米国・代替医療への道 2004

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米国で人気のダイエット素材最新動向
肥満人口6人に1人、今や肥満解消が国の優先課題として挙げられるほどのアメリカ。 すでに、ダイエットは単なる流行りではなく日常生活の一部と化している。現在 サプリメントやプログラムを使用しているダイエッターは推定、7,000万人といわれ、 膨大な需要を後ろ盾にダイエット産業は巨大市場へと膨れ上がっている。ここ数年 ダイエット素材として人気のあったエフェドラが副作用死をもたらしたことで、 製造・販売が中止になるなど混乱を招いたが、依然根強いダイエッター達のニーズ に応えようと企業はポストエフェドラ探しに奔走している。米国で人気のダイエット 素材動向を報告する。

  ダイエット人口推定7,000万人、依然衰えぬニーズ

「ダイエット製品は特効薬ではない。アメリカ人の食生活自体を根本から見直す べき時だ」---ダイエットの専門家達は一様にこう叫ぶ。 最近、人気ダイエット製品や筋肉・エネルギー増強製品にごく当たり前のように 含まれていたエフェドラが、多くの副作用を引き起し、ついに製造・販売中止にまで 至ったことでさらにその声は強まりを増している。

とはいえ、ダイエット人口推定、7,000万人といわれるアメリカにおいて、依然 ダイエット食品のニーズは根強い。頭で食生活の改善の必要性を理解していても、 その補助にとダイエットサプリメントについ手が伸びてしまう。

政府機関もエフェドラのような問題のあるダイエット素材については今後もさらに 取締まりを強化する方向にある。しかし、とくに副作用の問題もなく、科学的根拠の 認められるものについては、当然アメリカ国民の食指ものびるというもの。 では、一体現状においてどのようなダイエット素材がダイエッターや専門家から 支持されているのか。幾つかダイエット素材を挙げてみたい。

緑茶エキス、クロム、ヒドロキシクエン酸(ガルシニアカンボジア)、食物繊維、5HTP(トリプトファン)などが有望

最近のournal of the American Medical Association誌で、 Crouse HospitalのJohn Joseph Walker医師がダイエットに使用されている栄養素を 分析、ランク付け(スコア1-5)している。 同医師は、緑茶エキス、クロム、ヒドロキシクエン酸(ガルシニアカンボジア)、 食物繊維、5HTP(トリプトファン)を取り上げている。

これによると、小規模研究ながら、体重減少に関しては5HTPがスコア5を獲得し最も 強力であるという。続いて、緑茶エキスが4.5、クロムとヒドロキシクエン酸の 混合製品が4、クロムもしくはヒドロキシクエン酸の単独製品が3.5、食物繊維は3と いう。

それぞれの作用機序などみてみよう。
セロトニンの前駆体、5HTP(トリプトファン)は満腹感を引き出し、糖分の欲求を 抑制する作用があることがいわれている。

緑茶は、がんなど常に死亡原因の上位を占める疾患予防に高い有効性を発揮するという 報告があるが、体脂肪を燃焼させ体重減少を促進させるという研究報告が発表されて 以来、ダイエッターの注目を集めるようになった。

緑茶エキスの製造会社、DSM Nutritional Productsがラットを使って行った研究では、 エサに緑茶エキスを混入して与えたところ、体脂肪を増加させず体重を維持したという。 緑茶成分のエピガロカテキンを被験者に与えた研究では、24時間エネルギー消費を増強 させたことが分かったという。

また、ジュネーブ大学が行った研究でも、緑茶エキス治療を行った被験者はエネルギー 消費が4%増加したことを報告している。 ちなみに、Natural Foods Merchandiserの調べでは、緑茶サプリメントは年々売り上げ を伸ばしており、2002年から2003年では、前年比32.4%増となった。

ピコリネートで名前が知られているクロムは血糖値を抑え筋肉量を増やすことが明らか になり、ダイエットに役立つことが知られている。

また、トロピカルフルーツのガルシニアカンボジアは成分であるヒドロキシク エン酸の動物を使った研究で、代謝を促進し体重減少を促進することが報告されて いる。また、食欲を抑制し体脂肪の蓄積を防ぐともいわれる。

