米国・代替医療への道 2000
ハーブ、医薬品との相互作用 / 米国がん研究協会、「食」の新プレート / 遺伝子組換え食品、安全性論争再燃 / 入り乱れるマスコミ報道 / バイオフィードバック療法 / 祈りによる療法、科学的立証へ / 米国ダイエット産業の最新状況 / 米国で高まる日本食の評価 / 栄養補助食品、有効性の解明に本腰 / 代替医療で期待される栄養成分 / 代替医療、浮上してきた問題点 / 遺伝子組み換え食品、機能性食品へ / 抗酸化ビタミンの推奨摂取量を改定 / 問題視されているハーブ(薬草) / バイアグラの代替ハーブ / HIVと代替医療 / 感染症と代替医療療 / 糖尿病と代替医療 / アレルギーと代替医療正常な生体には全く無害な種々の物質に対して特定の生体が先天的、あるいは後天 的に特異な異常反応をおこすアレルギー疾患。主なものに、気管支ぜんそく、偏頭痛、 湿疹、じんましんなどがある。アレルギー疾患に苦しむアメリカ人は総人口の約20%と 推定され、ぜんそくが学校を休む理由のトップなっているほどだ。最近では、日本と同じ ように、子供のアトピー性皮膚炎が昔に比べ増えており、食生活の改善に関心がよせら れている。子供のアトピー性皮膚炎を中心にアメリカのアレルギー現状と、症状緩和に 効き目があるといわれる栄養補助食品、ハーブ、代替医療を紹介する。
死亡件数は年間に5千人、1979年から58%上昇
National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)によると、米国で なんらかのアレルギー症状がみられる人は推定5千万人で、花粉症とぜんそく、または その両方が推定2200万人、ぜんそく患者は推定1460万人。都市部でぜんそくは「流 行病」とまでいわれている。
ぜんそく治療にかかる年間の医療費は推定60億ドルにもの ぼるといわれており、死亡件数は1979年から58%上昇、年間に5千人もの人が命を落 としている。ぜんそくの症状がかぜに似ているため、アレルギーと知らずに適切な治療 を受けていないことが死亡率を高めている原因といえるだろう。
中でも子供のぜんそくが増えており、小児患者は推定500万人。いくつかの報告による と、80年から94年までに75%増、しかも4歳以下では160%増と驚くべき数字だ。ぜん そく治療にかかる医療費は年間、小児科だけで20億ドルといわれている。70年代から 増え続けているが、その原因は明らかにされていない。
アレルギーの素因として、細菌に感染する、農薬などの化学製品にさらされる、ストレス、 バランスの悪い食事などが挙げられており、流行病とまでいわれているぜんそく患者の 増加は、公害、農薬によるところが大きいという見方が強まっている。また、アトピーは、 花粉症や鼻アレルギー、気管支ぜんそくなどのアレルギー疾患(I型アレルギー)のうち、 遺伝的要素をもったもので、アトピー性皮膚炎患者の親や兄弟にはI型アレルギー疾患 がみられることが多い。
アトピー人口、米国で1500万人以上
このアトピー性皮膚炎患者は大人と子供合わせて、1500万人以上。ほとんどが乳幼児 期に発病しており、乳幼児の約10%がアトピーと診断されている。一般に年長になると 症状は薄らぐといわれ、5歳から15歳までに患者の約40%は自然治癒している。遺伝 的要素が強いため、罹患率は、片方の親にアレルギー疾患がある子供で30%から50%、 両方の親だと70%以上と高くなる。また、アトピー疾患のある子供の多くはぜんそく持ち で、大人になってから花粉症になる率も高いという指摘もある。
また、ゴムの木から作られたラテックスで湿疹などの皮膚炎を起こすアレルギーも増えて いる。医療手袋、子供のおもちゃ、コンドームといったラテックス製品に頻繁に接触する ことで、アレルギーを起こす。特に、もともとぜんそく、湿疹などの症状がある、また、バナ ナ、アボカド、ナッツ、パパイアなどにアレルギーのある人は、発病しやすいといわている。 症状はかゆみを伴う湿疹、鼻水、目の充血などで、すぐに適切な治療を受けることが望ま しい。
アレルギーに効き目があるといわれる栄養補助食品
◎マグネシウム
1日基準摂取量400mgを服用することで、呼吸器系のアレルギー症状を改善。気管支
疾患によいといわれている。ただし、心臓や腎臓に疾患のある場合は、医者に相談して
から服用のこと。
◎Bioflavonoids
炎症を抑える。特に化学物質がらみのアレルギーに効くといわれ、ビタミンCと併用す
るとよい。
◎カルシウムとマグネシウム
