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7月10日(水)、経団連会館(東京都千代田区)で「『納豆の日』・新薬効・効能記者発表会」(主催:全納連)が開催された。当日、倉敷芸術科学大学(生命化学科)の須見洋行教授が「新しい納豆の薬効と効用」と題して最新の研究成果を報告。また、第1回『納豆クイーン』に女優の菊川怜さんが選ばれた。
最も身近なブレインフード(脳機能活性食品)

「納豆は子供の頃から好物でした。私のために設けていただいたような賞」---。東大卒で才色兼備の知性派女優として知られる菊川怜さんが全国納豆連合会主催の第1回『納豆クイーン』表彰式で受賞の喜びを語った。

大豆には必須アミノ酸やコリン(神経伝達物質のアセチルコリンを合成)など、脳機能の活性に欠かせない栄養素が豊富に含まれている。最近では、大豆に微量に含まれるリン脂質、ホスファチジルセリン(=PS)の痴呆症などへの効果も注目されている。こうした記憶力や集中力を高め、学習能力の向上に役立つ栄養成分を多く含むことから、大豆関連製品はブレインフード(脳活性食品)とも呼ばれている。

以前、米国でマイケル・カーニーという日系三世の天才少年のことが話題になった。彼は知能指数が200を超え、6歳で高卒・アラバマ大入学、10歳で卒業、全て世界最年少というギネス記録をうち立てた。このマイケル家の食事というのが母親の由美子さんによる豆腐や海苔といった日本食で、とくにマイケル少年は「納豆ごはん」を好んで食べたという。

この他、とくに納豆に関して、これまでに報告されている有用性、予防効果について主なものを挙げると、整腸、ダイエット、血栓症、骨粗しょう症、更年期障害、抗菌・殺菌(0-157など)、肝機能障害、糖尿病、がん、などがある。納豆研究の第一人者として知られ、納豆博士の異名を持つ須見洋行教授は、納豆の持つ栄養価、優れた機能性を評してパーフェクトフード(完全なる食品)と折り紙をつける。

ピロリ菌に対する強力な抗菌活性、臨床薬にも劣らない

今回、講演の中で、須見教授は、納豆に含まれるジピコリン酸が血液の性状に関与するとし、「納豆100g当たりには、約20.55±13.67mgのジピコリン酸が含まれる。ジピコリン酸は1.0〜5.0×10-3Mでdose dependentにヒト血小板の凝集を強力に抑制する」と報告。納豆100gは市販の納豆1パックに相当するが、アスピリンにも匹敵する作用であるという。

また、納豆の抗菌力については、これまでにもO-157菌への作用が報告されているが、今回新たに、胃がんや十二指腸潰瘍の原因として疑われているヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を阻害することが判ったとし、「ある種の納豆菌抽出液中にピロリ菌に対する強力な抗菌活性を確認した」と報告。臨床薬のメトロニダゾールにも劣らない活性が確認されたという。

血栓溶解で優れた機能性、持続時間で薬剤を上回る効果

これまでにも、須見教授は、納豆の機能性に関する数多くの論文を発表している。須見教授の研究が世界的に注目されるようになったのは、納豆に含まれる血栓溶解酵素、ナットウキナーゼの発見以降。きっかけはほんの遊び心からだった。

須見教授は、1974年に徳島大学医学部大学院終了後、シカゴマイケルリース研究所文部省在外研究員として海外留学した。ある日、研究所でシャーレの中に人工血栓を作り、遊び心から納豆をそこにのせてみた。
結果、糸と呼ばれる納豆のネバネバの部分に強力な血栓溶解酵素が存在することが判った。1980年のことだ。帰国後も研究を重ね、1986年、日本で初めて研究成果を公表した。

ナットウキナーゼについての研究報告は内外から注目を浴びた。それまで血栓溶解剤というと、人間の尿から取った「ウロキナーゼ」が世界中で多く用いられていた。それが、納豆1パック(約100g)で約20万円分の「ウロキナーゼ」に匹敵する効果があることが判った。

さらに、持続性という点でも、血栓溶解剤の効果は4〜20分ほどだが、ナットウキナーゼだと4〜12時間持つことも判った。その後、須見教授は世界中の200種類以上の食品についても検索する。そして、血栓溶解作用でナットウキナーゼに勝るものはないとの結論に達する。
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病原性大腸菌(0-157)やサルモネラ菌の抗菌にも優れた働き

