ほとんどなんの規制もないことからマーケティングしやすいことが機能性食品の大きなアドバンテージといえるだろう。しかし、ハーブ添加で、逆に効きすぎることから問題視された商品も幾つかある。そうした商品をいくつか紹介する。

・スナップルの「ムーン・ティー・ドリンク」ドリンクの中に入っているハーブのカバカバに問題あり。飲酒運転で捕まったドライバーのうち、飲酒ではなくカバカバの入ったドリンクを飲んだことが判明。

・ベン・アンド・ジェリーの「トロピック・オブ・マンゴ・スムージー」ドリンク中のエキナセア配合が問題になった。ぜんそくなどのアレルギー反応を起す危険があるほか、医薬品との併用による副作用の恐れが指摘された。

・アリゾナの「Rx Memory Elixer」ドリンクの中のギンコ(イチョウ葉)が問題になった。ギンコは血流を高めることから、抗凝血剤との併用による副作用が問題視された。
 
いずれも問題になったのがハーブで、専門家の中からは「ハーブはあくまで薬であって、ドリンク、ブレックファーストシリアル、スナックなどに入れるものではない」という厳しい指摘もある。

急成長株はスナックバーなどの菓子類

リサーチ会社「データモニター」によると、機能性食品も含めた、米国における昨年のニュートラスーティカル市場は304億4100万ドル。広い意味での食品市場の急成長株で、2005年には434億9500万ドルに達すると予想される。1996年から2001年にかけての年間成長率は16・1%で、最高を記録した2000年はなんと44・4%だった。

ニュートラスーティカルのうち機能性食品の稼ぎ頭は、ベーカリーとシリアルで、リサーチ会社「ミンテル・コンシューマー・インテリジェンス」は、今年の売り上げ予想を7億2800万ドルと打ち出している。さらに売り上げの伸び率でみると、急成長株はスナックバーなどの菓子類で、今年の売り上げ予想は1億560万ドル。

データーモニターの統計資料は、「食品会社とファーマスティカル会社が手を結ぶと大きな収穫がある」と指摘しているほか、科学的な裏付けの重要性も強調している。