米国・代替医療への道 1997

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人気のハーブ食品、摂取には注意も

  化学薬品への不信からハーブに関心集まる

薬の副作用、原因の分からない体の不調などに悩むアメリカ人が増えている。西洋医では解決されない問題の答えを、別の治療法に求める割合も増加している。ある調査によると、3人に1人が鍼、カイロプラクター、薬草医などに通った経験があるという。特に一般でも、化学薬品への懐疑的見方が強まり、ハーブを主体にした商品の需要も高まっている。国内の薬局の棚にもそうした商品がずらりと並ぶ。

この傾向を受け、最近ではテキサス薬剤財団(TPF)と米植物評議会(ABC)が1995年春から、全米の薬局関係者へ向け、ハーブの歴史や現在の規制など、ハーブ一般についての指導を始めた。このプログラムには現在65人が参加している。

ジンセン(朝鮮人参)市場が急伸、注目浴びるアロエ、イチョウ

今では数多く商品として棚に並んでいるハーブだが、なかでも急速に売り上げを伸ばし、また健康雑誌にも取り上げられているのが「Ginseng(ジンセン)朝鮮人参」。1992年には米国内でも1、080億ドルを売り上げた。分析によると、根には多くのビタミン、ミネラルが含まれる。その薬効は、体力を回復し弱った活力を元に戻す。そのため老化防止に服用される。また、中国では古くから心臓病、ガン予防に用いられる。一般には安全とされているが、高血圧や精神症から派生する頭痛、不眠症、喘息などの症状を持つ患者、また妊婦や乳幼児には勧めていない。

その他、今注目を浴びている主なハーブは次の通り――

▽アロエ(Aloe)――ユリ科の植物で葉が薬用。葉のゼリー状物質に含まれる多糖類、酵素、栄養素などがバクテリアやかびに作用し坑菌効果をあげる。重大な副作用は指摘されていないが、時に下剤と同様の働きもするので、妊娠中は避けたほうが無難。

▽ギンコ(Ginkgo)――イチョウの葉に含まれるGinkgolide(ギンコライド)とフラブノイドが動脈の血液循環、毛細毛管の血液の流れをスムーズにし脳の血液量を増やす。

▽ブラック・コホッシュ(Black Cohosh)――生理不順や生理痛に作用。また、ホルモンのバランスを取り、女性の更年期障害の各症状を和らげる。

▽ジンジャー(Ginger)――下熱、胃のむかつきを抑えるものとして、古くから使われている。また、血液中のコレステロールを低下させる働きも。

▽サイリウム(Psyllium)――オオバコ種子。便秘、下痢、痔などに伴う症状を緩和。また、血液中のコレステロールや血糖値の低下を助ける。

▽シシリン(Thisilyn)――アザミ樹液のエキス。肝臓に害を及ぼす物質から体を守る。――などなど。

エフェドラなど、未知の部分多い危険なハーブも

自然の贈り物としてハーブへの関心が高まる中、一つ一つの分析研究は当然行われるが、分からない部分の方が多いというのが現状。1996年3月、20歳の大学生がエフェドラ配合のハーブを服用、心臓発作を起こし死亡したことが伝えられた。時期を同じくして、米食品医薬品局(FDA)にエフェドラ関連事故が他に14件ほど報告されている。(この数字はあまり正確ではないらしい。中にはナイフの自傷事故も含まれていたという)このため、ハーブに関するあいまいな情報が乱れ飛ぶ。

ハーブ調査財団のロブ・マカレス会長は、危険あるいは避けたほうがよいハーブをある雑誌でまとめている。それによると――

現在米国内で販売されているハーブは1、800種類以上。市販のもので事故が起こるケースはまれ。ただ、その取り扱いや服用で注意を要するものも確かにある。それを3グループに分けた。

(1)避けたほうが無難なもの

Comfrey(ヒレハリソウ)Chaparral(チャパラル) Coltsfoot(カナダサイシン) Petasites Yohimbe(ヨヒンベ)】comfrey petasites coltsfootは肝臓障害を起こす毒素を含むことが分かっている。ドイツやカナダでは使用禁止項目に入っている。米国ではアメリカン・ハーバル・プロダクツ・アソシエーション(AHPA)がその安全性を確認していないため、使用を控えるよう勧告。1994年、肝臓障害を起こした数件のケースで、原因がchaparralとの疑いが発生。FDAが分析検査を行ったが、障害につながる毒素は発見できずに終わった。しかし、AHPAは肝臓に問題のある者へは特に警告している。また、yohimbeは催淫薬や筋肉形成剤の成分として配合されるが、過量に取ると麻痺を起こすの怖れがあるとして危険視されている。特に心臓病患者は使用を禁止する。

(2)使用の際注意を要するもの

Senna(センナ)Cascara sagrada(カスカラ)rhybarb(ライバーブ)などの刺激下剤やephedra(エフェドラ)】 

強く作用するハーブもあるため、その使用を誤ると障害を起こすものも多い。ephedraや下剤として配合されるものがその代表例。ephedraは適正な使用の下では、喘息や肺、鼻腔の鬱血治療に働く。米国でもその配合剤は三十年以上も一般の薬局で販売されてきた。ただ、時に活力剤やダイエットピルに配合されていることがある。これは感情を「ハイ」にすることが指摘されており、濫用に繋がる。服用の量は1日300mgを超えないこと。1回15-50mgに抑える。下剤として使用されるsenna cascara などはダイエット剤に配合される。やはり使用を間違えると脱水症状などを引き起こし、ひいては高血圧症や心臓発作の危険性も指摘される。

(3)研究が持続しているもの

Cat's claw (キャッツクロー)Wild yam(ワイルドヤム<やまいも> sarsparilla (サルサパリラ)goldenseal(ヒドラスチス)】これらはその安全性や作用について証明があまりされていないグループ。つまりまだ不明な部分が多いということ。cat's clawには免疫組織を強化する働きを認めた分析結果もある。また、wild yam sarsparillaなどは「自然ホルモン」として既に名は広く知られている。その危険性は特に指摘されていない。goldlen sealも市販の風邪薬に配合される。これを持続して使用する場合、8―10日間が限度。それ以上長くなると、ビタミンBの代謝を阻害する怖れがある。

大抵のハーブ製品は作用が緩慢で、副作用の心配はない   

植物が育つには様々な要素がある。季節、温度、土壌、その他色々…。ハーブの純度、有効性などもそうした要素に影響され、かなり変動的だ。ハーブ関連商品に配合されるハーブの分量を確定することは重要であり、同時にこの分野は不透明な部分が多いことから、難しくもある。例えば、商品化された「朝鮮人参」にはginsenosidesが5%と定められている。これは、テストを繰り返した結果出た数字。加工しない葉や根には1―7%含まれるという。製品なら、毎回決められた同じ量を取ることができる。こうしたことから、ハーブの「標準化」は重要性を持つ。

殆どのハーブは古くから加工されず、そのままの形で使われてきた。そのため、配合の量を決定する適正な分析資料が無いに等しい。さらにそのテスト工程でも製造元により違いがある。同じハーブ製品なのに、内容量などに差があるのはざらである。

「標準化」とは一定しているということで、内容が濃いという意味ではない。さらに「完全」でも「非常に効く」わけでもない。大抵のハーブ製品は、加工していない生、あるいは乾燥ハーブまるごとに含まれる成分より低めに配合されている。そのため、作用は緩慢か目には見えないものとなる。だが、副作用などに苦しめられることはまずない。