では、プロポリスはどうでしょう。名前を知っている人も多いかも知れませんが、その内容については意外に知られていないのではないでしょうか。
プロポリスというのは、ミツバチが巣の周辺にある樹木や草花などから採取してきた樹液や樹脂、花粉などをミツバチ自身が噛み続けているうちに唾液などと混ざり、ソフトチョコレート状になったもののことです。
具体的には、ミツバチの中のある種のハチ(学者によっては、リタイア間際のベテランのハチという読もあります)が良質の材料を採取して巣まで運びます。これを別のミツバチが受け取って、噛んではプロポリスをつくり、巣の入口や隙間など外敵や細菌が入ってきそうなところに塗り固めていくという、実に手間ひまかけてつくられるもののようです。
巣を外敵や細菌から守る、巣に侵入して殺された外敵の死体が腐敗するのを防ぐ、巣を消毒したり巣を強固にしたりするなど、ミツバチにとってプロポリスは重大な働きをしています。
プロポリスはアリストテレスの『動物誌』にも登場する
プロポリスとはギリシア語で、語源はプロ(前・ひいては守るもの)とポリス(砦・都市)。つまり砦を守るものという意味です。ミツバチにとっては「巣を守るもの」です。
プロポリスの歴史は古く、東ヨーロッパを中心とした地域では、紀元前の昔から、日常のケア食品、健康維持食品として広く愛用されてきました。
アリストテレスは、その著書『動物誌』の中で、かなり具体的にプロポリスの効用について説いています。プロポリスで覆うと死体がミイラ吠態になつて、保存力が高まることを知っていた古代工ジプトでは、もちろんミイラ作りに使用されました。工ジプトの女王クレオパトラは、健康食品としてだけでなく美容のためにも活用したようです。
∃一ロッパの中世期には十字軍の遠征の際にも健康を維持するために投立てられました。戦場での健康上のトラブルやアクシデントに備えて、戦士たちに携帯されていたことはよく知られています。当時の貴族社会では、香水や珍重品としても扱われていました。また古代インカでも、神聖なものとして、神々の霊を祀る儀式にプロポリスが用いられました。
歴史は古いが、脚光を集めだしたのは近年
プロポリスが各国で古くから活用されてきたことは、様々な文献や資料からもうかがえます。しかし、学問的に注目を集めだしたのは近年のことなのです。日本では、1985年に名古屋で開かれた国際養蜂会議で、プロポリスについての様々な有用性が発表されて話題になりました。
そして、6年後の1991年の学会での報告後、プロポリスの話題が堰を切ったように登場し、1999年にカナダで開催された世界養蜂家会議「アピモンデイア」でもその有用性が紹介されました。
とはいえ、プロポリスについては未だに詳細は解明されていません。プロポリスのもつ計り知れない宇宙のような奥深さは、今後の研究に大きく委ねられているのです。