納豆が一般に食べられるようになったのは江戸時代といわれる。当時の食物辞典には、「毒を消して食をすすめる」と記され、抗菌性に優れた食品であることが紹介されている。また、コレラやチフスや赤痢などの予防にも用いられた記録もある。 そうした食の歴史の検証の中で、とくに食中毒の防衛のために最適な食品であることが立証されてきた。

近年、食中毒といえば0-157騒動がよく知られるところだが、納豆に含まれる納豆菌やジピコリン酸が病原性大腸菌(0-157)やサルモネラ菌に対して優れた抗菌作用を示すことが報告されている。またそうした腸内の悪玉菌を抑える一方で、乳酸菌などの善玉菌を増やし、腸を整える効果があることも報告されている。

骨粗しょう症予防に納豆のK2が必須

また、高齢化時代の到来により骨粗しょう症人口の増加が懸念されるが、ここでも納豆の機能が期待されている。納豆にはビタミンK2という栄養成分が含まれており、骨粗しょう症予防に有効とされる。

カルシウムが骨に結合する際、たんぱく質のオステオカルシンがカルシウムの吸着剤となる。このオステオカルシンを作るためにビタミンK2(化学名:メナキノン7)が必須といわれる。

健常者の場合、消化管で微生物によりK2が作られるが、加齢や抗生物質の服用で微生物の活動が弱まるとK2の産生が低下する。そのため、適度なK2の補給が必要となるが、食品でK2を補給できるのは唯一納豆だけといわれる。

さらに、納豆の効用として、海外で熱い注目をあびているのが、更年期障害の緩和や前立腺がんや乳がんの予防効果。大豆に含まれる抗酸化物質のイソフラボンの有効性に高い関心が寄せられている。

米国では空前の大豆ブーム

1980年、須見教授が日本の伝統食である納豆をほんの遊び心からシャーレの人工血栓にのせ、強力な血栓溶解作用を発見。以後、幾多の科学的検証が重ねられ、生活習慣病予防のためのパーフェクトフード、長寿食として納豆が世界的な賞賛を浴びつつある。

とくに米国では、日本人の長寿体質をもたらした秘訣が大豆摂取にあるとして、関連製品が人気だ。1996年以降、毎年4月は大豆のピーアール月間とされ、大豆製品の良さを知ってもらおうと、各地のスーパーなどで大豆製品のデモ販売やセミナーが盛んに行われる。かつて、ホールフーズマーケットやトレーダージョーといったヘルシーフードマーケットでしか買えなかった豆腐や豆乳が、今や、ラルフス、ボンズといった一般大手スーパーマーケットのデイリーコーナーにも陣取っている。

米国で大豆ブームに火がついたのは1999年といわれる。米国食品医薬品局(FDA)が、大豆たんぱく質を1日25g摂取すると心臓病予防に効果があることを認めて以来、「心臓病の危険を低下する」とラベリングされた大豆製品が、店頭で人気を呼ぶようになった。

米国における大豆関連製品市場は、当初、約12億ドルだったが、現在では約33億ドルへと着実に成長している。United Soybean Board (USB)の「栄養に関する消費者の態度、全国調査2001−2002」では、大豆製品を毎週食べているアメリカ人は、1999年には全体の24%だったのが2001年は27%に増えたと、大豆ブームの到来を裏付けている。

「アメリカ人の一番苦手な食べ物」であった豆腐も味付けで人気急上昇

大豆製品の中でも、現在売れ筋ナンバーワンを誇っているのが豆乳。ワシントンポスト紙によると、米国での売り上げは、1980年に150万ドルだったが、2001年には5億5千万ドルに膨れ上がった。健康志向の高まりに加え、ラクターゼ(乳糖)アレルギーで牛乳を飲めない約5千万人のアメリカ人が豆乳を求め、売り上げに拍車がかかった。

また、かつて「アメリカ人の一番苦手な食べ物」であった豆腐が、ほうれん草味、カレー味、イタリアン風味といった味付けで、ここ数年売れ行きが急上昇している。ケロッグ、クラフト、ジェネラル・ミルズといった大手食品会社が既存の大豆製品メーカーと提携し、新しいフレーバー作りに力を入れ、サンドイッチやサラダ、パスタなどにそのまま使える味付け豆腐を開発中だ。日本人からすれば「これ豆腐なの?」と戸惑う商品が売れている。

ヘルシーなスナックとして「エダマメ」も人気だ。また、肉の代わりに大豆たんぱく質を使ったベジタリアン向けの「大豆ハンバーガー」や、「大豆エネルギーバー」「大豆シリアル」も登場している。


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