米国・代替医療への道 2002
米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのか狂牛病、リステリア菌汚染肉―と、ここ数年、食肉といえばネガティブな報道 ばかり。さすがに肉の大好きのアメリカ人も食が進まなくなっている。といっ てもやっぱりあの味、食感は忘れられない。そこで人気を呼んでいるのが大豆 ベースにした食肉代替品。今年1月にはイギリスから新素材も加わって、注目 度はますます高まっている。
大豆ベースの食肉代替品、一般消費者の食生活に浸透
ミート・オルタネティブ(食肉代替品)はミート・アナログとも呼ばれ、食肉 を使っていないのに、食感がまるでミートそっくり。ビーフの代替品は、当然 ビーフではないが味覚や舌触りは本物に限りなく近い。
現在、大豆ベースの食肉 代替品が主流だが、他にもコメや野菜などをベースにした商品が出回っている。 食肉代替品がアメリカで初めてお目見えしたのは1920年代はじめ。ベジタリア ンの間に浸透し、今では、数百種類を数える商品が健康食品店はもとより、 普通のスーパーマーケットでも手軽に手に入る。
スーパーによっては、ミートセクションに本物の食肉と隣り合わせで置いてい るところもあるほどで、一般消費者の食生活にまですっかり浸透している。
本物のビーフ、チキン、ポークとそれぞれのフレーバーに限りなく近い商品の 開発が進んでおり、ソーセージ、ハンバーガー用パテ、サラミといった加工 食品のほか、ミートそのものといった具合に品揃えは豊富。冷凍もの、缶詰、 ドライフードなどの選択肢もある。
アメリカの食肉代替品市場は約4億4千万ドル
SPINSとSoyatechが合同調査した結果をまとめた 「Soyfoods: The US Market 2002」によると、米国内の小売販売における 食肉代替品売り上げは昨年、推定4億4030万ドルで、前年を14.5%上回った。 売れ筋は大豆ベースの食肉代替品。自然食品店の食肉代替品総売り上げの80%、 一般スーパーなどの大手量販店の85%が「大豆もの」だ。
販売網では、大手スーパーマーケットの売り上げが最も多く、食肉代替品総 販売の約60%を占める。ちなみに自然食品店は約30%。また、スーパーマー ケットでは、冷凍ものが総売り上げの約68%と圧倒的に強いのに対し、自然 食品店はフレッシュまたは冷蔵庫保存ものが59%、冷凍ものが41%と人気が 逆転する。
食肉不信から代替品の関心高まる
今年10月、米国農務省はじまって以来最大規模の調理済みチキンとターキー が回収された。ピルグリムズ・プライド社のワンプラーブランドで合わせて 2740ポンド。同社工場で製造中にリステリア菌に汚染された模様で、全米 で少なくとも7人が死亡、46人が発病した。同菌に汚染された食品を摂ると 妊婦は流産や死産、免疫力の弱った人は死亡する恐れがある。
食肉が危ない―。消費者の中にはそんな不安を抱いた人は少なくない。大腸 菌などの汚染による回収ニュース、そして狂牛病もアメリカでまだ感染者が 出ていないとはいえ、消費者の食肉不信を助長するには十分な要因だ。
さらに、成長ホルモンを投与した食肉の安全性もまだ白黒はっきりしておら ず、健康志向の高い人たちの間では「食肉控え」の傾向が顕著にみられる。 そんな状況を背景に、食肉代替品への関心がここ数年、高まりつつある。
また、FDAの「大豆は心臓病を予防する」という発表で、大豆ベースの食肉 代替品の需要が急激に伸びている。加えて、味や食感がよくなってきたこと も、本物の食肉から代替品に切りかえる消費者が増えている大きな理由のひ とつだ。
食肉代替品市場の傾向としては、素材はすべてオーガニックで、また、これ までのハンバーガーやホットドックなどちょっとしたスナック的な単品もの から、食肉代替品を使った冷凍どんぶりといった食事にもなる商品の需要が 高まるものと予想されている。
イギリス生まれの食肉代替品、米に初上陸
味は鶏肉にそっくりで、噛みごたえも本当の肉に非常に近いという 「クォーン」。ヨーロッパではすっかり食卓に定着したこの食肉代替品が 今年1月、アメリカでデビューした。すでに売上げは200万ドルにのぼり (ナチュラルフーズ・マーチャンダイザー10月号)、これまでコメ、ベジ タブルを大きく引き離し独走していた大豆ベースの強敵として注目されて いる。
「クォーン(Quorn)」はイギリスのマーロウ・フーズ社が販売元で、原料 は「マイコプロテイン(mycroprotein)」と呼ばれる菌の一種。マイコ プロテインの菌を発酵させるとやがてパン生地のようになり、細かな繊維質 のかたまりができる。これが肉の繊維に非常に近いため、動物性でないにも かかわらず、まるで本当の肉を食べていような噛みごたえが味わえるという わけだ。
脂肪分が少なく、非動物性タンパク質と植物繊維が豊富なうえ、ヒトを対象 にした幾つかの研究報告によると、悪玉コレステロールを退治し、善玉コレ ステロールを増やす働きもあるという。
「クォーン」はイギリスでのデビューが1985年。1993年には他のヨーロッパ 諸国でも精力的に売りだした。現在、ヨーロッパ6カ国での総売上げは約1億 7千万ドル。ビーフ味、チキン味と90種類の豊富な品揃えで、最も売れている 食肉代替品だ。
アメリカでは昨年末、米食品医薬品局(FDA)が食用としての菌の安全性を 認め、販売にゴーサインを出した。1月のデビュー以来、ホールフーズなど の自然食品店を中心に販売網を広げ、約2000店舗で売られている。
しかし、マイコプロテインを巡るこんな議論も持ち上がって入る。
一般に広まるとアレルギー反応を示す人が続出するかもしれない----と、一
部の科学者たちが指摘するほか、マーロウ・フーズ社がパッケージに「マイコ
プロテインはキノコ由来の物質」と明記しているのに対し、競合企業らは
「菌類の一種ではあるが、キノコとはいえない」と攻撃。ただちに「キノコ
表示」を取り下げるようFDAに要請している。
今後ますます規模の拡大が予想される代替食肉品市場だけに、大豆VSマイコ
プロテインの争いは白熱しそうだ。