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遺伝子組み換え作物、バイオ燃料で原料高騰も
世界中でフリーゾーン(拒否地域)拡大

10月16日(木)、「もうひとつの世界食料デー(World Foodless Day 2008)」集会が開催された。ジャーナリストの天笠啓祐氏らが遺伝子組み換え作物の現況について講演。バイオ燃料としてのトウモロコシの需要増でモンサント社など活況を呈する一方で、世界中でフリーゾーンが拡大している状況が明らかとなった。

栽培の過半数が米国、主に食用油や飼料で使用

遺伝子組み換え作物(以下略、GM作物)の代表企業であるモンサント社は、今期2倍の利益を得たといわれる。トウモロコシなどバイオ燃料としての需要が増したことがその要因になっている。

とはいえ、世界中でGM作物が望まれているわけではない。米国や南米を中心にGM作物の栽培面積は拡大しているものの、栽培国や栽培種は増えていない。EUを中心にフリーゾーンも拡大している。
GM作物栽培は、米国が栽培面積の過半数を占め、2007年では5770万ha、5年前と比べると1500万ha以上拡大している。次いで、アルゼンチン1910万ha、ブラジル1500万ha、カナダ700万ha、インド620万ha、中国380万ha、パラグアイ260万ha、南アフリカ180万haなど。

栽培種については、ナタネ、大豆、トウモロコシ、綿、じゃがいも、テンサイで、種類は増えていない。主に食用油や油製品、搾りカスは肥料や飼料に使われている。

『遺伝子組み換えでない(=5%までGM作物混入)』という奇妙な表示

ところで、食糧自給率が40%を下回る日本は、当然GM作物の最大の輸入国でもある。2005年統計では、トウモロコシを米国から約94.1%、大豆を約74.8%、ナタネをカナダから約81.5%輸入している。

GM作物が登場して10数年が経過する。消費者のGM食品への抵抗感は依然根強いが、肝心の表示については、「日本では食用油や醤油など大半の食品が表示の対象外。EUは全食品表示」という状況で、一方的に行政サイドに押し切られ、消費者は蚊帳の外だ。また、レストランでの表示についても、「日本は設定されていない。EUは外食産業も対象、メニューに表示(任意)」とGM食品に厳格なEU に比べ、日本の食品行政の緩さが目立つ。

さらに、GM作物の混入率についても、「日本は5%まで混入を認め『遺伝子組み換えでない』表示が可能。EUは、0.9%以上は表示」で、『遺伝子組み換えでない(=5%までGM作物混入)』という奇妙な表示がまかり通っている。
また、分別表示も曖昧だ。日本では「使用」「不分別」「不使用」、表示なし、の4種類。EUでは「GMO」、表示なし(表示なしは不使用)の2種類のみだ。

遺伝子組み換えイネ、日本での作付計画は頓挫

日本人の長寿体質に大豆や穀類が貢献していることはさまざまな疫学調査でも裏付けられている。大豆については、国内需要をまかなえず海外からの輸入に頼らざるを得ないが、米は全く事情が違う。日本は国内での需要を満たすに十分な生産量を誇る。

こうした米にまで、モンサント社は愛知県と共同開発で遺伝子組み換えイネ「祭り晴」の開発を試みた。が、残念ながら、現在このイネは開発中止。他にもトリプトファン高蓄積イネ、細菌病抵抗性イネ、鉄分増量イネなど、遺伝子組み換えイネの開発を試みたが、全て失敗に終わり、民間企業や自治体の農業試験場が相次いで撤退している。現在、試験栽培中なのは、花粉症緩和イネ(農業生物資源研・日本製紙)のみといわれている。

車の バイオ燃料に使うには問題はないが、人の食料や動物の飼料に使うことには最後まで健康不安が残る。そうした懸念から、EU諸国では、アンチGM作物の動きが大きな広がりを見せている。英国では、GM食品を拒否する人口が1500万人を超えるといわれる。
他にも、オーストリア、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、ポーランド、ギリシャ、アイルランド、ハンガリー、スイス、など各州でGM作物フリー宣言をしている。ロシアにいたっては、農業目的のGM作物を一切承認していない。
また、米国でもカリフォルニア州でGMフリー、カナダ・バンクーバー島などがGMフリーを表明している。


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