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飲酒や喫煙、食道がんリスクと強い関連
厚労省研究班で14年間追跡調査

「1日当たり日本酒にして1合以上飲むと食道がんのリスクが高まる」。そうした研究結果を厚生労働省研究班が報告した。14年間にわたる追跡調査で、飲酒や喫煙と食道がんの発生率との関係が明らかになったという。1合というとコップ1杯程度。それ以上は食道がんのリスクが高まる。「百薬の長」もやはり過ぎたるは及ばざるがごとし、なのか。

40〜69歳の男性約45,000人にアンケート

研究は、1990年と1993年、岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎、大阪などに居住の40〜69歳の男性約45,000人に、アンケートを実施。2004年まで14年間追跡調査をした(この間に215人が食道がんに罹患)。結果、1日当たり日本酒にして1合以上飲酒する人は、飲酒しないグループに比べ、食道がんのリスクが上がることが判った。

量とリスクに関係をみると、1合〜2合で2.6倍、2合以上で4.6倍リスクが高まることが判った。ちなみに、日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(240ml)、ウイスキーダブルで1杯。また、喫煙についても、非喫煙者と比べ、過去に喫煙した人は3.3倍、現在喫煙中の人は3.7倍、食道がんリスクが高くなることが判ったという。

これまで、適度な飲酒は血流を高めたり、ストレスを緩和するなど多くの健康効果が報告されている。日本の国立がんセンターが1990-1996年に、岩手、秋田、長野、沖縄の4県に住む40-59歳の男性約2万人を対象にしたアンケート調査で、日本酒を飲んでも1日に1合(180ml)以下の場合は全く飲まない人に比べ、死亡率が低いことが明らかになったと報告している。

米国では、「適量の飲酒は、糖尿病患者の心臓に対しても良い影響を与える」ということも報告されている(Journal of Medical Association誌)。University of Wisconsin-Madison研究グループが12年間にわたる研究(タイプII糖尿病患者983人を対象)で、糖尿病患者が毎日1〜2杯の飲酒をした場合、心臓病による死亡率が80%低下することが判ったという。

飲酒や喫煙による食道がんリスク、野菜・果物摂取で減少

食道がんのリスク低下のためには、喫煙を控えることや適度な飲酒が必要であろうが、今年8月、厚生労働省研究班は、野菜・果物の摂取量を増やすことで食道がんのリスクが低下すると報告している。研究では、1995年と1998年に、岩手、秋田、長野、沖縄、茨城県など9県に住む45〜74歳の男性約39,000人を、2004年まで追跡調査した。

結果、野菜・果物の高摂取グループは、低摂取グループに比べ食道がんのリスクがほぼ半減していたことが分かった。また、野菜・果物の合計摂取量が1日当たり100グラム増えると、食道がんのリスクが約10%低下していたことが分かったという。

さらに、飲酒や喫煙による食道がんリスクも野菜・果物摂取で減少することが判った。喫煙及び飲酒の最も多いグループは野菜・果物摂取による食道がんのリスクが、7.67倍から2.86倍へと大幅なリスク低下を示したという。また、野菜・果物の摂取合計が1日当たり100グラム増えると、食道がんのリスクが約20%低下したことも判ったという。

食道がんのリスク低下については、フリーズドライのブラックラズベリーが食道がんのリスク低下に有用であるという研究報告が、Acta Pharmacologica Sinica誌07/9月号に掲載されている。
Ohio State University研究者グループによるもので、生後4週間のオスのFisherラット344匹にNMBA(発がん性化合物)を注入し、19週間後、ラットの食道に平均5〜6個の腫瘍が見つかったが、さらに7週間、フリーズドライのブラックラズベリー(5%、10%、15%)を混入したエサを与えたところ、量で違いは見られなかったが、ラットの生存率が緩やかに好転したことが分かったという。


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