米国・代替医療への道 2000
ハーブ、医薬品との相互作用 / 米国がん研究協会、「食」の新プレート / 遺伝子組換え食品、安全性論争再燃 / 入り乱れるマスコミ報道 / バイオフィードバック療法 / 祈りによる療法、科学的立証へ / 米国ダイエット産業の最新状況 / 米国で高まる日本食の評価 / 栄養補助食品、有効性の解明に本腰 / 代替医療で期待される栄養成分 / 代替医療、浮上してきた問題点 / 遺伝子組み換え食品、機能性食品へ / 抗酸化ビタミンの推奨摂取量を改定 / 問題視されているハーブ(薬草) / バイアグラの代替ハーブ / HIVと代替医療 / 感染症と代替医療療 / 糖尿病と代替医療 / アレルギーと代替医療ここ数年、米国で代替医療の人気が高まる中、ハーブサプリメントによる栄養療法が注目され、急速に売上を伸ばしている。しかしながら、一方でハーブの副作用や医薬品との相互作用などの問題点も浮上し、安全性の再検証やエビデンス(医学的な根拠)の立証が医療関係者等らの間で叫ばれつつある。米国におけるハーブ産業の近況と関連団体の動向を報告する。
米国メディアをにぎわす問題ハーブ、エフェドラ
ここ数年、米国でハーブ産業が急成長を遂げているが、人気ばかりが先行し、安全性や有効性に関する研究や消費者への対応・指導が後回しになる傾向が問題視されている。有効性と同時に危険性が注目されているハーブのひとつにエフェドラがあり、最近メディアをにぎわせている。
エフェドラは米国のハーブ産業の中でも人気が高く、余分な体重を落としエネルギーを促進するということから特にダイエット・ハーブに配合されている。だが、心臓発作や失神など稀ではあるが深刻な状態を呼び起こす可能性が報告され、FDAは1997年、エフェドラ使用に関する規制を提案した。
副作用事例の査定が困難
こうした政府の動きに対し、エフェドラの製造会社は、2000年12月、「エフェドラ使用を控えるべき」と勧告するFDAに対し、「適正な使用法に従っていれば、エフェドラは安全」との報告をまとめ、FDAに提出。この中で、「FDAに報告された副作用事例は査定するのが困難。事例報告の4分の3に近い、情報が不完全。「1日100mg以上摂取してはいけない」とする注意事項を無視してそれ以上飲んだケースもある」と反論している。エフェドラ使用に関してはかなり前から副作用が問題になっているが、安全性を支持する企業側とのにらみ合いが依然続いている。
医薬品との相互作用が指摘されているハーブ
こうしたエフェドラに代表されるようなハーブの副作用についてハーブ専門家の中には、「ハーブは基本的に安全であり副作用はないものだが、中にはその使用法を間違えると重大な症状を引き起こすものもある。そのため、使用に関しては必ず医療関係者の意見を聞くことが大切」と忠告する者もいる。
例えば、人気ハーブのエキナセアやタンポポの成分の中には、乾癬悪化につながる作用を行うものがあることから、同疾患の患者の使用は禁止されている。また、朝鮮人参は血圧を上げる作用もあることから、高血圧症患者あるいは心臓病患者の使用も薦められない。
イチョウ葉、ジンジャー、ガーリック、ナツシロギクは血液を薄める作用があるため、外科手術や歯の治療を受ける前には使用しないことが指摘されている。また血液を薄めるアスピリンやイブプロフェンやwafarinとの併用も薦められない。昨年記憶に新しいところでは、人気沸騰のセントジョンズ・ワートが、他の抗鬱剤との併用でセロトニン濃度が急上昇する恐れがあることから、一部の医薬品との併用が警告された。米国では精神の鎮静作用のあるハーブが人気だが、そうしたカバカバやバレリアンなどのハーブも別の鎮静剤との併用は薦められないとされている。
米消費者団体、75品目以上の栄養強化食品の販売中止を申請
カルシウム入りのオレンジジュース、葉酸が強化されたシリアルなど、売上高はうなぎのぼりで、2010年までには490億ドルが見込まれているが、これについても論議が持ち上がっている。消費者擁護団体は2000年7月、こうした食品に加えられるハーブや栄養素はまだ研究不十分であり、その有効性や安全性にはっきりとした答えが出ていないため、健康に良いどころか反対に有害となる恐れがある」と主張、FDAに対してハーブなどを含む75品目以上の製品販売を中止するよう申請した。
