米国・代替医療への道 2000
ハーブ、医薬品との相互作用 / 米国がん研究協会、「食」の新プレート / 遺伝子組換え食品、安全性論争再燃 / 入り乱れるマスコミ報道 / バイオフィードバック療法 / 祈りによる療法、科学的立証へ / 米国ダイエット産業の最新状況 / 米国で高まる日本食の評価 / 栄養補助食品、有効性の解明に本腰 / 代替医療で期待される栄養成分 / 代替医療、浮上してきた問題点 / 遺伝子組み換え食品、機能性食品へ / 抗酸化ビタミンの推奨摂取量を改定 / 問題視されているハーブ(薬草) / バイアグラの代替ハーブ / HIVと代替医療 / 感染症と代替医療療 / 糖尿病と代替医療 / アレルギーと代替医療理想体重を30%超えると肥満であると定義するが、アメリカでは9千700万人の成 人、つまり55%以上が肥満だと考えられている。最近では、子どもの間でも肥満が流 行病のように言われており、肥満関連の医療費が年間1千億ドルを超えるまでになっ ている。米国におけるダイエット産業の現況を報告する。
肥満層には「怠け者」のレッテル
米国立衛生研究所(NIH)は、糖尿病、心臓病、卒中、高血圧症などの危険 性が高いと判断する指標として、ウェスト周りが男性で100センチ、女性で87.5セン チ以上を示している。
アメリカでは、肥満層に「不健康、魅力がない、怠け者」といったレッテルを貼り、社 会的な成功への道が閉ざされるかのようにみなされる。
こうした状況ではダイエットが叫ばれ、それに応じてダイエット産業が急成長するのは当然の成り行きといえよう。 調査機関のMarketdata Enterprisesによると、ダイエット・プログラム、ダイエット剤、 雑誌、書籍などダイエット関連製品売上は1990年度が約300億ドル、1993年が 318億6千万ドル、そして今年が346億ドルになるものと予想され、確実な成長が見 込まれている。
ダイエット処方薬、食事代用品などダイエット関連は順調な伸び
また、医師による処方箋薬の売上が、1996年で4億6千700万ドル。市販薬は 3千200万ドルが売られた。さらに、ミール・リプレースメントと呼ばれる食事代用品 の今年の売上は17億ドルを予測し、昨年に比べ15%増になると見込まれる。
一方、各地に広がるダイエットセンターでも売上は12億ドルで、7%増になるものとしている。 また、関連製品の売上で目立ったところは、Unilever社のSlim Fast Foodsが23億ドル。 1995年に資本金1万5千ドルで立ち上げたMetabolife International社は、 Metabolife356などの人気製品で、昨年この業界で第3位の売上高を示した。
Telecheck Retail Indexが示す今年1月のある店舗の売上高は、昨年同時期に比較 し4.6%の伸びを見せている。専門家は「1月の好調は、米経済が力強い歩みを始 めたことを反映している」と分析する。
販売中止のダイエット剤『フェンフェン』以後、目玉探しに躍起
ウェイト・ロス・プログラムで目玉の一つとなるのはダイエット剤。1997年に人気ダイエッ ト剤の『フェンフェン(fen-phen)』が、副作用で心臓障害を引き起こす可能性があるとして 市場から姿を消してから、fen-phenに代わる目玉探しに、さらに新製品宣伝に各社とも 躍起となっている。現在、米食品医薬品局(FDA)の認可を受け、利用者に注目されて いるのがKnoll Pharmaceuticals社の『Meridia』とHoffmann-LaRoache社の『Xenical』 だろうか。
『Meridia』に対するテレビ、雑誌などの広告収入は1億1千100万ドルを計上した。だ が、両ダイエット剤とも、まだまだfen-phenの人気には及ばないと専門家は指摘す る。
『Xenical(orlistat)』は、脳に働きかけて食欲を感じさせないダイエット剤と異なり、腸内 で働いて脂肪を分解する酵素の働きを抑えることで脂肪吸収を阻止し余分な体重を 落とすもの。約3分の1の脂肪カロリーがカットできるという。それだからといって、食べた いものをいくらでも食べていいというものではない。
『Xenical』を利用しながら、脂肪を抑えた食事制限も求められる。また、『Xenical』は体重 指数(BMI)が30以上に限ってその利用が認められる。BMI30というのは、例えば身長 が162.5cmの時、体重が81kg以上ある場合だ。または、BMIが27以上であっても、高血 圧、糖尿病、高コレステロール症の場合にのみ使用が許される。
『Xenical』とフェンタミン(Phentermine)配合のダイエット剤、『Xen-phen』の人気浮上
Journal of the American Medical Association誌に掲載された研究では、平均99キロ以 上の成人(殆どが女性)900人に『Xenical』あるいは偽薬を与えた。被験者はまた、ウェイト 制限用食事を摂っていたが、1年後、『Xenical』グループは偽薬グループより約2,900g減少 させたという。ただ2年目、制限食事を続け、『Xenical』を摂っていたグループは3,150g体重 を増やした。偽薬グループは5.6キロだった。
処方ダイエット剤の中で最近、Xenicalとフェンタミン(Phentermine)を組み合わせた 『Xen-phen』と呼ばれるものが販売されているが、fen-phenを思い出させ専門家から懸念の 声があがっている。
昨年の5月で既に4万9千件が処方されている。これは、『Xenical』で脂肪吸収を抑え、 Phentermineが脳に働きかけ食欲を抑えようというもの。『Xen-phen』に関しての安全性や 有効性は不明という。
政府機関が中心になり、ダイエットのガイドライン作成
莫大な数に上るウェイト・ロス・プログラムやダイエット・プログラムがひしめき合っているが、 余分な体重を減らすため、そのダイエット・プログラムの効果や価格などを正しく消費者に 伝えることが重要と、専門家は警告している。こうしたことから、政府機関の Federal Trade Commissionが中心となって、医療関係者や同業界役員らによるガイドライ ンが作成されている。
ガイドライン案では、企業や医療関係者に対して、プログラムの内容
や目標、スタッフの資格、指定食品の購入を要求されるかどうかなどを含むプログラム全体
の推定価格といった詳細を消費者に示すよう求めている。だが、企業側では、ダイエット・
プログラムがどの程度の効果を挙げられるかは個人差があるため、はっきり表すことは困難
とし、ガイドラインのための意見の一致は見られていない。