米国・代替医療への道 2002
米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのか9月5日にNational Academies’ Institute of Medicineから、アメリカ人 は脂肪や炭水化物のバランスに柔軟性を持たせた食生活を送るべきという新 ガイドラインが発表された。これによると、脂肪は多すぎても少なすぎても 健康を阻害するという。また、従来のガイドラインでは、炭水化物から摂る カロリーを全体の50%以上、脂肪は30%以下としているが、今回のものは 炭水化物を45~65%、脂肪は20~35%、プロテインは変更無く10~35%とし、 かなり幅を持たせたフレキシブルなものになっている。新ガイドラインの 概要を報告する。
米国内全世帯の4割弱がダイエット志向
アメリカ人の肥満度はとどまるところを知らず、今や成人の61%以上 が太りすぎていると考えられている。米疾病予防センター(CDC)の 調べによると、BMI(ボディ・マス・インデックス)が30以上の肥満が、 女性の25%、男性では20%にあたるという。
また、Natural Marketing Instituteの調査では、米国内全世帯の 38%には、外見が理由で家族メンバーの誰かしらが必ずダイエットを 試みており、健康が理由で誰かがダイエットをしている世帯は23% あったことが分かった。
アメリカ人がウエイトロスプログラムやダイエット剤などに費やす額 は500億ドル以上に上るといわれる。人口の半分以上が太りすぎている というアメリカで、ダイエット産業の成長が衰えを知らないのは当然 といえば当然だろう。
この傾向は、7千200万人の“ベビー・ブーマー”が中高年世代に突入、 体重が健康問題の一番の関心になってきているため、まだまだ続くも のと専門家は見ている。推測によると、女性の太りすぎは2005年ま でに12%増加し、健康が理由で何らかのダイエットを試そうとする人 は830万人増えて9千270万人になるとも言われる。さらに、4人に1人 の子どもが太りすぎという警告もあり、アメリカ人の総肥満化を防ぐ ためにもさらにダイエット熱が高まることが予測される。
最近の研究で、肥満と乳がんの関連性が指摘
肥満は、米国では対応が急がれる優先課題であり、もはや国家レベル で検討されている。肥満が原因となって高血圧、心臓病、糖尿病、がん といった様々の疾患に罹ることは既に多くの研究が裏付けている。
最近の最も新しい研究報告では、肥満と乳がんの関連性を指摘している。 American Cancer Societyが1982年から行った研究(Cancer Causes and Control/Vol.13, 325-332に掲載)によると、がん患者以外の更年 期の女性42万4千168人を調べたところ、14年後には2千852人が乳がんで 死亡したという。研究者は、体重が重いほど死亡率は高いことを指摘し た。 報告によれば、50歳以上の乳がん年間死亡1万1千件から1万8千件は、 成人以後のBMIを25未満に維持すれば避けられるはずだという。
見通し明るいダイエット産業、2001年-2004年で年間10%アップ見込む
肥満への道を進まないために、アメリカ人は有効なダイエット法を求 めてハーブや錠剤、フィットネスクラブ、ダイエットプランなどあり とあらゆるものを試す。成長率に息切れを見せてきたニュートリショ ン産業の中にあってダイエット分野はまだまだ見通しが明るい。
Nutrition Business Journal(NBJ)が発表した2001年“Sorts Nutrition and Weight Loss Report”によると、スポーツ栄養とウ エイトロス製品の2000年度売上は86億5千万ドルを計上し、ニュート リション産業の売上(497億ドル)の17%を占めた。
今後の成長は、2001年から2004年で年間10%が見込まれている。大雑把 な内訳を見ると、ウエイトコントロール関連で液状、粉末状製品が大量 販売部門では9億5千420万ドルを売り上げている。
この製品では、例えばSlim Fast、Ensure、Nestle Sweet Success、 Boost、PediaSureなどが健闘している。ウエイトコントロール用の キャンディ、タブレット製品も躍進している。例えばMetabolife Internationalでは同種の製品売上が41.7%を占め1億3千850万ドル を上げた。
クロム、キトサン、アロエなどのダイエット素材が人気
現在、ダイエット志向の成分として人気が高いのがクロム、クロミウム ・ピコリネート、グルコマンナン、ジンセン、CLA、カフェイン、お茶、 キトサン、エフェドラなど。
クロミウム・ピコリネートは脂肪燃焼作用が指摘され、グルコマンナン はカロリーゼロの高食物繊維パウダーで食欲抑制作用がある。キトサン は脂肪と結合して外へ排出する作用が指摘されている。
