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健康大陸.com > BODY BRUSH UP > 美女を創る「食」とライフスタイル

2006年、知花さくらさんがミス・ユニバース世界大会で第二位に、翌07年には森理世さんが第一位に輝きました。2004年以降、彼女たちの栄養指導を行ってきたのが、ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントのエリカ・アンギャルさんです。彼女が追求する、「内面から輝く美しさ」のための「食」とはどのようなものでしょうか。

世界の美女は白いものを食べていない

「彼女たちは初めから完璧ではなかった。彼女たちが素晴らしかったのは努力ができたという点」---。 エリカ・アンギャルさんは自著『世界一の美女になるダイエット』(幻冬舎)の中で、そう述懐しています。二人とも最初から特別な存在ではなかった、どこにいてもおかしくない、普通の女性だった、と。

そんな彼女たちを、完璧なミス・ユニバースへと導いた「食」とはどのようなものだったのでしょうか。「食」はメンタル面にも大きく影響します。

エリカ・アンギャルさんが「肌に良いコスメティクスは食べ物」とし、挙げているのが、未精製の炭水化物、野菜・果物、良質な油、たんぱく質です。こうした基本的な栄養素の摂取で、痩せやすい身体や美しい肌が手に入るとしています。

また、「世界の美女はもう白いものを食べていない」とも述べていますが、この言葉に、彼女の提唱する栄養学が集約されているようです。

色の濃い野菜・果物がオススメ

白いものとは、精製した物、白米に白パン、白砂糖のことです。野菜にしても色の濃い物、つまり抗酸化成分が多く含まれるものを推奨しています。もちろん無化学肥料の食材です。

また、「炭水化物抜きダイエットはオススメできない、ゴージャスな美女になれない」とし、精白米ではなく、玄米や雑穀のような未精白穀物、血糖値の上がらない低GI食品を摂ることを勧めています。

炭水化物抜きダイエットについては、日本でも流行っていますが、アメリカではアトキンス式ダイエットとして2002年頃から一大ブームとなりました。しかし、その後問題点が指摘され、下火になっています。これについては後述します。

これまで、肉食一辺倒だったアメリカでは、日本の穀菜食を中心とした和食の健康効果を評価し、「食」の見直しを進めています。

日本人は主食である穀物を精白された米やパンで当たり前のように摂り、穀物の栄養学的価値をあまり認識することがありませんが、今やアメリカや海外の人々のほうが、その価値を認識しているといえそうです。

今、アメリカでは日本の大豆製品や緑茶がブームです。すでに米や魚の寿司食もヘルスフードとして彼らの食文化にすっかり馴染んでいます。そのアメリカ人たちが最も関心を寄せているのが穀物、とくに未精白米の健康効果です。

玄米や雑穀のビタミン・ミネラル、身体の疲れや肌ケアに欠かせない

未精白米といえば、玄米や胚芽米、雑穀です。いつも手軽なファーストフードやジャンクフードばかりでお腹を満たしていると、慢性的なミネラル不足に陥りかねません。玄米や雑穀は食物繊維やミネラルが豊富で、加工食品ばかり摂っている現代人にとって微量栄養素の補給に最適な食品といえます。

穀物の健康効果でよく知られる話では、江戸時代、江戸勤務の武士たちが白米を食べるようになったことから、ビタミンB1不足で脚気にかかり、「江戸わずらい」と呼ばれていました。
一方で、貧しい農民たちは雑穀を主食としていたため脚気に悩まされることはありませんでした。

脚気が食べ物と関係していることに気づき始めるのが、日清・日露戦争の最中です。

明治時代も脚気が多発していて、100万人以上の人々が脚気にかかっていました。当時の海軍の軍医は、脚気に食べ物が関係しているのではないかと考え、白米を麦飯に代えました。その結果、海軍の兵士の脚気は激減したといいます。

一方で、ドイツ医学を学んだ、文豪で当時の陸軍医だった森鴎外は脚気は食べ物ではなく、細菌によるものと譲りませんでした。そのため、陸軍では戦死より脚気で死亡する者のほうが多かったといいます。

日露戦争から5年後の明治43年(1910年)、東京帝国大学農科大学教授の鈴木梅太郎氏がビタミンB1を発見し、ようやく脚気の原因が明らかになります。

ちなみに、天下取り3武将といわれる、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の没年齢はそれぞれ49歳、62歳、75歳ですが、家康は堅実な性格で、日頃の健康管理に注意を払い、「早寝早起き、粗食」を常としていたといわれます。