食物繊維もダイエットプログラムの中で重要な要素となっている。食物繊維を食事の 前に摂取すると、満腹感を得られその後の食欲を抑制する効果がある。特に、食物繊維 の一種、グルコマンナンは水分の吸収力が強く元の50倍に膨張するため、すぐに満腹感 を誘う。それだけでなく、コレステロール値の低下や血糖コントロールができることが 示唆されている。

上記のような素材がダイエットの有望素材として同医師により挙げられている。 だが、その一方で、安全性や有効性に関する研究が不十分であるとして、その使用に 疑問を投げかける専門家も多い。5HTPも、連続して使用すると重大な血液・筋肉疾患、 例えば好酸球性肺炎などを併発する恐れがあるという疑問の声が挙がっている。

ビターオレンジ、グレープフルーツジュースと同様の薬剤相互作用もたらす

ところで、これまでダイエット素材として長らく人気を得ていたエフェドラだが、 副作用の問題で2004年4月、製造・販売禁止令が施行された。同様に、今後規制が必要 とみられているダイエット素材がいくつか挙がっている。

これについて、FDAのLester Crawford局長は、エフェドラの代用として多くのダイ エット製品などに使用されているビターオレンジやカバカバなどを次の取締りの対象 として考えている、と発表している。

ビターオレンジ(Citrus aurantium)はシネフリンを活性成分とし、エフェドリンなど 刺激性物質と同じ作用を果たすと考えられている。エフェドリンは心臓循環器系システム を刺激し、心拍数を上げ、血圧を上昇させることが指摘されているが、シネフリンに 関する臨床研究は不十分で、シネフリンがエフェドラと同じ状況を引き出すかどうかは 不明である。

だが、2004年8月、ジョージタウン大学の研究グループはExperimental Biology and Medicine誌9月号の中で、「体重減少の点でC.aurantiumは有効性が証明できないうえ、 多量に使用すると高血圧を引き起こす恐れが十分ある」と指摘している。また、ビター オレンジに含まれるフラボノイドは、グレープフルーツジュースと同様、薬剤代謝に 影響を与え血中の薬剤濃度を増大させるため、薬剤との併用では副作用を招くことも 示唆されている。

ビターオレンジ、169件の有害事象報告

また、FDAスポークスマンは「これまで、ビターオレンジの使用での有害事象報告を 169件受け取っている」と述べ、今後の取締まり対象にビターオレンジをリストアップ した。

FDAは、エフェドラの安全性に関する数々の研究を重ね長い年月を経てようやく禁止令 施行にたどりついた。それまで多くの批判にされされてきたFDAは、今後、エフェドラ の二の舞を踏むことなく、反省材料としてより迅速な対応を目指す意向を明らかにし ている。

連邦上院議員グループは、既にFDAに対しエフェドラに代わるダイエット製品成分の 安全性調査と万が一危険な製品が判明した場合、その回収を命じる要請を行っている。 また、ダイエタリーサプリメントに関する有害事象報告を同産業に義務付ける法案も 作成中である。

ビターオレンジ製品に関してはカナダの政府機関、ヘルスカナダも、ダイエット製品、 Thermonexカプセルの使用を止めるよう消費者に警告を発している。Thermonexには、 シネフリンの他にカフェインなどシネフリン作用を促進させる成分も混入されている。 ヘルスカナダは今後、こうした製品に対して適正な処置を講じる意向を明らかにして いる。

ハーブ団体、「特定の人のみ副作用を引き起こす恐れ」と反発

一方、American Botanical Councilなどハーブ団体は「ビターオレンジは、心臓病など 問題を有する人が使用した場合だけ、副作用を引き起こす恐れがある。中国の伝統医療 などで、長い間使用されてきたハーブ。適正な使用法にのっとって使用すれば問題はない。 エフェドラ以外のハーブを槍玉にあげるのは不当」と反発している。

消費者擁護団体、Consumer Reportsは今年4月、安全ではないダイエタリーサプリメ ントとして12種のリストを発表した。この中には、ビターオレンジのほか、腎不全や がん発症と関連性ありとしてアリストロキア(ウマノスズクサ)、ヨヒンベ(心臓・ 呼吸器系疾患との関連性の疑い)、カバカバ(肝臓疾患を誘発する疑い)、スネーク ウィード、コンフリー、チャパラル、ジャーマンダー、脳・副腎エキス、ロベリア、 ペニーロイヤル・オイル、スカルキャップが含まれている。