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痛風や糖尿病のリスク低下、骨密度にも関与【ビタミンC最新報告】

ビタミンCはEと並び、米国で使用頻度が高い。最近では、痛風や糖尿病予防、若い女性の降圧、骨密度損失の低下、卒中予防など多彩な効能が報告されている。その一方で、抗がん剤の働きを阻害するといった相互作用も報告されている。ビタミンCの最新研究を報告する。

C摂取1.5g以上/日で、痛風リスク45%低下

Archives of Internal Medicine誌09/3月号では、痛風予防の有用性について報じている。Boston University School of Medicine研究者グループが、男性被験者46,994人を対象に、1986〜2006年にビタミン摂取と痛風との関連性を調査(期間中、1,317人が痛風を発症)。

結果、ビタミンC 500〜999mg/日を摂取した群は痛風リスクが250mg以下の群に比べ17%低く、1000〜1499mg群では34%、1500mg以上では45%低いことが分かったという。

米国でビタミンCの人気を高めたのは、2度のノーベル賞を受賞した故・ライナス・ポーリング博士(1901年〜1994年)といわれる。博士は、「分子矯正医学」という栄養療法を提唱し、Cのメガ(大量)摂取を奨励、自身も1日に数10グラムのCを摂っていたといわれる。

ビタミンC不足は壊血病を引き起こすとされるが、近年、ビタミンCがインターフェロン産生の促進、抗ヒスタミン、抗ストレス、免疫力増強などに関わることが明らかとなっている。 とはいえ、多くの動植物がビタミンCを自身で合成できるが、ヒトは遺伝的に体内合成ができない。そのため、食物から摂取する必要がある。

Cのメガ摂取については、下痢や腎臓結石などのリスクが指摘されているが、数グラムの摂取でも尿中のシュウ酸塩の増加は見られず、腎臓結石の危険性がないことが判明している。

他に、ビタミンCの有用性については、Nutrition Journal誌09/1月号が、若い女性の降圧に有用であると報じている。 University of California, Berkeley研究者グループが、18歳から21歳までの女性242人を対象に、10年間追跡調査した。

結果、ビタミンC濃度が最も高い群は最も低い群に比べ、血圧の収縮、拡張期圧がそれぞれ4.66mmHg、6.04mmHg低かったという。血漿中のアスコルビン酸(ビタミンC)値が1mg/dL増大するごとに、収縮期圧が4.1mmHg、拡張期圧は4.0mmHg低くなったという。

C摂取多いほど骨ミネラル密度損失が低下

高齢者の骨密度への関連も報告されている(Journal of Nutrition誌08/10月号)。 Tufts University研究者グループらが、Framingham Osteoporosis Studyに参加した男性334人、女性540人(平均年齢75歳)を対象に分析(1988〜1989年)。男性213人、女性393人で、ビタミンCの総摂取量が多いほど骨ミネラル密度(BMD)の損失が低下していることが分かったという。

また、糖尿病予防への有用性も報告されている(Archives of Internal Medicine誌08/8月号)。Addenbrooke's Hospital研究者グループが、21,831人の男女(平均年齢58.4歳)を対象に、血中のビタミンC濃度と糖尿病の関連性を調べた。経過観察期間は12年。

結果、Cの血中濃度の最も高い群は最低濃度群に比べ、2型糖尿病リスクが62%低下したことが分かった。また、Cを多く含む果物・野菜の高摂取群は低摂取群に比べ、リスクが22%低下していたという。

American Journal of Clinical Nutrition誌08/1月号では、脳卒中予防にCが役立つと報じている。University of Cambridge研究者グループが、European Prospective Investigation into Cancerに参加した男女20,649人のデータ分析を行ったところ、血中のビタミンC濃度が最も高いグループは最低グループと比べ、脳卒中を起こすリスクが42%低いことが分ったという。

Cの抗酸化作用、抗ガン剤の働きを阻害

一方で、ビタミンCは抗がん剤の働きを阻害することが報告されている。Cancer Research誌08/10月号によると、British charity Cancer Research研究者グループが、抗がん剤のドキソルビシン、シスプラチンなどを用いたin vitro研究で、ビタミンCにより抗がん剤の働きが最大70%阻害されたことが分かったという。

抗がん剤の主作用は活性酸素を発生させ、がん細胞を攻撃するというものだが、抗酸化剤であるビタミンCは、そうした抗がん剤の作用を減弱する恐れがあるとみられている。

反面、化学療法で生じる活性酸素の弊害を、抗酸化ビタミンが緩和することも報告されている。 American Journal of Clinical Nutrition誌'04/6月号によると、 ニューヨークの研究グループが、子供の急性白血病患者103人を対象に抗酸化ビタミン摂取と化学療法の副作用を調査。6ヶ月の期間中、被験者にビタミンE、 総カロチノイド、ベータカロチン、ビタミンAをそれぞれ、1日の推薦摂取量の66%、 30%、59%、29%与え、さらに、ビタミンCを多く与えたところ、副作用や入院期間が減少することが分かったという。

また、Gut誌07/9月号では、University of Glasgow研究者グループによるin vitro研究で、脂肪の多い胃の中ではビタミンCは発がん反応を誘導する恐れがあることが判ったと報じている。
ビタミンCは亜硝酸を一酸化窒素に変換し、有害なニトロソアミンの合成を抑制すると考えられている。一酸化窒素が脂肪の中で拡散して酸素と反応すると、ニトロソアミン生成化合物を合成する。脂肪がなければ、ビタミンCはニトロソアミンの発現を5〜1000倍の範囲で抑制するが、反対に脂肪があると、ニトロソアミンの合成を8〜140倍の範囲で増進するという。


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