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ビタミンC、推奨摂取量の上限設定(米国)
〜食品と栄養補助剤合わせ、1日2,000mg

2月に米国疾病予防センター(CDC)が、米国民の4割が何らかのビタミンおよびミネラルを摂取しており、なかでもCが最も利用頻度が高いことを発表。その後、4月に入って、米国科学アカデミーがCの1日の推奨摂取量(RDA)を女性75mg、男性90mgと改定、上限を2000mgと設定した。はたしてCの適正摂取量をめぐる議論の到達点となり得たのか。


米国民の4割がビタミン・ミネラル利用、人気1はビタミンC

米国民の4割が何らかのビタミンおよびミネラルを摂取---先頃、米国疾病予防センター(CDC)がこうした米国人のビタミンの摂取状況を公表した。これは全米を対象とした国民健康影響調査(National Health and Nutritional Examination Survey)を分析したもので、2000年2月だけで、1万1千人以上(米人口の40%に相当)が1種類以上のビタミン・ミネラルを利用していることが判った。この中で、最も多かったのがビタミンCで、他に、ビタミンB12、B6、ナイアシン、チアミン、B2、E、A、D、葉酸などが挙がった。

今回の調査でも、相変わらずCが根強い人気を誇っていることが明らかとなったが、米国におけるC人気は2度のノーベル賞を受賞した故・ライナス・ポーリング博士(1901年〜1994年)の功績によるところが大きいといわれている。 生前、博士が説いたビタミンCのメガ(大量)投与療法は米国に一大旋風を巻き起こし、C人気を不動のものにした。

ところで、ヒトは何故、Cを補給する必要があるのか。
C不足で壊血病が発症することは古くからいわれていたが、近年、Cがインターフェロン産生の促進、抗ヒスタミン、抗ストレス、免疫力増強などに関わることが明らかとなってきた。

だが、多くの動植物がCを体内合成できるにも関わらず、哺乳類の中でも、ヒトは遺伝的にCの体内での合成機能が欠落しており、食物など外部から補給せざるを得ない。そのため、博士は化学者としての視点から、Cの積極的な摂取による栄養療法「分子矯正医学」を唱え、1日に少なくとも500mgから2,000mg程の摂取を薦めた。また、自身も実践者となり、1日に数10グラムのCを摂っていたといわれる。
しかしながら、こうしたポーリング理論は当初、医学界からは受け入れられず、一方で多量投与による下痢症状や腎臓結石などのリスクも問題視(その後の研究で、数グラムの摂取でも尿中のシュウ酸塩の増加は見られず、腎臓結石の危険はないことが判明)され、安全論争が巻き起こった。

米科学アカデミー、Cの推奨摂取量を11年ぶりに改定

この4月、米国立科学アカデミーは、Cの1日の推奨摂取量(RDA)を、これまでの60mgから女性75mg、男性90mgと改定、喫煙者はこれに35mg増やすことを推奨した。また、摂取量の上限を2,000mgと設定。これは食品と栄養補助剤とを合わせた数値で、特に、野菜や果物からの摂取が望ましいとした。これまでのRDAは1989年に設定されたもので、実に11年ぶりの改定となった。

今回のCの摂取量の引き上げ・上限設定という措置により、大量投与の安全論争に一応の決着がつき、Cの有用性が公式に認められた格好となった。しかしながら、周囲では依然、Cに関する否定的な研究報告も肯定的なそれと同様相次いでいる。
ごく最近も、3月2日に米サンティエゴで開催されたAmerican Heart Associationの第40回年次総会において、ビタミンC剤を大量に摂取すると血管内膜肥厚を促し動脈硬化を起こすという報告もあった。ただ、これは1つの調査結果であり、不明瞭な点もあるため、今後の研究が必要であるとされたが、カリフォルニアの研究グループが40歳から60歳の573人を対象に頚動脈内膜の検査をし、同被験者の18ヶ月後の結果と比較したところ、ビタミンC剤を1日500mg一年以上摂取していた人は頚動脈の内膜肥厚の進行度合がビタミン剤を摂らない人の2.5倍、さらに喫煙者は5倍となっていることが判ったという。

大量投与、一方でストレス緩和作用も(ラット実験)

一方これとは反対に、大量投与で、ストレスを和らげる作用があることがAmerican Chemical Society学会で発表されている。アラバマ大学研究者グループが行ったラットを使ったストレスに対する動物の副腎機能研究で、3週間にわたってストレスにさらされたラットにビタミンCを1日200mg与えたところ、ストレス症状が緩和されたが、この投与量はヒトに換算すると数gに相当するという。(ScienceDaily'99/8月号)

1日の推奨摂取量を120〜200mgに引き上げるべきとの議論

米科学アカデミーは今回1日の推奨摂取量(RDA)を60mgから女性75mg、男性90mgと引き上げたが、ポーリング理論の影響からか、実はすでに米国民のCの平均摂取量は女性73mg、男性84mgという状況に至っていた。
その上で、慢性疾患予防を基準におくならば、120〜200mgに引き上げるべきとの議論がここ数年高まっており、「1日少なくとも100mgを摂取すべき」(タフツ大学研究者)、「非喫煙者に対するRDAを120mgにすべき」(オレゴン州立大学研究者)といった意見が挙がっていた(American Journal of Clinical Nutrition'99/6月号)。

特に高齢者の場合、1日200mgが望ましいとの意見が大勢

特に高齢者の場合、抗酸化剤としてのCの働きが重要視され、1日200mgの摂取が望ましいとする専門家らの意見が大勢を占めた。Cを200mg、E200IUを毎日摂取すると、老化が原因の疾患の危険性をかなり抑えることができるという報告も行われている(American Aging AssociationとAmerican College of Clinical Gerontologyの共催の会合)。
NIHの研究者は、ビタミンの多量投与と老化関連疾患予防との関連を証明するには研究不足とするものの、会合ではこうした摂取量が適正ということで意見が一致したという。

また、最近では、痴呆症改善についてもCとEが有効であるという報告も出ている(Neurology誌2000/3月号)。ハワイの研究グループが、71歳--93歳の日系アメリカ人男性3,385人を対象にした調査で、1988年の段階で47人にアルツハイマー症や254人に認識力や短期記憶力の低下が認められたが、その際にCまたはEのどちらかを服用していた人は、1993年の記憶テストで、他のグループより向上していることが認められたという。しかも長期間CやEを服用していた人の向上率は大きかったという。
現代人は、生体防御のためにフリーラジカル(活性酸素)を大量に発生させがちで、アルツハイマー症はこのフリーラジカルによる脳機能損傷によるところが大きいといわれるが、CやEの抗酸化力が効を奏したものとみられている。


※現在、日本におけるビタミンCの1日の所要量は成人男女で50mg、妊婦60mg、授乳婦90mgとなっている。Cの豊富な果物の代表格であるレモンには、100g中90mg程のCが含まれる。Cの補給として、米科学アカデミーでは野菜や果物から摂取が望ましいとしているが、調理の際、およそ50%が損失するといわれる。また近年ハウス栽培により野菜のC含有が露地物と比べ少なくなっていることが指摘されている。

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