家康以降の徳川14代の将軍の平均寿命は49.6歳(当時の日本人の平均寿命は37.8歳)ですので、いかに家康が長命であったかがわかります。その家康が信条としていた「食」が、「麦めし、実だくさんのみそ汁、丸干しイワシ」でした。

現代人は脚気という症状に至らないまでも、なんとなく身体がだるい、疲れが中々とれないといった人が多いのではないでしょうか。これは、身体がビタミンB1を欲しがっているサインなのかも知れません。B1は肌や粘膜の健康に欠かせないビタミンで、スキンケアにとっても重要な役割をはたします。

未精白穀物を摂るほど病気に罹らない健康な生活をおくれる

ところで、アメリカでは過食や脂肪分の摂り過ぎで肥満が増え、それに伴い心臓病や生活習慣病の対策が急務となっています。

2005年1月、米国保健社会福祉局より「アメリカ人の栄養ガイドライン」が発表されました。このガイドラインはアメリカ人の生活習慣病を防ぎ、より健康でいるための指針を示したもので、5年ごとに改訂されています。実は、この頃より米国が「和食」へと大きく舵とりをしたことがうかがえます。

このガイドラインでは、「摂取カロリー削減」「野菜・果物・全穀物の摂取奨励」「定期的な運動」の3つが大きな柱となっています。

この中で、とくに注目されるのが、ガイドラインで初めて全穀物を毎日食べるよう推奨したことです。1日の穀類の総摂取量のうち、少なくとも半分は全穀物にし、1日当たり3オンス(85グラム)以上摂ることを推奨しています。

米国ギャラップ世論調査によると、調査対象の8割が「穀類はエネルギー源になる」と答え、7割が「穀類は、ダイエット、心臓病予防、がん予防の効果がある」と、いずれもポジティブな回答をしています。

穀類の健康への有用性について、米国で55歳から69歳までの3万8千740人を調べた研究では、未精白穀物を摂取するほど病気に罹らない健康な生活が営めるという結論に至ったといいます。

また、未精白穀物を、1日1杯食べることで、がん、心血管系疾患などの死亡率を低下させることができるという報告もあります。米国では、全穀物のパンやシリアルに対し、「心臓病やがん予防」のラベル表示を許可されている商品もあります。

「咀嚼」で脳の前頭前野を活性化

未精製穀類には、栄養学的価値もさることながら、実は「咀嚼」による健康効果というものもあります。アンギャル氏も著書の中で、「よく噛む」ことの効用を挙げ、液状になるまで25回以上噛むことが理想としています。

玄米は白米と比べ、少し硬いことから、「よく噛む」という習慣がつきますが、実は、この「咀嚼」は脳のトレーニング(以下、脳トレ)と同様の効果が期待できるといわれています。

脳内には口と関わる神経が無数に広がっています。「咀嚼」を行うと、脳内の血流が増え、前頭前野や小脳などが活性します。

前頭前野は額の後ろにあり、うつ病や認知症といった人は前頭前野の働きが低下しているといわれています。

音読や計算が前頭前野を活性化し、脳トレによいといわれますが、「咀嚼」でも前頭前野が活性化されることが分かっています。

また、「咀嚼」で記憶力を高めることも期待できるといいます。さまざまな情報はまず脳の海馬に短期記憶として一時的に保存され、その後、大脳で長期記憶として保存されます。よく噛むことで、この海馬が刺激されます。

唾液腺ホルモンのパロチンによる細胞の若返り

抜歯したマウスの実験では、噛めないことで記憶に関わるアセチルコリンという神経伝達物質が減少し、認知症状態になることが報告されています。 また。噛み合わせを悪くしたマウスでは1週間で30%の海馬の神経細胞が消失し、海馬の働きが悪くなり、空間認知機能や記憶力が低下したことも報告されています。

よく噛むことは健康状態にも大きく関係します。玄米をよく噛むことで、まず唾液がよく出ます。唾液には抗菌や殺菌、抗がん作用などの酵素が多く含まれますが、こうした酵素の活性を促します。また唾液腺ホルモンのパロチンにより、細胞の若返りが促されます。

現代人はあまり噛まなくなったといわれますが、うつ病人口の増加はそうしたことも関係しているのかも知れません。「咀嚼」が十分でないと、脳内の神経物質であるドーパミンやセロトニンが減少するというデータもあります。

国民の健康増進を図るための基本的な方針を示す「新健康日本21」でも、「歯と口腔の健康」を重視しています。自分の歯を残し、それで十分な「咀嚼」を行うことは脳機能の低下を防ぎ、認知症予防に繋がるとしています。

