米国・代替医療への道 2002
米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのか医薬品成分であるフェンフルラミン(食欲抑制剤)が含まれた一部中国産ダイ エット食品による健康被害が連日TV・マスコミで報道されている。ダイエット 食品の先進国である米国ではすでに97年にフェンフィルラミン配合のダイエット 製品が心臓障害や睡眠障害を引き起こすと問題になり、販売が禁止されている。 今回の件は日本製のダイエット食品そのものにも不信感を植付け、売上げの低迷 を招きかねないものとなった。ダイエット素材の最新のネガティブデータを報告 する。
中国ではフェンフルラミン配合は2000年に禁止されていたはず
8月1日午後5時までの厚生労働省の報告によると、「フェンフルラミン」および 「N-ニトロソファンフルラミン」が含まれた一部中国産ダイエット食品による 肝機能障害や甲状腺異常などの健康被害は589人にのぼり、死者は4人に達した という。同省では当該成分が含まれる商品として22品目を公表し、使用を避け るよう呼びかけている。
日本でのこうした中国産ダイエット食品による健康被害は今年2月頃より報告さ れているが、今後も被害の拡大が予測されるところ。 これに対し、同省では先月までに、錠剤、カプセル、粉末などのダイエット食品 の輸入業者に対し、医薬品成分の含有に有無について検査証明書を提出するよう 業界団体に通達。違反した製品及び業者は公表されることとなった。
これら一部の中国産のダイエット食品による不信感で、日本のダイエット産業 も手痛い打撃を受ける形となったが、中国ではダイエット食品へのフェンフル ラミン配合は2000年に禁止されているはず。今回、一部の悪質な業者がそれを 無視した。
英国では今年3月、科学者グループが「規制強化と製品の標準設定」を求める意見書を提出
中国発のフェンフルラミン騒動はさまざまなところに飛び火している。シンガ ポールではYuzhitangヘルツプロダクトが製造した「スリム10」による健康被害 の訴えが4月頃から寄せられており、シンガポールの政府医療機関が同製品を 調査したところフェンフルラミンが含まれていることがわかった。
そのためシンガポール政府は即刻「スリム10」の販売中止令を出し、販売元を訴えた。 この他にも、フェンフルラミンを配合した中国製品で、英国でも看護学生が使用 後に体調不良を訴え入院していることから、今年3月、英国の科学者グループが 「規制強化と製品の標準設定」を早急に求める意見書を提出、British Medical Journalにも掲載された。
米国では97年にフェンフルラミン問題が噴出
一方、米国では97年にフェンフルラミン配合のダイエット食品による心臓疾患 などの健康被害が問題視され、製品の販売が禁止されていた。 米国の健康・医療の調査機関として知られるメイヨウ・クリニックが97年7に、 当時人気のあったダイエット剤『フェン・フェン』を服用している女性を調査 したところ、24人の心臓に障害が見られ、そのうち5人は機能回復手術を受け ていることが判明した。同剤は96年には1,800万人に販売されていた。
97年8月には米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の研究 グループが、約90件の動物実験で『フェン・フェン』に含まれるフェンフルラ ミンが脳内の細胞活動に障害を与える危険性を指摘。モンキーに『フェン・ フェン』を17ヶ月間にわたって投薬し、追跡調査を行ったところ、神経伝達 物質であるセロトニンの脳内活動に障害を与え、不安、うつ病、睡眠障害など の症状を引き起こすことが判明した。
そのため、9月に、米食品医薬品局(FDA)は心臓障害の疑から『フェン・ フェン』の販売中止勧告を行い、製薬会社のWyeth-Ayerst Laboratories も販売中止を発表した。その後のフェンフルラミン抜きのダイエット剤の開発については、 「Health Care News」健康・栄養食品/機能性データベースの「米国ダイエ ット剤」の中で取り上げている。
ダイエット用中国ハーブに含まれるアリストロキア酸でも腎臓障害