アレルギーに悩む人にとって、最大の味方ともいわれる栄養補助食品。過剰反応して
いる神経系をリラックスさせる働きがある。子供のアレルギーには、カルシウム250ミリグ
ラムとマグネシウム125ミリグラムを、症状が治まるまで1日2回、その後、同じ量を1日1
回、2カ月ほど服用するとよい。
◎Essential Fatty Acids
月見草、南ヨーロッパ原産でムラサキ科のルリチシャ、Flaxーseed Oilに含まれている。
炎症を抑える。ただし、熱のある子供は、月見草オイルの服用を避けること。
◎セレニウム
酸化防止の働きがあり、ビタミンEとの併用で効き目がある。14歳以上の子供は、アレル
ギー・シーズンに50マイクログラムを1日1回、服用するとよい。
◎ビタミンB 副腎の働きを助け、免疫力を高める。ビタミンB5は花粉症に効くといわれ、免疫力と密 接に関係している副腎機能を高める。急性の花粉症には、B5を250mg、1日に3回、 食間に数日間、その後、100mgを1日3回、約1カ月ほど服用する。
◎ビタミンC
炎症を抑える働きがある。花粉症にはBioflavonoidsと併用するとよい。
◎ジンク(亜鉛)
粘膜を強くする効果があるため、アレルギー予防に人気。
アレルギーに効くハーブ(薬草)製品
◎Astragalus 漢方の一種。体の防衛力を高め健康を維持する。アレルギー治療に直接の効果はない が、予防効果大。熱、感染の症状がある場合の利用は避けること。
◎エキナセアとゴールデンシールの混合フォーミュラ
エキナセアは抗ウイルス、ゴールデンシールは抗菌作用がある。免疫力を高めるほか、
のど、鼻孔の粘膜の炎症を和らげる。ただし続けて10日以上の服用は、効果がない。
レッドクローバー、セージといった血液をきれいにするハーブと併用することで、リンパ、
血液の浄化にすぐれた効き目を発揮するほか、毒素を体の外に出す働きもある。治療
だけでなく、予防にも人気。また、ゴールデンシールは、アトピー性皮膚炎の治療にも
用いられている。
◎コロハとタイム茶
鼻づまりによい。
◎ガーリック
抗菌作用があり、慢性的な鼻水によい。
◎甘草の根
アレルギー、ぜんそくの治療に昔からよく使われている。花粉症で弱くなった副腎の働
きを高める。ただし、高血圧の人の服用は避けるべき。
◎Ma Huang
アレルギーに効くハーブの中で最もポピュラー。チャイニーズ・エフェドラとも呼ばれる。
鼻づまりに効く。神経系を刺激するため、心拍が早くなることがある。1週間以上、また
13歳以下の服用は避けるべき。
◎Minor Bupleurum
免疫力を高める。ただし、熱、感染症状のある場合の服用は避ける。
◎イラクサ
鼻水に効く。特に、慢性のアレルギーに効き目がある。ただし、副作用で腹痛を起こす
子供もいる。副作用のあった場合は、ただちに服用を中止する。また、4歳以下の服用
は避ける。
◎月見草オイル
アトピー性皮膚炎に効くと人気。服用または患部に塗り薬として使う。
◎Chamomile
アトピー性皮膚炎にクリームまた軟膏として利用。かゆみや肌の赤みを抑える。
また、花粉症対策商品としては、唐辛子、パセリをはじめ、その他7種類のハーブ入り カプセル、ネーチャーズウエー社の「HAS Fast Acting Formula」が健康食品店でよ く売れているという。
アレルギー治療に使われている代替医療
◎ホメオパシー
アレルギー治療として関心が高まっている。症状に合わせて、薬が選択される。中でも
Allium Cepa、Euphrasia、Nux Vomica、Pulsatilla、 Arsenicum Albumがよく使われ
る。Allium Cepaは、呼吸系のアレルギーに効き目がある。たまねぎに似ていることから、
涙や鼻水を誘発するため、そういった症状の改善に頻繁に使われている。
Euphrasiaは Allium Cepaを必要とする人とまったく正反対の症状をもつアレルギー患者向け。 Arsenicum Albumは、涙目、鼻水といった症状が真夜中に悪化する人に効き目がある といわれている。Nux Vomicaは、昼間は鼻水、夜は鼻詰まりで苦しんでいるアレルギー 患者向け。Pulsatillaは、女性と子供の患者向けで、昼間は鼻水、夜は鼻詰まりの症状 改善によい。
◎大腸洗浄
ある種の花粉症の治療に効き目があるといわれている。体内から毒素を出すことで、アレ
ルギー症状を緩和また排除できる。センナといった下剤効果のあるハーブを使用。
この他、アロマセラピー、鍼治療なども有効とされる。