米国・代替医療への道 2002
米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのかアメリカでは今年、がん患者の5年生存率は62%に達し、前年を2%上 回ると予想される――全米がん協会(ACS)はこのほど、各種データをもと に作製した2002年度版「がん現状・統計」の中で、そんな朗報を伝えた。 国をあげての禁煙キャンペーン、食事改善、運動推進、そして定期検診などの 予防対策が効を奏したものと見られている。がん種類別の今年の罹患・死亡・ 生存率と、アメリカにおける「がんとの闘い」のあゆみをまとめた。
全米がん協会によると、主だったがん種類別の今年の罹患・死亡推定、生存率は次の通り。
[ 乳がん ]
罹患率 今年、新たに侵潤性の乳がんと診断されるケースは女性で203,500人、 男性は1,500人。1980年代には毎年約4.5%ずつ増えていたのが、90年 代になると減少まではいなかいもののゆるやかな上昇となる。その傾向は特に 白人女性の間で顕著。
死亡率 女性39,600人、男性400人。女性のがん死亡原因の2位。最新の統 計によると、1992年から1998年にかけ大幅に減少しており、早期発見 と治療の進歩が要因とみられる。特に若い女性の間で顕著。ACSでは、40歳 から年に一度のX線造影(マンモグラフィ)を勧めている。40歳から49歳 の患者のうち85%、50歳から59歳の93%は、マンモグラフィでがんを 発見している。
生存率 早期発見で転移のみられない5年生存率は96%と高い。40年代に は72%だった。しかし、転移のある患者では21%と激減する。
[ 子供(0歳から14歳)のがん ]
罹患率 今年、新たに診断されるケースは推定9,100人と、子供の罹患率は低 い。血液、脊髄、骨、リンパ、脳などに発生しやすい。
死亡率 推定1,400人。うち3分の1は白血病。珍しいとはいえ1歳から14 歳の病気による死亡原因の1位。しかし、73年から死亡率は50%低下して いる。
生存率 5年生存率はどこにがんができたかで異なるが、平均して77%。主 な発生箇所でみると、骨で73%、脳で69%、急性白血病だと85%となっ ている。
[ 白血病 ]
罹患率 推定30,800人。急性と慢性はほぼ半々。男性における急性骨髄白血 病罹患率は92年から98年にかけ、毎年1.8%増えている。喫煙が増化の原 因とみられる。
死亡率 推定21,700人。
生存率 1年生存率は64%。白血病の種類にもよるが、5年生存率は46% で、急性骨髄白血病の生存率は特におもわしくない。しかし、急性リンパ球白 血病の5年生存率は、70年代半ばに38%だったのが、90年代半ばに入る と63%にアップ。子供の急性リンパ球白血病の生存率も53%から85%に 好転している。
[ 肺がん ]
罹患率 推定169,400人。がん全体の約13%を占める。男性では84年の1 0万人に86.5人の割合をピークに98年には69.8人に減少。一方、女性は9 0年代から右上がりだったのが、98年以来、10万人に43.4人の割合で発 病という横ばい状態が続いている。
死亡率 推定154,900人。がん死亡率全体の28%を占める。92年から98 年にかけ男性の死亡率が毎年1.9%減っている一方で、女性は毎年0.8%増え ている。1987年以降、乳がんを追い抜いて女性のがん死亡原因のトップに なっている。これは、たばこをやめる男性が増えているのに対したばこを吸い 始める女性が増えているため。
生存率 1年生存率は97年が41%と75年の34%を上回った。手術の向 上によるところが大きい。5年生存率となると14%。早期発見では48%だ が、早期発見は全体の15%と極めてまれである。
[ 結腸がんと直腸がん ]
罹患率 推定148,300人(結腸がんが107,300人、直腸がんが41,000人)。 結腸あるいは直腸のがんに罹る率は6%で、患者の90%が50歳以上。患者 数は、結腸がんでは女性、直腸がんでは男性が、それぞれわずかに上回る。食 事の改善、適度な運動、定期検診で予防が可能。定期検診をしていれば、がん になる前にポリープを切除できる。
死亡率 推定56,600人(結腸がんが48,100人、直腸がんが8,500人)。92 年から98年にかけ、毎年1.8%減少している。
生存率 1年から5年の生存率は、結腸で81%、直腸で62%。早期発見の 5年生存率は92%と高い。ただし、早期で発見されるケースは全体の37% と低い。10年生存率は51%。
[ 前立腺がん ]
罹患率 推定189,000人。88年から92年にかけ罹患率が急増。定期検診を 受ける人が増え、自覚症状のない段階での早期発見が増えたため。92年をピ ークに減少傾向が続き、最近ではほぼ横ばい状態が続いている。
死亡率 推定30,200人。男性のがんによる死亡原因の2位。しかし、定期検 診による早期発見が増えていることから、死亡率は減少している。
生存率 患者の83%が早期発見。早期発見の5年生存率は100%。過去2 0年の生存率は67%から96%にアップしている。10年生存率は75%、 15年が54%。
[ 卵巣がん ]
罹患率 推定23,300人。女性の全がん死亡の4%を占める。92年から98 年にかけ、毎年1.3%減少。