この他、中国ダイエット製品で健康被害が続出し問題となった成分として、 アリストロキア酸がある。1990年から1992年までベルギーで処方されたダイ エット用中国ハーブ、Aristolochia fangchi(広防己、シマノハカズラ)が 原因と見られる健康被害が広がった。このハーブ使用により、腎臓障害で105人 が治療を受け、うち43人が腎不全を起こしていた。そのためベルギーでは1992年 に同ハーブの販売を中止した。
調べによると、同ハーブ処方の際、成分調合を間違えたことが原因という。通常 同ハーブにはStephania tetrandra(防己)が調合されるが、誤ってよく似た 広防己が混じったといわれる。また、うち18人に腎臓がんが発症し、同ハーブ の使用が関連するという報告が2000年6月、New England Journal of Medicineに掲載された。患者の組織を分析したところ、アリストロキア酸関連 付加物が検出された。
また、ベルギーと同様の症例がフランスでも7件通報されている。これも1989年 から1992年にかけて処方されたダイエット用調合剤によるもので、2000年5月 には、うち1人が尿管悪性腫瘍と診断された。
米国でも2件報告されている。1件は1994年、ダイエット用ハーブ製品を 使用、8ヶ月ほどで重症の腎臓障害を起こした。患者は1996年、腎移植が必要 とされている。また、2件目は製品の成分表示にStephania tetrandraと記載 されている製品を1994年までのおおよそ2年間使用したところ、重度の腎臓障害 を起こした。分析した結果、同ハーブ製品にはアリストロキア酸が含まれている ことが分かった。
米食品医薬品局(FDA)は2000年、米国で販売されている製品のサンプルを買 い入れ、アリストロキア酸の検出分析を行ったが、その結果、34製品のうち 18製品からアリストロキア酸が検出されたため、販売業者には市場から回収 するよう、また消費者には注意をするよう促した。FDAは2000年5月、ダイエ タリーサプリメントの製造、販売業者に対し、各製造の全工程を再検査しアリ ストロキア酸が混じらないように監督を求める書簡を出している。
中国ハーブのエフェドラ(Ma huang)にも多くの副作用報告
また、同じく問題になっている中国ハーブではエフェドラが有名。 Ma huangとして知られるエフェドラ・アルカロイドは、ダイエットやエネル ギー回復、筋肉増強用に広く配合されている。このハーブの使用により、 めまいや頭痛、イライラ、動悸、息切れといった軽いものから、重症になる と心臓発作や卒中といった副作用が報告されるようになった。
2000年8月、FDAなどが開いたエフェドラに関するパブリック・ヒアリングでは 重症の副作用症例14件が紹介されたが、この安全性についてはまだ結論が出て いない。
2001年4月カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループらは、エフ ェドラ並びにカフェインを配合するダイエット用製品に対する副作用の再検査 を行ったが、これによると、調べた140件のうち、31%にあたる43件は明らか に成分のアルカロイド、カフェインに関連しているという。重症の副作用には、 心停止、不整脈、くも膜下出血などが挙げられた。
中国ハーブにステロイドが検出された例も
この他、皮膚疾患用の中国ハーブに処方医薬品のみに許可されているステロイ ドが検出されたという報告も出ている。ロンドンの研究グループが行った調査 によると、検査を行った11クリームのうち8製品から処方箋以外では許可され ていないステロイド、Dexamethasoneが検出されたという。こうした製品の ほとんどがにきび用のもの。ステロイドを皮膚に使用しつづけると、傷やあざ ができると報告されている。
また、2000年、カリフォルニアの研究グループが報告したところによると、 自然ハーブとうたっている製品から、処方箋使用でしか許可されていない糖尿 病治療薬グリブライドとフェンフルミンが入っていたという。
現在糖尿病薬剤を常用している人が同ハーブを使用すると、危険な副作用が出る恐れがあると
医療関係者は警告しており、副作用には低血糖症などが挙げられている。
代替医療を正式に取り入れる動きが世界的な潮流になりつつある。そうした中
で、中国産ハーブへの期待値も高いだけに、今後もさらに厳しい検証の俎上に
乗せられることは必至とみられる。