玄米を食べる際の注意点

玄米や雑穀は、精白米と比べ、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富なこと、加えて「咀嚼」によりもたらされる健康効果があります。ただ玄米だけ食べていればいいかというと、それも問題で、一方で気になる指摘もあります。

玄米にはホルモン様物質のアブシジン酸(ABA)という酵素阻害物質が含まれているため、12時間以上玄米を水に浸しておくか、フライパンで乾煎りしてアブシジン酸(ABA)をとばしたほうが良いといいます。

また、圧力鍋で一気に高熱で炊くとアクリルアミドという発がん物質が発生するため、圧力鍋は使わないほうが良いようです。玄米だけを過食するのではなく、1日1食程度で良いといいます。(参照:鶴見隆史著『断食でがんは治る』(双葉社))。

玄米は災害時にも重宝します。非常食や防災食といえば、カンパンが代表的な食品ですが、フライパンで玄米を炒って、「炒り玄米」として保存しておくと長期保存が可能です。

「炒り玄米」は、炊飯器を使わなくても、「蒸す」だけで食べやすい玄米に戻ります。仮に電気やガスが使えない場合でも、「炒り玄米」はそのままでも食べることができます。
以下、「炒り玄米」の作り方はとても簡単です。

<「炒り玄米」の作り方>
1) 一合ほどの玄米をザルで洗い、水をしっかりきります。
2) 油をひかない、熱したフライパンに洗った玄米を入れます。
3) 8〜10分程度、全体に香ばしい色がつくまで炒ります。

これで「炒り玄米」の出来上がりです! 玄米をおにぎりや炒り玄米など、手軽に摂食できる形にして常備しておきましょう。玄米は食物繊維が豊富ですから、腸内環境を改善し、免疫力を整えます。お通じやダイエットにも役立ちます。

玄米に良質のミネラル塩を加えて食べればそれだけで生命維持に必要な栄養素は十分補給できます。玄米は病気や災害から身を守るスーパー防災食ともいえます。  

血糖値が急激に上昇しないよう、未精製の炭水化物を摂る

ところで、前述の炭水化物抜きダイエットですが、2002年、アメリカでダイエット法の教祖的存在であるロバート・アトキンス博士の著書『Dr. Atkins' New Diet Revolution』が一躍上位にランクインし、アトキンス式ダイエットが大ブレイクしました。

炭水化物は血糖になると、それを下げようとすい臓からインスリンが分泌されます。血糖が急激に上昇すると大量のインスリンが分泌され、それが続くと糖質が脂肪細胞に蓄積されやすくなります。

そのため、炭水化物を控え、代わりに体脂肪を燃やし筋肉の増強にも役立つたんぱく質をたくさん摂るべきである、というのがアトキンス理論です。

この「炭水化物を減らし、良質のたんぱく質を多く摂る」というダイエット法は、ローカーブ(低炭水化物:Low-Carb)ダイエットと呼ばれ、 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンにも、副作用のないダイエット法として掲載されました。

当時は、キャンディーやシリアルなど、低炭水化物食品だけを扱う専門店も全米に約200店軒並みオープンするなど大変なブームでした。ところが、 その後、アトキンス式ダイエットは短期的な効果はあるものの、長期的な効果はわからない、高プロテイン食は腎臓への負担が大きくなるという指摘が専門家から挙がり、警鐘が鳴らされました。

その後日本での研究でも、2013年に能登洋医長(国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科)らの研究チームが、炭水化物の摂取を制限するダイエットを5年以上続けると死亡率が高くなる、という研究結果を発表しています。

能登氏らが糖質制限食に関する492の医学論文を分析したところ、糖質摂取量の割合が最も少ないグループの死亡率は最も多いグループの1.31倍で統計上の明確な差が出たといいます。

アトキンス式ダイエットでは炭水化物摂取による急激な血糖上昇を問題にしていましたが、未精製の穀類であれば血糖も緩やかに上昇するため、インスリンの大量分泌ということもなく、問題はなかったというわけです。

また、炭水化物の摂り過ぎは、タンパク質と糖が結びつき(糖化)、肌のコラーゲンが弾力を失い、シワやたるみの原因になるとされていますが、玄米や雑穀であれば、食物繊維が血糖の上昇を抑えますので、「抗糖化」にもつながります。


美女ダイエット&メソッド:
その@ 美女と穀物の関係〜世界の美女は白いものを食べていない
そのA 月のリズムで美女になる〜月が導く「排泄・浄化」に最適な期間
そのB 美女を創る「時間美容学」〜朝の過ごし方が決め手
そのC ヨガで若返り〜3つのポイント、若返りのポーズ