死亡率 推定13,900人。女性における生殖器のがんとしては最も死亡率が高 い。
生存率 1年生存率は80%。5年は52%。ただし、早期発見なら95%と 高い。しかし、全く移転のみられない早期発見のケースは約26%とまれ。
[ 子宮がん ]
罹患率 推定39,300人。白人女性の罹患率は10万人につき22.9人と、他の 人種に比べ高い。ちなみに黒人女性は10万人につき15.7人。
死亡率 推定6,600人。不正出血などの症状があるため早期発見が可能。
生存率 1年生存率は93%。早期発見の5年生存率は96%で、がんの進行 状態、および転移の有無で63%、26%と減少していく。
[ すい臓がん ]
罹患率 推定30,300人。ここ25年間で少しずつだが減少傾向を示している。
死亡率 29,700人。30年から72年まで死亡率が上昇した後、73年から8 6年まで、毎年0.8%減少。その後98年まで、毎年0.4%ずつ減っている。 しかし、女性の死亡率は73年から84年にかけ毎年0.6%上昇し、その後は 横ばい状態が続いている。たばこを吸う人の罹患率が吸わない人の倍であるこ とから、女性の間にたばこを吸う人が増えているのと女性の死亡率増加の関連 が指摘されている。
生存率 生存率は極めて低く、1年が21%、5年が5%。
[ 胃がん ]
罹患率 推定21,600人(男性13,300人、女性8,300人)。
死亡率 推定12,400人(男性7,200人、女性5,200人)
[ 食道がん ]
罹患率 推定13,100人(男性9,800人、女性3,300人)
死亡率 推定12,600人(男性9,600人、女性3,000人)
[ 肝臓がん ]
罹患率 推定16,600人(男性11,000人、女性5,600人)
死亡率 推定14,100人(男性8,900人、女性5,200人)
□ がんとの闘いの歩み---------------------------------------------------
「がん予防に焦点を当てた結果、好結果を得ている」(全米がん協会会長)
7年後に撲滅してみせる――と、故ニクソン米大統領が「がん」に闘いを挑 んだのが1971年。がんへの宣戦布告である。そして政府はこれまでに研究 や治療に1兆ドル以上をつぎ込んだ。それでも、毎年、55万人近くががんで 命を落とし、病気による死因ではトップの心臓病に次いで第2位。そんな現状 を目の前にして、「アメリカは闘いに破れた」と悲観的な意見が出ていること は否定できない。
しかし、1992年から98年にかけ、毎年、1.1%とわずかながら罹患率 および死亡率が減少しているのも事実。全米がん協会をはじめ、がん撲滅を目 指す団体関係者らは「勝利への道のりはまだほど遠い。しかし、ゆっくりとし た歩みだが、確かに進歩している」と、戦況についていたって前向きだ。 1995年11月14日に放映されたCNNニュースの中で、当時、全米がん 協会の会長に指名されたばかりのレイモンド・レンハード博士が興味深い指摘 をしている。
「我々はもっとがんの予防に目を向けるべきである。全米がん協会は今年、 予防に焦点を当てた結果、すでに好結果を得ている」 さらに、同氏はタバコががん誘発要因になっていることを強調した上で、 「肺がんが増えているのは、たばこが出まわっているからだ。たばこは、肺が んはもとよりほかのがんでも発病の大きな要因になっている。禁煙する人が増 えれば、自然と罹患率、死亡率とも減るはずである」。
国をあげての食生活の改善運動が奏功
確かに、現在、総じてがんの罹患率および死亡率が減っているのは、禁煙キ ャンペーンによるところが多い。カリフォルニア州を筆頭に、禁煙を推進して いる州で罹患・死亡率の減少が顕著なのは、その証拠といえるだろう。
また、国をあげての食生活の改善と運動推進も功を奏している。米厚生省は 10年ごとにレポート「ヘルシー・ピープル」を作成。国民の健康向上を目指 し、食生活やがん予防といった項目別に具体的なゴールを設けたレポートで、 運動の大切さ、食生活の改善、疾病予防の大切さを強調している。現代社会の 目まぐるしく移り変わる状況に合わせ、10年一区切りに目標を設定しなおす。
同レポートの発端は、1979年にさかのぼる。当時の連邦公衆衛生局長官 が、「ヘルシー・ピープル―公衆衛生局長官の健康向上と疾病予防10年計 画」を作成したのが始まりだ。そして、1990年に「ヘルシー・ピープル2 000」、今年1月には「ヘルシー・ピープル2010」が発表された。各州 政府はこれをもとに、州の健康にまつわる政策および推進事業を作成している。 ちなみに、2010年の項目「がん」のゴールは死亡率の減少で、目標値は1 0万人につき159.9人。
さらに、厚生省(HHS)は農務省(USDA)と共同で、食生活の改善を呼びか けるため「The Dietary Guidelines For Americans」を発行。1980年 にスタートし、最新情報をもとに5年ごとに内容を改定、理想的な食生活のガ イドラインを紹介している。
全米がん協会らが各地で頻繁にセミナーを開き、定期検診の大切さを広く呼
びかけている地道な努力も見逃すことはできない。セミナーでは、禁煙、運動、
バランスのとれた食事といった予防に加え、早期発見という二段構えの
大切さが常に強調されている。