同団体は「スープに入れられるセントジョンズ・ワート、お茶に入るカバカバなどのハーブが、他の薬剤と一緒になったとき、どういう作用をするか、また何杯も食べた場合にどうなるかなど研究がされていない」とし、より厳しい規制を求めていく姿勢を見せている。
米国:ハーブ研究関連団体
ハーブ産業の急成長に伴って、米国でハーブの研究、消費者への指導を使命にした団体・機関の数も増大してきた。幾つかを紹介する。
□ Herb Research Foundation(http://www.herbs.org/)=HRF
1983年、会長でもあるRobert S. McCalebが創立。以来、ハーブ全般に関して、消費者、医療関係者の教育・指導にあたってきた。「ボタニカル・ライブラリー」には、数千種以上のハーブに関する25万件以上の研究資料を保存、紹介している。McCaleb氏は、Celestial Seasoningsの研究主任を13年間務めるなど、ハーブ関連業界では20年以上のキャリアを持つ。American Herbal Products Associationなどの理事やクリントン大統領によるDietary Supplement Labelsの諮問委員会のメンバーにも選ばれている。
HRFとしては、まずハーブの有効性、安全性に関する研究を促進しサポートする。それによって、食用並びに薬用としてのハーブの科学的根拠を確立する。また、薬草やハーブ製品の安全かつ妥当な使用に関する情報を、消費者や医療専門家に広める。ハーブの使用によって、予防医学を維持し、医療費の削減を促進させる――などの使命が主になっている。
アフリカのハーブ栽培業者並びに加工業者とヨーロッパ、アメリカの卸売業者が一堂に会する円卓会議が2000年4月4日から6日まで南アフリカのケープタウンで開かれ、HRFが共同主催者を務めた。同会議には、フランス、カメルーンなど16カ国からCelestial Seasonings、Tom’s of Marine、KHL Flavors、Frontier Natural Products Cooperative、 Botanicals Internationalなど自然素材製品を扱う業者140社以上が参加、アフリカの生産者の権利保護や国際市場の概要、植物系製品貿易と規制などについての意見交換が行われた。
□ Herb Society of America(http://www.herbsociety.org/)=HSA
同ソサエティは、ハーブの使用並びに知識を高める目的で1933年に創立された。ハーブ栽培並びに過去および未来のハーブに関する全般の研究に関わる。また、全世界のハーブ環境保護に努め、人類の健康維持にも関与している。そうしたことから、これまでもさらに今後もハーブ研究に多大の寄付を行う。また、HASでは2001年5月24日~27日にEducational Conferenceとメンバー・ミーティングの開催を予定。アメリカ先住民が使用したハーブの歴史やガーデニング、民間療法の歴史などについて発表を行う。
□ American Botanical Council(http://www.herbalgram.org)=ABC
非営利教育機関として、1988年Mark Blumenthalが創立。ハーブの薬効、安全性を広く公共に知らせることを目的としている。最近の主だった活動としては、まず1988年9月、ドイツのコミッションEが発表した「The Complete German Commission EMonograph-Therapeutic Guide to Herbal Medicine」英語版を完成した。2000年7月、ABCは「ハーブ製品には動物性組織が配合されている」とするメディアリポートに対し、「誤った情報を提供するもの」として反論を発表した。2000年9月、ABCは、総勢800人を調べたガーリック研究13件の分析で、コレステロールを低下させ動脈のプラーク蓄積を予防するという結論を支持する発表を行っている。