米国・代替医療への道 2004

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米国で女性のがん罹患率のトップを走る乳がん
米国で男性のがん罹患率のトップは前立腺がんだが、では女性はというと乳がん がトップを走っている。ここ数年、インターネットからがん予防のさまざまな 情報を得られやすくなったことから、西洋医療と代替医療との併用で病気と闘 っていこう、という乳がん患者も増えている。今、米国で注目されている乳がん 予防のサプリメントなど代替医療の最前線を報告する。

  今年、21万5990人が新たに乳がんと診断

米がん協会によると、米国における女性のがん罹患率のトップは乳がんで、 今年は21万5990人(うち男性1450人)が新たに乳がんと診断され、4万580人 (うち男性470人)が死亡するものと推定されている。

人種別でみると、白人の罹患率が最も高く、黒人の1.2倍、アジア系の1.7倍。 地域別では、ワシントン州の罹患率が最も高く、ニューメキシコ州が最低と なっている(米厚生省2003年11月13日発表)。

罹患率は1980年から増え続けているものの、90年代に入ると増加はゆるやかに なり、2000年以降は50歳以上のみに増加がみられるだけで、それ以下は横ばい 状態が続いている。 また、死亡率は1990年から2000年にかけて毎年2.3%ずつ減少しており、中で も50歳以下の減少が顕著にみられる。

最近の報告では、新たに診断されるケースの90%は転移のみられない早期発見 で、5年生存率も97%から79%と高くなっている。これは乳がん治療の進歩と 早期発見が死亡率減少の主な要因として挙げられている。

乳がん予防へ、代替医療を試みる患者が増加

治療といえば、ここ数年、代替医療を試みる乳がん患者が増えている。生存率 のアップのほか、再発予防、症状緩和、既存医療の副作用緩和が、代替医療を 治療メニューに加える主な理由だ。

CancerWellness Instituteらの資料によると、がん患者は患者でない人に比べ 代替医療を利用する率が高く、中でも乳がん患者にその傾向が顕著にみられる という。

中西部にある大学医療センターが乳がんで通院する112人の患者を対象に調べた ところ、最も利用者の多かった代替医療アプローチが「祈り」で76%、「エク ソサイズ」が38%、「スピリチュアル・ヒーリング」が29%だった。ほかには、 「メガビタミン服用」「自助グループ参加」「イメージ療法」「ハーブ」「リ ラクゼーション」「ダイエット」「ホメオパシー」「エネルギー・ヒーリング」 「マッサージ」が既存医療との併用で用いられている。

乳がん予防・治療で注目されるサプリメント

今、米国で乳がんの予防・治療として注目されているハーブ、サプリメントを 挙げると次のようなものがある。

・クェルセチン
野菜、フルーツに含まれている。健康維持を目的にした1日の摂取量は25mg。 抗酸化作用があり、乳ガン細胞の成長を妨げる働きがあるといわている。

・I3C(Indole 3-carbinol)
ブロッコリー、キャベツといったアブラナ科の野菜に含まれる。抗酸化作用が あり乳がん細胞の成長を妨げるほか、乳がんの治療に使われる医薬品タモキシ フェンとの併用による相乗効果が指摘されている。また、ホルモン療法による 乳がん発生の危険を少なくする働きも注目されている。ただし効果的な摂取量 はまだ確立されていない。

・キノコ
マイタケ、シイタケなどに含まれるβグルカン。免疫力を高める働きがある ことから抗がん物質として注目されている。最も一般的にいわれている摂取 量は1日、1~3mg。

・セレン
抗酸化作用があり抗発がん物質として、乳がんに限らず広くがん予防に利用 されている。必須ミネラルのひとつで、推進摂取量は1日、55mgから70mg。 ただし、抗がん作用を目的とした服用は、メガ摂取が必要といわれている。

・Tocotrienols
パーム油からとれる抗酸化物質。乳ガン細胞の成長を妨げる働きが指摘されて いる。

・緑茶
緑茶に含まれるポリフェノールが進行性で転移しやすい乳がんに罹る危険を 下げるという内容の研究報告を、マスメディアが大々的に報じたことで、 すっかり乳がん予防の定番商品になった緑茶。乳がんに限らず、がん予防に 効くと雑誌などで頻繁にとりあげられている。

・補酵素Q10
抗酸化作用があり、転移のみられる乳がん治療に使われている。ただし今の ところ、効き目を立証する十分な科学的裏付けはない。限られた研究報告に よれば、適量は1日100mgから400mg。

・ショウガ
化学療法の副作用による吐き気を抑える働きがあるほか、抗発がんの働きも 報告されている。

・ジンセン
乳がん細胞の成長を妨げる働きがあるといわれる。また、化学療法による 白血球値の低下を妨げる働きも報告されている。

・メラトニン
乳がん患者は一般的にメラトニン値が低く、腫瘍が大きければ大きいほど、 メラトニン値も低いといわれている。抗酸化作用に加え免疫力を高め、さら に化学療法による副作用を緩和し、医薬品タモキシフェンとの併用で相乗 効果が期待されることから、乳がん治療に利用されている。睡眠促進を目的 とした摂取量は1~3mgだが、乳がん治療に利用する際の摂取量は最高20mg と高い。

この他、乳がんン患者が利用しているサプリメントとハーブを挙げると 以下のようなものがある。

βカロチン  Gamma Linoleic acid  L-arginine   ビタミンA 
ビタミンB  ビタミンC  ビタミンE  ニンニク  ぶどうの種抽出液
レッドクローバー  Flaxseed oil complex

指摘されている問題点

インターネットなどで情報が容易に入手できることから、ここ数年、代替 医療を利用する乳がん患者は確実に増えている。患者にとって治療の選択肢 が広がることは決してマイナスではないが、医療関係者の中からは「代替 医療に傾倒しすぎて、すでに効果が立証されている既存の治療法をまったく 無視したために手遅れになるケースが増える恐れがある」といった声もあ がっている。

「あくまでも既存医療との併用が望ましい」というのが現時点での圧倒的な 意見だ。ほかにも、効き目を立証する科学的な裏付けが十分にないなどの 問題点も指摘されている。