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「健康増進法」施行、肺がん抑止に期待 5月1日、受動喫煙の防止を義務付けた健康増進法が施行された。今後、駅や公共施設など多くの人々が利用する場所で、他人のたばこの煙を吸わされることのないよう対策を講じることが義務付けられることとなった。これを受け、私鉄大手10社なども駅構内での喫煙を全面禁止とした。
平成5年以降、男性では胃がんを抜き肺がん死がトップに
5月1日より施行された「健康増進法」では、他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の対策を明示。学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、事務所、官公庁施設、飲食店、その他多数の人々が利用する施設での受動喫煙の防止対策を義務付けた。 健康増進法は、高齢化や生活習慣病の増加に伴い、健康作りや疾病予防の積極的な推進を図る必要があるとし、平成14年に成立。具体的な目標を掲げた健康作り運動として「健康日本21」を開始し、中でも喫煙対策は急務となっていた。 ちなみに、喫煙に関わる疾病リスクとしては、肺がんが挙げられるが、長年肺がん撲滅のために禁煙キャンペーンを行ってきた米国では、功を奏したのか、肺がんの罹患・死亡率が低下していることが全米がん協会(ACS)の「2002年度がん現状・統計」で明らかとなっている。 一方、日本では昭和56年以降、がんが脳卒中を抜いて死亡原因の第1位になったが、平成5年以降は、男性の肺がんが胃がんを抜いてトップに立った。その後も、各疾患の死亡率が低下傾向にある中、肺がんによる死亡率は男女とも高いままとなった(平成14年3月27日厚生労働省発表「平成12年 都道府県別年齢調整死亡率」) 間接喫煙、脳溢血や乳児の突然死に関連 ところで、喫煙による健康被害は喫煙者ばかりではない。傍にいる間接喫煙者も、喫煙者と同様リスクがおよぶことが報告されている。ニュージーランドの大学が行った調査では、間接喫煙者は脳溢血のリスクが82%も高くなることが報告されている(Epidemiology誌'99/9月号)。 調査は、521人の脳溢血経験者と1,851人の健常者を年齢、性別に分類し、直接および間接の喫煙が脳溢血に及ぼす影響について比較。間接喫煙者は、過去10年間において1年以上喫煙者と暮らしたり仕事をしたことのある人を対象とした。また、脳溢血患者の半数は一般的に75歳以上であるため、調査対象者は全員74歳以下とした。 結果、喫煙者は非喫煙者(間接喫煙者を含む)と比べ、脳溢血のリスクが4倍も高いことがわかった。また、喫煙者と全く煙と無縁の完全非喫煙者とを比べるとリスクが6倍も高くなることがわかった。 この他、喫煙は妊娠中の胎児にも影響がおよぶことが報告されている。デンマークの研究グループが、1989年から1996年の間に生まれた24,986人のデータを分析したところ、乳児の突然死(SIDS)が20件あり、全体としてSIDSのリスクは1,000人当たり0.80の割合だが、そのうち喫煙している妊婦は30%と、リスクが非喫煙者の3倍であることがわかったという(Archive of Disease in Childhood誌'99/9月号)。
こうした、喫煙、間接喫煙の疾患リスクを軽減する方法ははたしてあるのか---。
もちろん、喫煙しないこと、間接喫煙の環境を避けることが最良の策である。仮に、そうした場合、寿命にどれほどの影響をおよぼすことになるのか。 シカゴの研究者が、被験者を1女性グループと4男性グループ(計36万人以上)に分け(年令範囲は18歳から59歳)、2グループを16年間、残りのグループを22年間にわたり追跡調査したところ、心血管系疾患などの病気によって死亡する危険性がかなり低かったのが、タバコを吸わず総コレステロール値が200mg/dl以下で血圧が120、80かそれより低いグループであったという。
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