米国・代替医療への道 2002
米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのか食品や飲み物に栄養素、ハーブを添加した製品、いわゆる機能性食品(米国でいう Nutraceutical)が米国でヒットし、ブームを巻き起こしている。それに、追随す るかのように今、Cosmeceuticalという言葉があちこちで聞かれ始めた。機能性食品 と同様のコンセプトで、従来のスキンケアやヘアケア製品にも美容効果をあげるよう、 栄養素やハーブを配合した製品で、現在、米国では飛躍的な売上を示しており、注目 市場となっている。
ベビーブーマーたちの若返り願望で需要高まる
Cosmeceuticalへの関心が高まってきたのは、米国でのヘルスブームで、病気の予防 や健康維持につながるナチュラルな製品が求められるようになってきたため。加えて、 米国ではベビーブーマーたちが年齢を重ね40、50代の中年層を形成するようになった ことも大きな要因といえる。
“ルックス・ヤング(若くありたい)”という永遠の願望を満たすべく、米国における Cosmeceutical業界は年間10~15%の成長を示している。米国のCosmeceutical製品は、 日本、オーストラリア、ヨーロッパなどを中心に売上を伸ばし、世界で220億ドルを 売り上げるといわれる。
製品では、老化をストップさせるアンチ・エイジング、シワを目立たなくさせるアン チ・リンクル、肌の輝きを増すスキンライトニング、日焼け止めのサンスクリーンや サンブロックなどが人気となっている。また、ヘアケア製品ではフケ防止や髪の成長 に的を絞ったものに注目が集まっている。
老化防止製品の売上げ、1994年から1998年までに3倍
米国だけでいえば、特にスキンケア分野の成長が著しく、1995年の9億8千万ドルから 1999年には15億ドルへと売上を伸ばし、年間の成長率も7~10%と好調に推移している。 原料部門は、米国と西ヨーロッパを合わせ、2001年は1億4千万ドルから1億5千万ドル の売上と推計されている。
また老化防止製品の売上は、1994年から1998年までに3倍になり、16億5千700万ドル を計上、2003年までに43億ドルを売り上げるものと予測されている。販路については ドラッグストアが29%を占有しており、続いてデパートが26%、大量販売が24%とな っている。今後は、インターネットでの販売の躍進が見込まれている。
CoQ10、美容製品の配合にも利用
老化防止のスキンケアに添加される栄養素、ハーブで特に人気があるものには、ビ タミン、多糖類、プロテイン、酵素/補酵素など。中でもビタミンは65%を占め ている。
ビタミンでは、ビタミンA(レチノール、レチナルなど)の人気が高く全体の50%を 占めている。続いてビタミンEが多用され全体の40%、さらにパンテノール、 ビタミンCと続く。こうしたビタミン類以外に、現在最も注目を集めているのが CoQ10並びにオキシ酸。酵素や補酵素の老化防止スキンケアでの利用度は全体 のわずか5%程度だが、CoQ10に限ってはその強い抗酸化作用でかなり期待が集 まっている。
Cosmeceuticalの分野でCoQ10が利用され始めたのはごく最近のこと。ダイエタリー サプリメント(栄養補助食品)分野でCoQ10の強い抗酸化作用や疾患への有効性 が次々に研究結果として発表され注目を浴びるようになり、美容業界でも本格的 に利用を考えるようになった。
CoQ10、歯磨き、ペット用製品など幅広く配合
米国でスキンケアに一早くCoQ10を取り入れたのはBeiersdorf USA。 1999年、シワ対策製品、Nivea Visage Q10 Wrinkle Controlとして販売した。
また、同社は昨年、過敏肌用のユーセリンQ10を発表。Nivea Visage Q10の売上は2001年から11%増加し、昨年は2千320万ドルという。Beiersdorfに 刺激されたかのように、Avalon Natural Productsも同年、CoQ10を配合した洗顔、 ボディローション、フェイスクリームなど次々に発表した。
さらに遅れること1年、Alberto-CulverもCoQ10 St. Ivesスキンケアシリーズの販売を開始した。その後、 CoQ10はパーソナルケア分野に広がりをみせ、歯磨き、マウスウォッシュ、ペット用 製品にまで配合されるようになった。こうしたアメリカで商用で販売されている CoQ10は全て日本の協和発酵の製造によるもの。米国だけでも、CoQ10の消費量は 推定50トンにのぼっている。米国でのCoQ10の美容製品使用はダイエタリーサプリメ ント使用に比べまだ少ないが、今後さらに成長が期待できるCosmeceuticalの一つ とみられている。
老化防止スキンケアでkinetin(N6-フルフリルアデニン)が注目
この他、老化防止スキンケア業界で、最近とみに注目を集めているのがkinetin。 N6-フルフリルアデニンとも呼ばれ、人の体や植物で作られる自然の強力な抗酸化剤 である。抗酸化作用が老化防止に役立つと考えられている。
Cosmetic Dermatology Seminarで発表された研究では、被験者30人に顔の半分にセタ フィルクリームを、もう半分にはフルフリルアデニンを塗り、その後顔全体に微小な 機械的損傷を与えた。この後、被験者は顔の刺激度を評価したが、フルフリルアデニ ン側でチクチクしたと回答した被験者は2人。セタフィルクリーム側だと答えた被験 者は5人いた。
シワに関する研究では、被験者64人にフルフリルアデニンかそれ以外のものを与えたが、 24週間後、フルフリルアデニングループの30%がシワが薄くなったと回答している。 また、0.01%のフルフリルアデニン、0.5%、そして0.10%の3グループに被験者を より分け1日に2回与えた研究で、光加齢の徴候と経皮水分喪失量などを評価したところ、 24週間後に87人で100%の改善が見られた。
緑茶の毛髪育成作用にも関心集まる
すでに、お馴染みの配合栄養素としては、ビタミンA、ミノキシジル、オキシ酸、 ビタミンE、ビタミンCなどがある。ビタミンAはにきびや日光による損傷に有効性を 示す。ミノキシジルは、もともと血圧降下に使われているものだが、髪の成長を促進 すると考えられている。オキシ酸はCosmeceutical分野では、まだそれほど研究が進 んでいないが、肌の柔軟性を増しコラーゲン組織を増大させるといわれている。
また、ビタミンEは有名な抗酸化剤で、フリーラジカルによる細胞のダメージを防ぎ修 復する。ビタミンCもまた、有名で強力な抗酸化剤。ビタミンEと併用すると、効力は アップするとされている。
ハーブでは、最近、ナツシロギクの活性成分であるパセノライドが抗炎症作用を行 うという研究報告が行われている。日本とスイスの研究グループは、バクテリアな どによって誘発される皮膚の免疫細胞の活発な反応をパセノライドが鎮めるとし ている。
また、もう一つの注目株は緑茶の毛髪育成作用。アンドロゲン性脱毛症(AA)に有
効とされ、緑茶の葉が期待素材として挙がっている。
動物を使った研究とin vitro研究で、緑茶の活性成分であるカテキンが酵素
の5αリダクターゼを抑制することが分かっているが、この酵素は男性ホルモンをヒド
ロテストステロンに変換、この化合物が男性ホルモン受容体と結合することにより、
ヘアサイクルの成長期を短縮し発毛を妨げるといわれる。