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大気汚染物質PM2.5、既に喫煙や受動喫煙で吸引
世界では1年に600万人が喫煙で死亡(WHO)

中国飛来の大気汚染物質PM2.5による健康被害に注目が集まっている。4月3日、東京慈恵会医科大学附属病院で、「たばことPM2.5」と題して医学博士の村松弘康氏がPM2.5とたばこの関係について講演した。PM2.5は、我々にとって喫煙、あるいは受動喫煙で馴染み深い物質であるという。

PM2.5対策、まず禁煙から

PM2.5は大気中に含まれる微小粒子で、大きさは髪の毛の太さの約1/30と非常に小さい。そのため、呼吸により肺の奥まで浸透し、さまざまな疾病のリスクになる可能性が高いとされている。とくに花粉症や喘息の悪化、肺がんリスクが高まることが懸念されている。

PM2.5は工場などで石炭などの化石燃料が大量に使用されると発生しやすくなるが、実は私たちの身近なタバコの煙の中にも大量に含まれている。禁煙を勧める団体や専門家、医師などの間でPM2.5の問題は以前から指摘されていた。

ペットのがんの増加、喫煙が影響

このPM2.5、まず私たちがとるべき対策は禁煙であると、日本禁煙学会の評議委員でもある村松氏は指摘する。

喫煙時、空気中だけでなく、室内のカーテンやソファー、絨毯や壁紙に残留煙が何年も残って蓄積し、付着した有害物質を小さな子どもやペットが吸い込むことになる。喫煙者のいる家庭の子どもの尿からは多量のニコチンが検出されている。近年、ペットのがんが増えているのはこの残留煙による影響が大きいと獣医らも見解を示している。

発がんリスク、喫煙者の家族のほうが高い

実は、喫煙している本人より、周囲で副流煙を吸引している人々のほうが疾病のリスクが高い。
喫煙者の主流煙は900度くらいに加熱され、有害物質や発がん物質は分解される。さらにフィルターを通して喫煙者の体内に取り込まれる。つまり喫煙者が吸い込む有毒物質の分量は相当薄まる。

しかし、副流煙はくすぶった状態、つまり400度くらいのため有毒物質や発がん性物質が全く分解されない。周囲の人々は、これをフィルターも通さず吸い込むことになる。そのため、喫煙者の家族のほうが発がんリスクが高まるというのは極めて当然のことと村松氏はいう。

4,000種類以上の化学物質、発がん物質は70種類以上

タバコの煙はどれほど体に悪いのか---。
煙のなかには4,000種類以上の化学物質が含まれ、200種類以上の有害物質が含まれる。この有害物質にはニコチンや一酸化炭素だけでなく、ヒ素やカドミウムも含まれる。諸外国ではタバコにこれを明記し販売しているため、喫煙者が激減している。

また、タバコに含まれる発がん物質は70種類以上といわれる。仮にこれが食品であれば販売さえ許されない。それが許されているのは、燃やさなければ有害物質は発生しないからという論理だ。タバコをおおっぴらに規制できないのにはこうした事情がある。

タバコに含まれるPM2.5だが、厚労省は職場内のPM2.5の上限は100μg/m3と定めている。この数値は米国環境保護庁のガイドラインでは「危険レベル」である。アメリカでは0〜15 μg/m3で「良好」、16〜40μg/m3で「許容範囲」としている。日本禁煙学会や医療関係者は、日本の緩い基準値に対し、今の10倍厳しくする必要があると主張している。

ちなみに、現在の北京のPM2.5の数値は100〜500μg/m3。これは、「緊急事態レベル」だが、日本国内の飲食サービス店で全面禁煙以外の店舗は、ほとんど全てが100μg/m3を超えていることが明らかになっている。とくに、自由喫煙の居酒屋や喫煙室、タクシー内で2人が喫煙している場合などは現在の北京の状況を優に超えているという。

6秒に1人が喫煙で命を落としている

「今、世界では1年に600万人が喫煙で、60万人が受動喫煙で死亡している。6秒に1人が喫煙で命を落とし、1分に1人が受動喫煙で命を落としている」---。 WHO(世界保健機構)は、そう警鐘を鳴らす。

2005年、WHOは「タバコの規制枠組み条約」を定め、世界では全面禁煙が主流となった。各国で「受動喫煙防止法」を制定し、公共のスペースや飲食店での全面禁煙を押し進めている。

WHOはこの条例で、「タバコ会社のスポンサー活動」を全面禁止しているが、日本では主要ニュース番組のスポンサーにJTが入っているせいか、タバコや喫煙による被害を報道することはない。

日本では、国がJT株の33%を保有している。タバコの値上げも国が許可をしているからまかり通る。タバコ税による日本の歳入は2兆円。しかし喫煙によって失われる医療費や火災の被害による損失を合計すると年間で6兆円を超す。タバコ税で賄えない4兆円の損失が生じていることが報道されることはない。

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