米国・代替医療への道 1997
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オーガニック(有機)食品――農薬や化学肥料を使わない農産物とその加工食品の売上げが米国で急速に伸びている。これまで、農家直送で売られる青空マーケットか、ホールフーズマーケットのような健康食品店に並んでいたのが、普通のスーパーマーケットでも堂々と商品の仲間入りした。消費者の健康・安全性志向、そして環境保護に対する関心への高まりに乗って、売り場は着実に広がっている。
全米の食品および飲料水の年間消費量は約4千億ドル。そのうち、オーガニック食品の占める割合は約2%とまだまだ少ない。しかし、売り上げの伸び率でみると、毎年20%という急激な上昇カーブを描いている。スーパーをのぞいてみると、有機栽培したブロッコリーやにんじんなどの野菜はもちろん、有機農産物を使った、ピザソース、 冷凍食品、シリアル、ミルク、アイスクリーム、クッキー、マスタード、チョコレートとバラエティーに富む。オーガニック人気に目をつけたハインツをはじめ大手食品会社が続々と参入しはじめてきているという。
一般スーパーでも有機農産物が小売りの10%を占めるほどに
有機農産物市場概要によれば、1995年のオーガニック食品の売上げは28億ドル。これは、自然食品の小売り総売上げ61億ドルの約3分の1にあたる。特に急速な伸びを示しているのはオーガニック加工食品。例えば、冷凍オーガニック食品に1995年の売上げは9千8百万ドル、前年比36%の大幅アップを記録した。健康食品店を中心に出回っているが、最近、一般スーパーマーケットでも小売りの約10%を占めているという。
消費者は環境保護と健康を理由に、オーガニック食品をより多く購入するわけだが、代わりに、普通の食品に比べて50%から100%ぐらいの支出増を迫られている。あるカリフォルニア州の大手有機農食品製造者は、「だから、市場流通がいまひとつ低い」と話す。化学肥料や農薬を使うより栽培に手間ひまかかる分、価格にはね返る。
来年中に最終的な全米の有機基準が発表予定
連邦農業局(USDA)の92年報告書によれば、全米の農地の0・1%が有機農業に利用され、農家の0・2%がきちんと保証された有機農産物を供給している。流通システムを合理化していくことで、価格を少しは押さえられても、どうしても高くついてしまうのはやむをえないのが現状だ。それでも、有機農食品の市場流通が増大しつつあるのは、化学肥料や農薬への不安がぬぐいきれないほど深まっているからといえる。
しかし、「有機栽培はイコール農薬や化学肥料フリーではない」という指摘もある。米国も日本と同じように、有機栽培をうたうには「3年以上化学合成農薬を使わない」などのガイドラインが設けられているが、全米基準はまだ未完成、部分的には実施されているものの、今のところは、各州それぞれの基準にたよっている。基準なしという州もあるので、オーガニックの定義や品質面でばらつきがあるという。
全米最大規模といわれる非営利のオーガニック生産者団体「カリフォルニア・サーティファイド・オーガニック・ファーマーズ」は、商品の安全性いついて「保証オーガニックのラベルの貼られている食料品ならば、どの州で作られたものでも安心」と説明する。全米オーガニック基準委員会(NOSB)は、来年中にも最終的な全米基準を発表する予定。
急伸するオーガニック市場②
人に優しく、地球にも優しいというのがオーガニックス関連のうたい文句。環境と環境保護の名の下に、同業界は急速に勢力を伸ばしてきた。代表は有機食品。それに追随する形で、オレンジを使った家庭用洗剤、化学薬品を使わない化粧品、肥料など食品以外の製品市場にもオーガニックの文字は見られるようになった。
