米国・代替医療への道 1997

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米国で流行る奇妙な病気・慢性疲労症候群

  1988年一躍有名に、米国人口の6%ともいわれる

「慢性疲労症候群は幻の病気か」――1988年、米疾病予防センター(CDC)が初めて認知、マスコミがこぞって取り上げその名は一躍有名にはなったが、依然として原因、治療法とも不可解のまま現在に至っている。CFSの罹患率は10万人に7人あるいは200人とも、さらには米国人口の6%以上とも言われ、はっきりしない状態だ。

症状に一貫性がない、個人差が大きいといったことがいわれ、症状として、激しい疲労感、思考力や集中力、記憶力の低下などが挙げられる。一時期、流行り病いのように、原因不明で上記の症状を表すものは何でもかんでもCFSと診断されることがあった。中にはずさんなものもあり、安易な診断に非難が集中した。CDCはそのころ、CFSの診断規準として、記憶力・集中力の低下、のどの痛み、関節・筋肉の痛み、頭痛、睡眠障害など11項目を定め、このうち最低8項目(1994年12月には4項目に改正)が①半年以上続く②他の疾病と診断されないなどの条件にあてはまれば、同症候群の疑いありとした。

「複数のウイルスが原因」:アンソニー・コマノフ博士(ハーバード大学)

だが、CFSの定義に懐疑的見方をする専門家は、記憶力の減退や疲れといった症状は鬱病の範疇に入るものと主張、CDCの発表した診断基準に非を唱える。これに対して、鬱病とCFSの違いには①のどの痛みやリンパ節の腫れは鬱病には見られない②鬱病患者は運動の後大抵気分が良くなるが、CFS患者は気分は悪くなり24時間以上その状態が続く③鬱病患者は何かを記憶するとき、ちょっとした邪魔が入っても対処できるが、CFS患者は邪魔が入った後、立ち直るのにかなりの力を要する――などを挙げて対抗している。

CFSに関する論議は現在も続く。今月16日にシカゴで開かれたAmerican Psychological Association年次総会でも「CFSは精神的疾病か、それとも身体的疾病か」で意見が戦わされた。CFSが身体的疾病を主張するハーバード大学アンソニー・コマロフ博士は「この疾病の原因と思われる生物学的異常を示す科学的根拠は豊富にある。エプスタイン・バー・ウィルスやヘルペス6といったウィルスによる感染症であるという証明もできる。ただし、関わっているのは複数のウィルスと思われる」と主張。さらに、たとえ感染が存在するという直接的証拠が挙げられなくても、ヒトの体の組織が菌と戦う体制に移行することは明らか、とも付け加えた。

100人以上のCFS患者がNADHで回復

一方の精神病主張派は、「免疫低下などの生物学的変化は、家族を失い鬱状態に陥った患者にも見られる。また、CFS患者には、敵意や悲観などの人格変形が一貫して現われる」などと反論。どちらも納得させる結論は出ない。ただ、現在CFS患者に作用するのは唯一「認知行動療法」だけという点ではどちらも一致している。これは、症状とうまく付き合う方法や体の機能を正常レベルまで回復する方法などを患者に教えていこうとするもの。この療法は、狼瘡や多発硬化症などの疾病にもかなり使われているという。

これとは別に、CFSに効果を及ぼすとして、米食品医薬品局(FDA)のテスト認可を受けジョージタウン大学の研究者らが研究を繰り返している自然物質がある。ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の還元型、補酵素NADHがそれ。植物、フランス・カイガンショウの樹皮から抽出、100%の自然物。脳や筋肉細胞で欠乏したエネルギーを補給する働きを示す。ヨーロッパではすでに10年以上前からCFSへの投与研究が続いており、最近では100人以上のCFS患者がNADH錠剤摂取で症状の回復が報告されている。