米国・代替医療への道 1997

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米国代替医療の現状<アレクサンダー>療法

  体の不自然が動きがさまざまな疾病の誘因に

肩にみょうに力を入れすぎたり、背筋がいやにまがっていたり間違った身体の使い方がついつい習慣化してしまっている人は多い。そんな不自然な体の動かし方が、じつは肩凝りや腰痛など身体的な疾患をはじめ、精神的にはストレスなどの引き金になっていることがある。

アレクサンダー・テクニックは、習慣化した過った身体の使い方を正し、身体に負担にならない自然な動きを身につけるというもの。ただし病気を直すといったたぐいの治療法ではない。健康の維持・増進を目指す、今米国で重要視されつつあるプリベンティブ(予防)ケアーの分野などで関心が高まっている。

ロサンゼルスでアレクサンダー・テクニックを教えている日本人の女性、土屋美佐子さんの教室を訪ね、実際に体験してみた。土屋さんが体の関節に手を当てて、力を抜いた状態での自然な体の動かし方を指導する。一度ぐらいでは「なるほど、こうして動かせばどこにも負担がかからない」と。意識的にどうしたら自然に正しく体を動かせるのかを身につけるのは無理だ。個人差はあるがだいたいレッスンを10回から20回ぐらい受ければ分かってくるという。

今回はじめて体験したが、体に手を添えてもらいながら言われるままに力を抜いて歩いたり、首を動かしてみると、普段どれだけ余分な力が入っていたかがすぐわかった。背筋を伸ばす時も、必要以上にそっくり返っていたことが判明。そういう不自然な体の使い方は、ボディそのものだけでなく、内臓にも大きな負担をかけているそうだ。

ポール・マッカートニーらも絶賛、パフォーマーの間で浸透

腰痛、首や肩の凝り、CARPALTUNNEL SYNOROMEなど、体のどこかに痛みを感じている人をはじめ、歌手、スポーツ選手、俳優、ダンサーがパフォーマンスを上達する目的でアレクサンダー・テクニックを利用している。

体に負担をか けない動きを身につけることによって、もっと通る声が出るようになったり、ドラマーが不自然なたたき方を続けているうちに腱鞘炎になってしまうのを防いだりできるという。そんなことからか、「これはいい」と絶賛している人たちの中には、俳優のポール・ニューマン、メリル・ストリープ、ロビン・ウイリアムス、ミュージシャンのポール・マッカートニー、スティングなどの顔が見える。ニューヨークのジュリアード・スクール・オブ・パフォーミング・アートがアレクサンダー・テクニックを教えていることからも、パフォーマーの間でかなり浸透していることがうかがえる。

リハビリ、社会復帰プログラムなどにも利用

身体の使い方を正すといっても決してボディーワークだけではない。体の動きと切っても切れないのが脳。すべての動きは脳からのメッセージで動いている。習慣化されてしまった間違いを正すのを脳が抑制しているから自然な動きができない。自然な動きをするには、脳から正しいメッセージを送り込むテクニックも学ぶ必要があるという。体と頭を一体化させる方法を身につけるわけだ。心身の統合をはかることから、麻薬中毒患者のリハビリプログラムや刑務所で囚人の社会復帰プログラムなどにも利用されているという。

アレクサンダー・テクニックは、20世紀はじめに、オーストラリア人のシェークスピア俳優、フレデリック・M・アレクサンダー(1869―1955)によって開発された。声を失い、医学的に見放された彼は、三面鏡を使って自分の頭の位置が不自然であることに気付く。どこにも負担のかからない自然な頭の置き方を見つけ出したことで、もとどおりに声が出るようになったという。テクニックはイギリス経由で米国に渡った。現在、北米で最大といわれるプロの団体は、1987年に創立した北米アレクサンダー・テクニック教師協会。規定の三年間の教育を受けた教師500人以上が登録し、最新情報などの交換を行っているという。