アパレル関連にオーガニックに触手を伸ばし始めた業界の一つ。ウエア素材で大きな割合を占めるコットンのオーガニック系に関心を示している。同業界の大手、「Espri(エスプリ)」の小売部門取締役リサ・エングラー氏は、環境保護製品の今年の売り上げ高を600万ドルと見積もっている。最近、同社は米国内の顧客50万人に対して28ページに渡る関連商品のカタログを送付した。また、「バニティーフェア」の一部門「O Wear」も昨年秋から商品にオーガニック・コットンを取り入れはじめ、国内の有名デパートでの販売を開始している。同社は今年度末までの売り上げを1千万ドルと予測。さらに、スポーツ・ウエア最大手の「Gap」もオーガニック製品開発に乗り出す事をこのほど発表したばかり。この他にも、オーガニック・コットンに関心を示す大手には、「Seventh Generation」、「Ecosport」などの名前が挙がっている。
「いずれ、すべてがオーガニックになる」と確信する業者
大手業者が示すほどの関心を持って消費者の方はオーガニック・コットンを見ているのだろうか。大体のところ合成繊維ではなく100%の表示があれば、「ナチュラル」と受け止め、安心するのが現状。だが、素材の綿栽培に化学薬品の除草剤、枯葉剤などが使われていることに消費者はそれほど関心を持たないと、オーガニック新興業者は語る。そうしたことから、Espri、O Wear、Ecosportはオーガック・コットン情報を満載したカタログを発行、消費者の啓蒙に務める。Espriのダン・イモフ氏は「少しづつだが、消費者は自分の着ているものの素材に関心を示すようになる日が来ると信じる。それが、5年先か、25年先になるかはわからないが」と話す。
アパレル産業大手がオーガニック・コットン商品に着手したとはいえ、その企業全体の売り上げ総数から見るとまだ微々たるもの。例えば、O Wearはオーガニック・ラインの売り上げを千ドルと見積もってはいるが、親会社「バニティーフェア」の一般商品総売り上げ26億ドル(91年調べ)から見れば主要ラインとは言い難い。だが、O Wear社は「今後、綿を栽培し、織物に加工、さらに染色して販売するという一貫した産業システムを開発していく」という大きな構想をほのめかしている。現在多くのコットン製品には、加工業者がその過程で防腐剤、消毒剤のホルムアルデヒドや、布地の縮みなどを防ぐための化学薬品を使用せざるをえない。「その過程を、研究開発によって、環境保護を主体とした新しい技術へと進化させていく」姿勢を示した。
小売り業者、製造業者はオーガニック・コットン製品開発の原点として、原料綿を問題にしている。原綿がオーガニックであるという国際認定基準が必要であるという点で、どの業者も一致する。イモフ氏によると、ヨーロッパの消費者グループは布地の検査を行い、除草剤やその他の化学薬品が残留していないかを調べるという。その商品に偽りがあった場合、責任を問われるのは綿生産者でも加工業者でもない。小売り業者が全面的に矢面に立つ事になる。それが、中小アパレル企業などがこの新ライン開発参画を尻込みする理由だ。
各地でオーガニック製品認定機関設立の動き
現在、オーガニック・コットンの認定に関しては、さまざまな種類があるといわれる。カリフォルニア州では1990年、州内でオーガニックとして栽培、あるいは販売する製品の基準を定めた「Organic Food Act」を成立させた。また93年、カリフォルニア州食品農業局(CDFA)は、同法に基づきオーガニック・コットン栽培業者の登録を始めた。CDFAの推測によると、同局に登録された業者の数はまだ6件にも満たないという。その他、カリフォルニア認定有機農家(CCOF)のような私設機関も認定登録を与えているが、現在のところ4件のみ。
さらに、最近、の動きとして、「ここのコットンは最高級」と評判の高いカリフォルニア州サン・フォワンキンバレーの農家を中心に「オーガニック・コットン評議会」が設立されようとしている。「オーガニック・コットンの認定は、小売業者、加工業者だけの問題ではなく、綿生産者も深く関わりのある事。生産者の横のつながりを強くし、経済的技術的にも支援し合う団体が必要。そのつながりをさらに、小売り業者や加工業者、研究者へと広げオーガニック・コットンに関わる全てのものが一つに集まれる団体の存在が必須」と、設立に力を入れるCalifornia Institute of Rural Studies(CIRS)のウィル・アレン氏は話している。