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男性の肺がん死、依然トップを独走[平成19年人口動態統計]
死亡原因3人に1人ががん、肺がんの主原因は喫煙か

男性のがん死亡原因で肺がんがトップに立っている。6月4日に厚生労働省が発表した平成19年人口動態統計月報年計(概数)の概況で明らかなった。平成5年以降、男性の肺がんは胃がんを抜いてがん死亡原因の第1位となっている。喫煙が主原因とされるが、はたして肺がん罹患の予防策とは。

男性は肺がん、女性は大腸がんがトップ

「平成19年人口動態統計」によると、平成19年の死亡数は110万8280人で、前年より2万3830人増加している。死亡原因のトップは悪性新生物(がん)で33万6290人。平成19年は全死亡者の30.3%を占め、3人に1人ががんで死亡している。
以下、心疾患17万5396人、脳血管疾患12万6940人と続く。15〜24歳と50〜79歳の年齢階層では、男性は女性の2倍以上の死亡率となっている。

悪性新生物(がん)については、男性は肺がんがトップで、平成5年以降、胃がんを抜き第1位に。平成19年の死亡数は4万7659人。女性では、平成15年以降、大腸がんが胃がんを抜き第1位に。平成19年の死亡数は1万9003人。悪性新生物(がん)は、40歳代より加齢とともに罹患率が高くなっている。

女性の大腸がんに比べ、急速に増加する男性の肺がん。はたして歯止めをかけることはできるのか---。
肺がんの主原因として、指摘されているのが喫煙。肺がんのリスク回避のためには、まず禁煙、さらに受動(間接)喫煙を避けるということであろうか。
喫煙は肺がんばかりでなく、同時に脳血管疾患のリスクも高める。ニュージーランドの研究グループが、74歳以下の521人の脳溢血の経験者と1,851人の健常者を年齢、性別に分類し、直接および間接の喫煙が脳溢血のリスクに及ぼす影響について比較したところ、喫煙者は非喫煙者と比べ、脳溢血のリスクが4倍高いことが判った。さらに喫煙者は全く煙と無縁の完全非喫煙者(間接喫煙者を除く)と比べると、脳溢血のリスクが6倍高くなることが判ったという報告もある。

喫煙、飲酒や抗酸化ビタミンとのコンビネーションを避ける

また、喫煙と飲酒のコンビネーションは最悪で、食道がんの罹患率を高めるという研究報告もある(International Journal of Cancer誌'99/8月号)。 喫煙と飲酒を控えると男性の食道がんの90%は予防できるという。

「喫煙はやめられないから、せめて健康のためにサプリメントを摂る」というのも返って裏目に出るという研究報告もある。抗酸化ビタミンといわれるA、C、Eと総合ビタミン剤を組合わせて摂取すると心疾患、卒中による死亡率は減少するが、喫煙者(男性)の場合、がんによる死亡率が高まると米国アトランタ連邦防疫センター(CDC)の研究グループが報告している(American Journal of Epidemiology誌'00/7月号)。

抗酸化ビタミンといえば、ベータカロチン(合成)の栄養介入試験による肺がん促進という研究結果がよく知られる。米国National Cancer InstituteがフィンランドのNational Public Health Instituteと共同で行った50歳から69歳までの男性喫煙者2万9千133人を対象にした栄養介入試験(ATBC研究)で、ベータカロチン(合成)を喫煙者が摂った場合、肺がん罹患のリスクが高まることが分かった。

試験では、1日に平均20本のタバコを36年間吸っている被験者を無作為に、1)合成ビタミンE50IU、2)合成ベータカロチン20mg、3)ビタミンEとベータカロチン併用、4)偽薬、という4つの投与グループに分けた。
結果、876人が肺がんを発病、564人が死亡した。そのうち、ビタミンEグループの発病者は2%と低く、ベータカロチングループは16%と高い結果が出た。ただ、毎日の喫煙量が20本以下でアルコールを摂取しない被験者の場合、ベータカロチン投与における評価はできなかった。

喫煙者へのベータカロチン(合成)投与ついては、その後、1996年に発表された米国のCARET studyでも否定的な見解が下された。
試験は、喫煙者あるいは以前タバコを吸っていた被験者および職場環境にアスベストがある労働者18,000人以上を対象に、半数に偽薬を、残り半数にベータカロチン(合成)30mgとビタミンA25000IUを与えた。
が、この研究は予定より21ケ月早く中断される。ビタミン投与グループは偽薬グループに比べ、肺がん罹患が28%、死亡率が17%も高くなったためだ。 後に、「煙草の煙に含まれる発がん性物質との相互作用を行う酵素の生成を合成ベータカロチンが高めている」と見られている(Nature誌'99年/4月号)。

他に、鉄およびカルシウムは肺がんリスクを上げる恐れがあるという研究報告もある(Epidemiology誌05/11月号)。Harvard School of Public Health、Harvard Medical School研究者グループが、肺がん患者923人、および健康体被験者1,125人(対照グループ)の鉄、亜鉛、カルシウム摂取と肺がんリスクの関連性を調べた。被験者は126項目について食生活調査を受けた。結果、鉄とカルシウムは肺がんリスクの増大に関連し、亜鉛はリスクを多少上げることが分かったという。

全粒穀物など食事からのマグネシウム、喫煙による疾患リスクを軽減

日頃の「食」による肺がん予防についてはどうか---。
緑葉色野菜の摂取は肺がん予防に有用であることが、Nutrition誌08/3月号に掲載されている。Galician Public Foundation for Health Emergencies研究者グループが、被験者617人に、食品頻度調査(FFQ)を行ったところ、緑葉色野菜を1日最低1回摂食するグループは1週間に5回未満のグループに比べ、肺がんに罹るリスクが5%低いことが分かったという。ちなみに、じゃがいも、キャベツ、かぶら菜、レタスなど多量に摂ると予防効果が期待できるとした。果物では大きな影響は見られないという。

また、マグネシウムが喫煙男性の卒中リスク低下に有用であることが、Archives of Internal Medicine最新号に掲載されている。 Karolinka Institute研究者グループが、全粒穀物など食事からマグネシウムを摂取すると、脳梗塞を発症するリスクが著しく減少するという。
研究者グループは、Alpha-Tocopherol, Beta Carotene Cancer Prevention(ATBC)スタディを基に、タバコを1日5本以上吸う男性29,133人(50〜69歳)を13.6年追跡(期間中、3,365人が卒中を引き起こした)。
結果、マグネシウムを最も多く摂取したグループ(平均589mg/日)は最も少ないグループ(373mg/日)に比べ、脳梗塞を起こすリスクが15%低く、60歳以下のグループで顕著だったという。


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