またハーブでは、アロエ、センナ、ガルシニア・カンボジア、コーラナ ッツ、ヒバマタ類、ヨヒンベなどがある。最近ではグレープフルーツの 体重減、コレステロール値の低下における効能が取り沙汰されるように なり、注目され始めている。
医薬品ダイエット剤では「Xenical」が健闘
また、ダイエット剤では、1997年に販売中止に至ったRedux(通称フェ ンフェン)以来、超級のヒット商品には恵まれていないが、Reduxの後 を受けて登場したXenicalが健闘している。
Xenicalは食事から摂る脂肪の3分の1を体が吸収するのを妨げるとして、 1999年に認可を受けた。このXenicalが最近の研究で、肥満のタイプ II型糖尿病予防に有効性を持つことがいわれている。
ブラジルで開かれた会合で発表になった研究では、30歳から60歳の肥満 と診断されたスウエーデン人3,000人以上に、Xenicalに加えライフスタ イル変更かプラセボに加えたライフスタイル変更のどちらかを試した。 ライフスタイル変更とは、食事カロリーを少々削減、軽度の運動を生活 に加えたこと。
この結果、Xenicalグループでは、タイプII型糖尿病の危険性が37%減少 したことが分かった。また、心臓病の危険性も下降、そして長期的な体重 の減少に成功した。
市販薬の「Xenadrine」、「Xenical」より有効性が高いとの評判も
その一方、Xenical人気を上回るダイエット剤のニュースもある。 Journal of Strength and Conditioning Researchに掲載された研究 報告によると、市販薬のXenadrine(Cytodyne Technologies)の方が 処方箋薬Xenicalより有効性が高く人気があるという。
研究では、21歳から45歳までで、健康体だが太りすぎの女性を2グループ に分け、1グループにはXenadrineを別グループにはXenicalを与え、全 被験者は運動、低カロリーダイエット、ビタミンの各プログラムを受け た。
この結果、Xenadrineグループでは10ポンド以上が減少。Xenicalグルー プは平均4ポンド未満だった。Xenadrineグループの中では、19ポンド 以上減少させたケースもあった。また、Xenicalグループでは腸の不快 など副作用を経験したが、Xenadrineグループでは報告がなかった。
腹持ちを良くし間食が避けられる“Satiety”食品が注目
さらに、“低カロリー、カロリーカット”などを謳ったミールプランや ダイエットプログラムは根強い人気を誇る。 2000年では10人に9人が低脂肪食品を、85%が低カロリー食品を購入し たという。最近のウエイトコントロール市場には2つの傾向がある。1つ は“アトキンス・ダイエット”を初めとする高プロテイン、低炭水化物 ダイエット傾向で、もう1つは、いわゆる腹持ちをよくし余計な間食を しないで済ませる“Satiety”食品と呼ばれるものがじわじわと注目を 浴び出した。
この“Satiety”食品を代表するものに“Satietrol”がある。空腹感を 感じないまま、カロリー摂取量を減らしていくというのがコンセプト。 この中心的役割を果すのがコレシストキニン(CCK)と呼ばれるプロテイ ンで、満腹感を持続させ、食欲制御の働きをする。
CKKが小腸の細胞から分泌されると、食べたものの胃から腸への移動を 遅くし満腹感を持続する。“Satietrol”はこのCCKの分泌を促進する。 ある臨床研究によると、“Satietrol”は食事後、最大3.5時間、空腹 を35%まで減らし、6週間で9ポンドの体重減少を成功させたという。
この製品は粉末状で水やその他の飲料に混ぜ、食事の10~15分前に飲む。 最近の研究では、低脂肪ヨーグルトと一緒に摂取するとその効果が上が り長く持続することも確認されている。
2002年4月以降、肥満治療費が税控除に
肥満が高血圧や心臓病につながり医療費を高騰させる要因になっている ことは事実である。そのため、政府が主導となって、公立学校の給食 メニュー見直しや学校でのソーダ飲料の販売中止など様々な対応策を打 ち出している。肥満の税金対策もその1つだといえよう。
この4月、Internal Revenue Service(国税局)は、肥満を疾患と認め、 さらに税金控除の枠を広げている。これまでは、心臓病や糖尿病など他 の疾患の診断を得ている場合に限ってダイエットプログラム費用が控 除対象となっていた。新しい法案では、ウエイト治療プログラムに含ま れるシェイクや低カロリーミール、ヘルスクラブのメンバーシップ、ト レーナーへの指導料なども、全費用が税込み所得の7.5%を占めるなら 対象となる。だが、一般の食品は、誰もが同じものを食べるとして対象 から外れる。
この控除は1998年に遡って申告できるが、ウエイトロス治療の定義がな
いため、認められるかどうかはケースバイケースで査察者の裁量次第と
なると考えられる。申告を受領してもらうには、医師の処方箋などを
証明として添付することが薦められている。