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骨形成を裏で支えるビタミンK、高齢者や育ち盛りの児童に有用 骨形成においてカルシウムやビタミンDの役割ばかりがクローズアップされるが、実はその裏でビタミンKが果たしている役割は大きい。カルシウムを骨に結合させる蛋白質、オステオカルシンの合成にビタミンKが欠かせない。高齢者の骨粗しょう症対策だけでなく、思春期の児童の骨格形成にも必須といえるビタミンK、最新研究を報告する。
体内の腸内細菌でビタミンK2産生も、加齢や抗生物質で減少
ビタミンKは脂溶性ビタミンで1929年に発見された。野菜、豆類、海藻類などに多く含まれるK1と、人体で腸内細菌によって作られるK2に分けられる。K2は側鎖部分の長さによって、肉類はMK-4、チーズなど発酵食品はMK-7、MK-8、MK-9に分類される。中でも、納豆に含まれるMK-7(メナキノン7)は骨形成に果たす役割で注目されている。 健常者の場合、体内の腸内細菌でビタミンK2の産生が行われるが、加齢や抗生物質などでK2は減少する。とはいえ、K2は骨形成に必須で、カルシウムを骨に結合させる"接着剤"の役割を果たす蛋白質、オステオカルシンの合成に欠かせない。血中のビタミンK2濃度が低いと、骨折しやすいことも報告されている。 1997年に発表された研究報告によると、日本の研究者グループが、閉経期を過ぎた女性71人と更年期障害でホルモン治療を受けている女性24人を調べたところ、骨のミネラル濃度が低いグループはビタミンK1やK2濃度が低いことが分かったという。 American Journal of Clinical Nutrition誌99/1月号に掲載されたハーバード大学の10年間にわたる研究では72,000人以上の中年、高齢女性を対象にしているが、ビタミンKを毎日最低109mcg(マイクログラム)摂取したグループは、それ以下の摂取グループと比べて腰骨の骨折の割合が30%減少していることが分かったと報告している。 また、1988年から95年にかけて行われたFramingham Heart Studyでは(American Journal of Clinical Nutrition誌00/5月号)、高齢者888人を対象にビタミンKの平均摂取量が56mcgのグループと254mcgのグループを比較したところ、56mcgグループは腰骨の骨折の割合が著しく増加したことが判ったという。 最近の研究でもビタミンK2が骨強化に役立つことが報告されている(Osteoporosis International誌07/3月号)。Maastricht UniversityおよびCardiovascular Research Institute研究者グループが、閉経期後の健康体女性365人(平均年齢66歳)にビタミンK2(MK-4)を45mg/日(15mgカプセルを3回)か、プラセボを与えた。 結果、骨ミネラル密度(BMD)には変化は見られなかったが、プラセボグループと比較してビタミンK2グループは、圧縮強度が2.03%、曲げ強度3.83%、衝撃強度1.72%、大腿骨頸部の幅が1.34%、股関節軸の長さ0.23%増大したことが分かったという。 ビタミンKが必須なのは高齢者ばかりではない。育ち盛りの児童の骨格形成にも有用だ。VitaK研究センター研究者グループが、思春期の健康体の児童55人を対象に、被験者に、ビタミンKをメナキノン-7の形で45マイクログラムか、プラセボのどちらかを8週間投与したところ、メナキノン-7投与グループはオステオカルシンの合成で優位性が見られたという(British Journal of Nutrition誌09/6月号)。 適量のビールやワイン、骨の健康に役立つ ビタミンK以外に、骨形成に関する研究では、ビールおよびワインの適量摂取が骨の健康維持に役立つことが報告されている(The American Journal of Clinical Nutrition誌09/4月号)。 Tufts medical center研究者グループが、男性1,182人、閉経後の女性1,289人、閉経前の女性248人(26〜89歳)を対象に、飲酒とBMD(骨ミネラル密度)の関連性を調べた。臀部、腰部背骨などでBMDを計測したところ、飲酒習慣が無い群に比べ、ビールまたはワインを1〜2杯/日の割合で飲酒する男性群では、2.4〜4.5%増大していることが分ったという。 また、飲酒する閉経後の女性群でも、臀部および背骨のBMDが5〜8.3%増大していたという。ただ、飲酒量が多くなると効果は消えると研究者は指摘している。
ビタミンCが高齢者の骨密度に関連することも報告されている(Journal of Nutrition誌08/10月)。 結果、臀部の骨の上半分で、ビタミンCの総摂取量が多いほど骨ミネラル密度(BMD)損失が低下していることが分かった。ただ、喫煙による影響がみられ、男性喫煙者は臀部の骨の上半分で影響が見られたが、非喫煙者群では、ビタミンC摂取とBMDに関連が見られたのは大腿骨頸部だったという。
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